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観客席で思ったこと ~200文字限定のスポーツコラム~
 



■「アルガルベ杯」に参加する意味
テレビの実況アナウンサーが、女子サッカーの国際大会「アルガルベ杯」を、「女子サッカー界では、オリンピック、ワールドカップに次ぐ大きな大会である」と紹介していた。半分は正しく、半分は誤りだ、と思う。
女子のナショナルチームが12チーム集まるという意味では、五輪やW杯に次ぐ規模の大会かもしれない。しかし、参加するチームの目的は、勝利よりも経験を積むことに比重が置かれているように見える。勝負へのこだわりという点では、欧州選手権やアジア杯などのほうが上にちがいない。
とはいうものの、起用される選手にとっては、1試合1試合が真剣勝負の場であることに異論はない。サッカー女子日本代表のなでしこたちがどんなパフォーマンスを見せるのか楽しみな大会だった。

■さらにたくましくなった「なでしこジャパン」
初戦のノルウェーからデンマーク、米国とのグループリーグ戦、、そして優勝決定戦のドイツ戦まで全4試合。なでしこジャパンの佐々木監督は、昨年のW杯や五輪アジア予選のメンバーをベースに、新しい選手の起用や組み合わせを試した。そして、新たなメンバー構成でも、豊富な運動量とパスワークを持ち味とする「佐々木・なでしこジャパン」のサッカーが、きちんとできることがわかったことは、ロンドン五輪に向けた大きな収穫だった。
特に、体調不良の澤を欠いた米国、ドイツ戦で、勝敗はともかく互角以上に戦えたことは、昨年のW杯から、確実に成長していることを示した。
また、これまで、体格の差を、スピードや技術の高さや精神的な強さでカバーしてきたように言われることが多かった「なでしこ」だが、体格面でも決して劣っていないように、テレビを見ていて感じた。
確かに身長では差があるが、DFの熊谷、宇津木、鮫島、FWやMFで起用された高瀬、FWの永里などを見ていると、体の幅、厚みでは、決して見劣りすることなく、実際に当たり負けすることもなかった。
「なでしこジャパン」の「自信とたくましさ」を確認できた大会だった。

■テレビにとっても貴重なコンテンツ
今大会の「なでしこジャパン」の全4試合は、民放テレビが生中継した。放送時間は、いわゆるゴールデンタイム。はっきり言って「異例」である。
はたして、この異例のサッカー中継は、テレビ局にとっては大成功だった。以下が、4試合の視聴率である。(いずれもビデオリサーチ・関東地区・世帯視聴率)
ノルウェー戦(TBS  21時30分から):18.7%
デンマーク戦(フジテレビ 21時から):16.1%
米国戦   (フジテレビ 23時から):15.9%
ドイツ戦  (フジテレビ 22時から):21.7%
ちなみに、初戦のノルウェー戦の前に、同じくTBSで放送された男子のW杯3次予選・ウズベキスタン戦は、22.5%だった。
スポーツ新聞が大きく取り上げ、夜のいい時間帯にテレビ放送があり、それに応えるように、「なでしこジャパン」が面白い、好勝負をする。まさに、昨年の女子W杯以来のプラスのスパイラルが、さらに加速しているようだ。
野球、ソフトボールが競技種目からはずれたロンドン五輪では、「なでしこジャパン」が、ロンドン五輪の、特にチーム競技の決勝が近づく大会後半のテレビ中継の目玉になることは間違いない。「なでしこジャパン」は五輪を放送するテレビ局にとっても救世主になりつつある。

■ロンドン五輪への不安と期待
ロンドン五輪は7月下旬から始まる。しかし、4月には、日本国内でキリンチャレンジカップ2012が開催され、米国、ブラジルの五輪メダル有力候補と対戦することになっている。
米国とは、アルガルベ杯に続いての対戦である。米国にとっても同じことだが、あまりにお互いの手の内をみせてしまうことにならないのだろうか。スポンサーがお膳立てしてくれた、ファンにとってはとても楽しみな大会だが、ちょっと不安を感じざるを得ない。
しかしながら、まわりの期待にこたえることで、人気と実力を高め続けてきた「なでしこジャパン」なら、そんなちっぽけな不安は吹っ飛ばして、これまでのプラス・スパイラルを、ロンドン五輪、そして五輪後までも、維持してくれるものと確信している。



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