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観客席で思ったこと ~200文字限定のスポーツコラム~
 



横浜FC対横浜F・マリノス
(2007/3/10 三ツ沢公園球技場)

開幕戦では、久保の衝撃的なゴールがあったものの、わずかな守備のアクシデントから浦和レッズに負けた横浜FCと幸運な展開から山瀬の個人技で勝利をものにした横浜F・マリノスの対戦。9年ぶりの横浜ダービーは、両チームの真価が問われる試合だった。

しかし、目を引いたプレーは、マリノスの山瀬と途中出場した新鋭、乾の切れ味鋭いドリブルだけだった。ただ、プレーとは違う次元で、三ツ沢劇場は盛り上がった。

試合開始1時間前には、スタンドはほぼ満員状態。アウェーのマリノス側の方がカラフルで、声も大きい。その声が最高潮に達したのが、試合直前の中田宏横浜市長の挨拶の場面だった。ホームとなる横浜FCに対して、「この試合で、J1初勝利をあげろ!」と叫ぶと、あとはマリノスのサポーターの大ブーイングで何も聞こえなくなった。

そして、選手入場。開幕戦はベンチだったカズが、寒風のなか半袖で登場した。試合開始直後のファーストタッチで、約40メートルのロングシュートを放ち、その心意気を示した。この日のカズは、ボールがうまく足につかない場面が多かったが、中盤の左サイドとして、後半途中で交代退場するまで、攻守に精力的な動きを見せた。

カズの意気込みに引っ張られたFCは、序盤から積極的に攻撃を仕掛けた。そして、前半7分、中盤の山口がゴール前に蹴りこんだロビングボールに、ディフェンダーの小村と早川が反応し、早川が軽く合わせたボールがゴールキーパーの頭を超えてゴールに転がり込んだ。よもやのFCの先制だった。目の前のできごとに、沈黙するマリノス・サポーター。

その後の主導権は、マリノスが握る。しかし、FCの守備は、どろくさく、しぶとく、えげつなく、したたかだった。GKの菅野、最終ラインの小村、早川らが体を投げ出して、ドリブル突破やシュートを阻む。いつの間にか、トップの久保がヘディングでクリアしていたりする。ときに汚いファウルもあり、必ずしもほめられたプレーばかりではなかったが、今のFCが勝つためには必要な要素でもある。前半は1対0でFCリードで終了。

ハーフタイムのスタンド裏は壮絶な混雑だった。狭い通路にはトイレに向かう長蛇の列。そこに、オシム日本代表監督が姿を見せたから、にっちもさっちもいかなくなった。ところで、オシム監督の目的は誰だったのだろうか。

後半開始直前、センターラインをはさんで対面した40歳のカズと18歳の乾が握手。手を差し伸べたのはカズだった。カズのペースに若手が引き込まれてしまうのか。

後半は、さらに防戦一方となったFC。しかし、J2時代から堅守でならしてきたFCらしさが発揮される。開幕の浦和戦では、ほころびが見られたが、この日の集中力はすさまじかった。

後半30分頃、FCはキャプテン山口に代わって難波が入る。難波は、山口が退場する前にピッチに走りこんで、レフェリーに注意を受ける。それを見た山口は、あえてゆっくりと外に向かい、両手で「抑えろ、抑えろ」というしぐさをして、はやる難波を落ち着かせる。ベテランならでのはふるまいが心憎かった。

試合は1対0のまま終了。FCが気持ちで奪った勝ち点3だった。攻撃面では、久保のミラクルに頼らざるをえないFCだが、堅い守備をベースに、勝ち点を重ね、自信をつけることが、まずは大事なことだろう。うまくいけば、シーズンの後半には、優勝を狙うチームにとって、やっかいな存在になっているかもしれない。

敗れたマリノスは、案外と重症ではないか。山瀬や乾、そしてマルクス、マルケスの外国人ら、それぞれの個人技は素晴らしかった。少なくともFCの選手よりは速く、巧く、鋭い。しかし、チームとして、組織として、機能しているようには見えなかった。最後には、長身のマイク・ハーフナーが投入されたが、ゴール前への放り込みに徹するわけでもなく、戦術が徹底されていないため、交代の効果はうすかった。

試合後にネットで、両チームの監督のコメントを読んだ。そして、FCの勝利とマリノスの敗戦に納得した。選手の熱い気持ちと監督の冷静な判断がFCの勝因だったようだ。




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