Snowmint

Ca m'est reste dans l'esprit.

「クロスファイア」宮部みゆき

2005-06-16 | BOOK
「鳩笛草」収録の「燔祭」の続編となる物語。
念力放火の能力を持つ女性青木淳子の生き方が、とても淋しく悲しい。
超能力者は孤独なのですね。

信じていた物がそうでないと知った時の辛さが胸に染みた。
裏切られたわけじゃない。嘘を付かれた訳でもない。
相手に心が無かっただけだ。
だけどきっと淋しかったのね、だったらやっぱり連れて行かなくてはと、二人で旅立てた彼女は、きっと幸福。

乙一「GOTH-リストカット事件」

2005-06-09 | BOOK
世界に殺す者と殺される者がいるとしたら、自分は殺す側だと自覚する「僕」。
その僕と、同級生の「夜」が犯罪を観光のように眺める6編。
同じ趣味を持つ二人だが同じ種類の人間ではない。
愛情ではなく執着だと言い切り、彼女の美しい手首を欲しがる様子も可愛らしい。

乙一「失はれた物語」

2005-06-08 | BOOK
ライトノベルという形態で発表された物を一般向けに作り直したもの。
最終話「マリアの指」のみ書き下ろし。
この中では「幸せは子猫のかたち」が好き。
幸せを願っているから幸せな夢を見るのだ。
そう有りたい。

山田詠美「風味絶佳」

2005-06-07 | BOOK
山田詠美の本は殆ど読んだことがなかった。
ずっと昔に手に取り、「なんか違う」気がして読むのを止めてしまった思い出がある。
その時の私には早かった、ただそれだけのことだったのかもしれない。
食わず嫌いは良くないね。
「風味絶佳」 美味しい本でした。
山田詠美という人は、なんて上手い小説家なんだろう!
登場人物が、皆魅力的だ。
彼女自身あとがきで彼らのことを「好き好き好き」と叫んでいる。
好きでなければああは書けない。
こんな人たちが本当に私の身近にいたら、
惚れてしまう。
美味しい物を少しずつ沢山食べた気持ちになれて、大満足。

宮部みゆき「ICO」

2005-06-06 | BOOK
プレイスティション2のテレビゲーム「ICO」の物語を元にノベラライズされたもの。
ゲームは知らないけれど、霧の城の内部は複雑でまるで迷路。
もしもやってみたら酔いそうだ。
宮部さんの作品は、「火車」「レベル7」「魔術はささやく」「クロスファイア」「鳩笛草」みたいな作品の方が好き。
その他は「R・P・G」と「理由」しか読んだことないけど・・・。
時代物の評判の良い人なので、今後読んでみたいです。

「思いわずらうことなく愉しく生きよ」

2005-06-03 | BOOK
江国香織の「思いわずらうことなく愉しく生きよ」を読んで感じたこと。

江国さんは、どうして殴られている人のその時の気持ちを知っているのだろうか。
どうしてあんなに的を得て、殴られている時の気持ちを書けるのだろう。
取材だろうか、それとも経験だろうか。

日本という裕福で幸せな国の中で、死ぬほど殴られた経験を持つ人は、あまりいないと思う。
少ないとは言わない。しかし、あなたの周りを見回してみて、そういう人が2,3人でもいるだろうか。
殴り合いの喧嘩ではない。無抵抗にただひたすらに、殴られるだけだ。
そんな経験をした人が、自分の友人にいるだろうか。
気が遠くなるまで殴られたことがあるというのは、ある意味、貴重な体験かもしれない。

殴られている時に恐怖は無い。痛みさえ感じられなくなってくる。
「あれ?もしかしたら死んじゃうかも」
なんて、頭の中で冷静に考えていたりする。
でもそれは、死に対する恐怖ではない。
髪を掴まれ床に打ち付けられながらも冷静に、「早く終わらないかな」などと考えている。
死ねれば終わる。
それでも相手も慣れたもので、死ぬまで殴るようなことはしない。
だから気絶を願う。気が遠くなれたらラッキー。

そんな気持ちになることを、どうして知っているんだろう。
しかし、この本の中に出てくる「麻子」という人は、死を願ってはいなかった。
そこが昔の私とは違うところだ。

「思いわずらうことなく愉しく生きよ」
すべての行き先はそこにある。


Dryflower

2005-06-02 | 手作り
ツルが籠に絡まる様、流れが美しい。
このツルの土台作りに、製作時間の半分以上を費やしてしまった・・・。
写真があまりに下手っぴいで惜しい(^_^!)

読んだもの日記

2005-06-02 | BOOK
乙一「暗黒童話」
最近、乙一ばかり読んでいる。
何故かというと、家に沢山あるから。
私はときどき、まるで中毒患者のように文字が読みたくなる。読めさえすれば内容など、どうでもいい。
子供の頃、図書館で本を選ぶということが面倒になり、物語の棚の端から順番に読んでいこうと決め、それを実行に移したことがある。自分にとって面白い本を探そうなどと思わなければ、その本がどんな内容であっても楽しめるものだ。
しかし、楽しめる文章であればそれに越したことはない。
今、また活字に飢えている。だったら図書館に行くか本屋に足を運び楽しめそうな本を選べばよいのだろうが、最近また何かを選ぶという事が、おっくうでならない。
だから家の書棚にあるもので、飢えをしのいでいる。
乙一は娘が集めていて、我が家には彼の著書の殆どがある。
その七割程度は借りて読んだが、私は彼の作品は短篇のほうが好きなので、これは未読だった。
意外な真犯人と結末に至る展開や、おどろおどろしさが乱歩のような感じもしたが、あそこまで暗くもなく、ある意味ハッピーなエンド。


読んだもの日記

2005-06-01 | BOOK
途中まで読んだがつまらなかったと、娘に本箱の隅に追いやられていた本を引っ張り出して読んでみた。
面白い!どうしてこんなに面白い本を放り投げたのが理解できない!
飛行の描写がいい。
攻撃機に乗ったことのない者でも、文字を追うだけで、まるで空でダンスをしているような気分になれる。
そして、主人公の「僕」
死んでしまったら明日飛ぶことが出来ない。それが生きる理由。
歩み続けなければならない私たちに投げ掛けられた言葉のようだ。
ラストの場面も好き。
絵が心に浮かぶ、心が空に開放されるような本だった。
森博嗣「ナ・バ・テア」