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戦車模型展示室 ~その12 T‐72M1

2010-10-27 21:11:41 | 模型について

まめ八は、第二次世界大戦期のドイツ軍戦車を主に製作していますが、時々気分転換として、それ以外の時代や国の戦車も手がける事があります。

そこで今回は、そうした作品の内から旧ソビエト連邦の戦車、T‐72 M1をご紹介したいと思います。

 

まずは、いつものように実車解説から。。。

冷戦時代の1960年代、旧ソビエトではT‐64戦車の配備を進めていました。

このT‐64戦車は、世界の主力戦車として初めて125㎜滑腔砲を搭載した他、主砲の自動装填装置、複合装甲、新型の高出力ディーゼルエンジンなど、ソビエトの最新技術をふんだんに取り入れた高性能新型戦車で、アメリカを始めとした当時の西側諸国の戦車をあらゆる面で凌駕していました。

ところが、最新技術を導入したが故に初期不良が多発した上、故障も多く、部隊での評判は散々なものとなってしまいました。(特に自動装填装置は乗員を殺傷する事故を多発させたと言われます)

また、こうした初期不良を一つ一つ改善しなければならなかったことからT‐64の生産ははかどらず、さらに高性能戦車であるが故に生産コストが高騰してしまったことで十分な数を揃える事が難しくなってきました。

そこで、T‐64よりも堅実な設計で安価な戦車の開発が行われる事になりました。こうして開発されたのがT‐72だったのです。

その開発は、T-64の車体をベースに行われ、1971年に試作車が完成、各種試験を経て制式採用になった後、1974年から生産が始められました。

 

T‐72の主砲にはT‐64と同じ125㎜滑腔砲を搭載し、改良を施された自動装填装置も取り付けられました。

装甲にもT‐64と同じく複合装甲が採用され、車体前面で236㎜、砲塔前面で296㎜の厚さがありました。しかも複合装甲と傾斜装甲の採用により、その耐弾能力は、均質圧延鋼板換算で400~600㎜に匹敵すると言われています。

また、出力780psのV型12気筒ディーゼルエンジンと、当時の西側諸国の主力戦車よりもはるかに軽い41.5tという極めて軽量な車体重量によって機動性にも優れており、ガバナーを外せばドイツのアウトバーンで110㎞/hの路上最高速度を出す事が出来たと言われています。

このようにT‐72は、戦後第二世代と呼ばれる同時期の西側諸国の戦車と比較しても攻撃力、防御力、機動力のバランスがとれた高性能戦車だったのです。

こうして生産が始まったT‐72は、旧ソビエト軍をはじめ、ワルシャワ条約機構加盟国や、フィンランド、イラン、イラク、シリアなどの友好国にも広く輸出された他、旧チェコスロバキアやポーランド、インド、旧ユーゴスラビア等ではライセンス生産が行われました。ちなみに、何かとお騒がせな日本のお隣の独裁国家でも“暴風号 ”という名前で配備されているそうです。

 

ところが、このように世界各国で採用されたT‐72は、現用戦車の中で実戦で最も使用された戦車の一つになってしまいます。そして、その実戦での評価は散々なものでした。

T‐72が、西側諸国の戦車と初めて本格的な戦闘を行ったのが、1980年のイスラエルによるレバノン侵攻作戦でした。シリア軍が装備していたT‐72がイスラエル軍のメルカバ戦車と対戦したのです。

メルカバ戦車は105㎜ライフル砲装備ですから、攻撃力は圧倒的にT‐72が有利であったにも拘らず、この時の戦いでT‐72は一方的にメルカバ戦車に撃破されています。その理由は、シリア軍が装備していたT‐72は意図的に性能を落とした輸出用のモンキーモデルであったこと、そしてシリア兵とイスラエル兵の錬度の差によるものと言われています。

その後、1991年の湾岸戦争、2003年のイラク戦争では、イラク軍が装備するT ‐72が、戦後第三世代に属するアメリカ軍のM‐1エイブラムス、イギリス軍のチャレンジャーと対戦しました。

この2度にわたる戦争でも、米英軍の戦車が120㎜滑腔砲を装備していた上に貫徹力の高い劣化ウラン弾を使用した事や、射撃統制装置やC4I連接(ネットワーク化)による情報共有・指揮統制システム、夜間及び走行間射撃システム等のハイテク技術をふんだんに取り入れていたことからT‐72は一方的に撃破されています。

また、アメリカ軍のM‐1エイブラムスは装甲にも劣化ウランを練りこんでいた事から、T‐72の125㎜滑腔砲弾が直撃しても全くダメージを与える事が出来ず、逆にM‐1エイブラムスの劣化ウラン弾は、“まるでバターに熱したナイフを突き刺すように・・・”T‐72の装甲を3000mの距離から貫通する事が出来たというアメリカ兵の証言もあります。

さらに、T‐72の弾庫が砲塔下部に設けられていた事から、装甲を貫通されると搭載している弾薬が誘爆を起こしやすく、乗員全員が戦死してしまうことが多かったようです。撃破されたT‐72の砲塔が高々と空に吹き飛ぶ様を見て、アメリカ軍の戦車兵達はT‐72を“ジャック・イン・ザ・ボックス(ビックリ箱)”と呼んだそうです。

 

イラク戦争における戦車戦の様子が世界に報じられると、T‐72の兵器としてのブランドは一気に地に堕ちてしまいます。

そこで現ロシアでは、T‐72を全面改修したT-90を開発して兵器市場での巻き返しを図っているようです。

 

さて、実車解説が長くなりましたが(毎度の事で済みません。。。)、

作品の紹介に移りたいと思います。

 

キットはタミヤのT‐72M1です。

タミヤのキットらしく、全くストレス無くサクサクと組む事が出来ます。

気が付いた時には“あれっ。もう出来ちゃった!”みたいな感じです。

工作が好きな方にはちょっと物足りないかも。。。

 

 

チェチェン紛争やユーゴスラビア紛争、湾岸戦争、イラク戦争ですっかり悪役として定着してしまったT‐72ですが、低く構えた精悍なプロポーションと小ぶりな砲塔、そして長く突き出した125㎜滑腔砲が素敵です。

 

 

今回はin the box で箱の中に入っている物だけで完成させています。

つまり、完全な素組みです。。。

 

 

フィギュアもキットに付いていた物をそのまま使用しました。

顔がちょっと怖いかも。。。でもしっかりロシア人しています。

 

 

塗装は、哀悼の意味を込めて、湾岸戦争やイラク戦争でボコボコにやられたイラク軍仕様にしてみました。

砲塔左には珍しいアラビア語のデカール(キットに付いていました)を貼っています。

独裁者が引き起こした戦争でたくさんの罪の無いイラクの人々が亡くなりました。戦争で死ぬのはいつも無名の兵士や民衆です。

 

 

今でも紛争のニュース映像に姿をみせるT‐72ですが、お隣の独裁国家の“暴風号”だけは見たくありませんね。

 

 

今回は現用戦車であるT‐72をご紹介しましたが、まめ八は現用戦車は、自衛隊車両を除いて余り作りません。

それは、現用戦車が自分にとってリアルタイムな存在であり、余りにも生々しい感じがするからです。

今、この瞬間にもこの戦車によって人が殺され、そしてこの戦車の中で死んでいっているかも知れない、と考えると複雑な気持ちになってしまいます。

 

心安らかに現用戦車を作る事が出来る日はやって来るのでしょうか?


コメント

--------これより以下のコメントは、2013年5月30日以前に-----------
あなたのブログにコメント投稿されたものです。

宮ちゃんNO1 [2010年10月27日 21:22]
こんばんは 宮ちゃんで~す。

戦車が良く分からない宮ちゃんですが・・
田宮のプラモの良さは判ります(笑)
自分は車専門でしたが・・
ホント・・田宮は凄いと思いました~
って模型の宣伝では有りませんでした~

ホント・・平和を祈って作りたいデスね~
EP82-SW20 [2010年10月27日 21:34]
こんばんは。
エイブラムスの「劣化ウラン弾」はすさまじい破壊力、と言えそうですね。
装甲厚からすれば、貫通は厳しそうですが・・・。
ちなみに、パンフロではT80と90式が戦える舞台があります。
ゲーム上では攻撃力・防御力では互角の様です。
まめ八 [2010年10月28日 22:52]
宮ちゃん、こんばんわ。
いつもコメントを頂き、有難うございます。

タミヤの模型は、日本人の物作りへの拘りとお客様(モデラー)への心遣いの典型的な例だと思います。誰が作ってもほぼ同じ完成度が得られる模型なんて他にはありません。つまり、メーカー側が製品の設計段階から、そういったことを意図して作っているんですよ。
ちなみにタミヤの組み立て説明書は、プレゼンテーション技法の手本として世界各国で使用されているそうです。!(^O^)

まめ八 [2010年10月28日 23:11]
EP82-SW20さん、こんばんわ。
いつもコメントを頂き、有難うございます。
劣化ウラン弾は装甲に命中すると、先端部が1200℃になる上、装甲を穿って行く間に先鋭化するという特性を持っているので驚異的な破壊力を発揮するみたいですよ。ですから均質圧延鋼板換算で400~600㎜の装甲をしても簡単に貫通できたみたいです。ココまで来れば装甲の意味がなくなりますね。(;^_^A
ただご存知とは思いますが、劣化したとはいえウランですから、燃焼し細かな灰になった放射線物質がそれを使用した人間(すなわち、味方の兵士)にも健康被害を生じさせているという意見もあります。
戦争は、負けた側は勿論、勝った側にも深刻な傷跡を残して行くものです。
パンフロの話。。。
もし90式戦車が待ち伏せをしているシナリオなら90式戦車の勝ち。。。
90式戦車がT-90に攻勢をかけるならば恐ろしい程難しいシナリオになると思いますよ。
自衛隊の戦車が、スペック的に国際水準になったとはいえ、ドイツやアメリカ、イギリスの戦車には、カタログデータに現れない部分(こういった所が実は大切なのですが。。。)でまず間違いなく敗北するでしょうね。o(^▽^)o
おぺ [2010年10月30日 13:58]
こんにちは。(模型的な目線でのコメントを。)
いつもながら素晴らしいデキですね。迷彩のない仕様ですが、砲塔の鋳物の質感や履帯上の装甲部分の巧みなグラデーションなど重量感満点。単色の車体にも関わらず、単調さをまったく感じさせない塗装が素晴らしいです。
まめ八 [2010年10月31日 20:11]
おぺさん、こんばんわ。
いつもコメントを頂きまして有難うございます。

ニュース映像を見る限りではイラク軍のT-72はデザートイエローの単色塗装が多いみたいでしたので今回は単色塗装で仕上げました。
今回も過分なお褒めの言葉を頂き恐縮です。m(._.)m
単色塗装は迷彩の手間が省ける分、作業自体は楽なんですが、ご指摘の通り単調になりやすいのでウェザリングとドライブラシを少しきつめに施してあります。
凝りに凝っているが故に繊細なパーツが多く、ごちゃごちゃしたイメージのドイツ戦車に比べると、単調ながらも全体的なスタイリングが悪役然としているロシア戦車も、戦車らしいわかりやすい形でなかなかカッコいいでしょう?o(^▽^)o