スカーレット手帖

機嫌のいい観客

マルガリータ~戦国の天使たち~ ―歌だけは頭に残る―

2014-10-06 | 観劇ライブ記
ここ一カ月くらいぐちゃぐちゃだったのだが、ようやく落ち着いてきた。
ブログに書いてはいないけど、レディベス名古屋初日やらテニミュやら、
相変わらずいろいろと観ていました。落ち着いたらまた書こうと思います。
ちなみにこの夏のテニミュは、結局10回観ました。ライブビューイングも入れると11回。
ああ、乗りましたね、大台に。
これだけ観ると、歌だけじゃなくて、なんとなくセリフも一緒にしゃべれるようになってくる。
口伝か。これが口伝というやつか。
さらなる高みがあるというのなら僕はそこへ行く そこへ行く~~

そんなこんなで、10月より転居しました。
いろいろと状況は変化しているけれど、
いちばんヒャッホウなことといえばもちろん観劇ライフが数段に便利になることである。
交通費1000円以内でスッと行ける劇場が爆増! うれしすぎてしぬ!!

そんなtokio観劇ライフ第一弾、「マルガリータ」行ってきました。



まだ仕事も暇なので、今のうちに感想書きます。
ざっくりと言って、ネガティブです。笑。

**

【総括】
まあ、なんとなく想定していたパターンの、悪い感じに転んだなー、というやつでした。
とにかく感想はこれです。
一体何をどう魅せたい舞台なのかが、最初から最後までさっぱり不明だった。

【なにがどうだったのか】
そもそも私、けっこうがっちりした歴史ものが好きなこともあるので、
安易に設定やらことばづかいやら服装やらが現代寄りになっている、
フワフワしたあかちゃんせんべいみたいな歴史ものが割と許せない派です。
でもまあ、そんなこと言ったって私だってリアル戦国時代知ってるわけじゃないんで、呑み込んで観ます。
とくに今回イケメン俳優出演というのが売りだったと思うので、衣装とか振る舞いは仕方ないかと思う。
いつもの戦国鍋の舞台シリーズのノリですね。
だけどなんか感動がないのよね。まず少年使節が普通に今風の洋装で、
4人だけで船から降りて帰ってきているところからしてなんか「ぱっとせんなー」と思いました。
そしてその「ぱっとしない」感じが最後まで続いて行きました。

今作品、戦国鍋テレビのプロデューサーがやるということで、
キャスト陣の名前からいろいろ想定していたことはあったのですが、案の定というか来ました、
「中途半端に笑いが入ってくる」
わかるよ。わかる。やましげが、寿里が、芸達者なのはわかる。コメディもいけるの知ってる。
むしろ、シリアスだってすごく魅せられる人たちなのはわかる。
見てて楽しいし好きです。とっても戦国鍋テレビだった。懐かしい感じがしてうれしかった。
だけど今回それはどうだったのでしょうか。
とくにやましげ氏の秀吉、あれはもっとあの二面性が凄みとして生きる演出が出来たんじゃないの。
やましげ氏には、こんなに引き気味で観ている私でさえ、笑いを引き出されてしまった。上手い人ですわ。
しかし、それでよかったのか。
上手に笑いを取る人、そしてそのあとに恐怖発言をする空気を変える演技ができる人、
それだけのポジションでよかったのか。疑問でござる。
まあでも彼らはまだいいほうだったかもしれない。好きにしていいように彼ら用の尺が取られてるんだもん。
かわいそうなのは石井ちゃんと北代くんですわ。
ほんとに、「わー」としか言いようのない脇すぎる起用のされ方で本人たちも戸惑ったのではないでしょうか。
地味に目立つ民衆として、登場していました。
あと年末の明治座でおなじみ、大堀さんね。
わかるよ。あの馴染んだお祭りの空気感、思い出してねっていう感じだよね。
でも彼が冒頭に出てきたときになんというか、この構図が私には制作側からの
「あの感じで行くからいろいろ許してね」というメッセージに見えてきて、
なんかイラっときたわけ。(すんません)
で、最終的にいつものあの感じ(お祭り騒ぎでいろいろあったけど大団円な感じ)なんだったらいいんだけど。
そうでもないわけじゃないですか。
てかそもそも鍋舞台ではおなじみの、あの狂言回しみたいな人が出てきて説明をするプロローグの仕方って、
私はすごく狭い劇場向けな感じがするんですよ。
小劇場ならぜんぜん良いけど、明治座で観るときいつも「サイズ感が違う」と思ってイライラしています。
今回は、そこまで広い会場ではなかったものの、
冒頭にあれを入れる時点で今一つ気に入らなかったというのに(個人の意見です)、
それに加えて各人の演技のサイズがバラバラだったもんですから、余計にちぐはぐに感じました。

あとね、中途半端に歌と踊りが入ってくる。
最初からびっくり。これはいったいどうしたことなのか。
そして頭の「マルガリーター」の曲でソロパートを歌っている女子、あまりに下手やん。
彼女はミゲルの嫁の役だったのだが、セリフ回しも甲高くて聞き取れやしねえ。
そしてたびたび挟まれるミゲルの独白シーンでの踊り。これはなんやねん。全然胸にズーンと来ませんわ。
そういえば蒼井翔太の歌が入ってくるということだったような気がするが、
いったいどこで出てきていたのか。覚えていないぞ。
ハア、どんどんイライラしてくる自分との戦いでございました。

【思ったこと】
細貝圭がもっと生きる座組にしてあげてほしかった。
春に帝一見たときは全然気付かなかったけど、今回彼は
(まわりの3名が細身だったり相手役の女優が小柄だったりする対比のせいもあるかもだけど)
結構体格がよく、なんとなく大山真志をほうふつとさせるところがあるなと感じました。
お芝居は大山くんのがうまいと思うけど。
セリフ回しはよくも悪くも、終始歌っているように聞こえた。
(帰国子女ということなので、あんまり日本語がハラオチしていないのかもしれない、
とうっすら思う言語オタクのわたくし)
悪く言えば大仰で繊細な感情があんま分かんないなーという感じなんだけど、
しかしそれを上回るすごいエネルギーをかけた熱演ぶりを目の当たりにし、
彼はなんか、このサイズの、このトーンの舞台には合わないというか、
もっと「ザ・劇的」な演出の中ではものすごい生きる人なんじゃないかという印象を持ちました。
ミュージカルとかさ。
せっかく彼を主演に、そして「千々石ミゲル」という苦悩の人を主役に据える内容の話であったのだから、
もっと話を骨太に作ってあげてもよかったのではないかと思いました。
彼が苦悩する対象として、周りの世界の描き方がおろそかすぎる気がした。
秀吉は半分おちゃらけているし、妻になる女子の魅力もあまり感じられなかったし。
バリニャーノは狂言回しのおっさんだし。

井深、染谷はある意味かわいそうに感じた。役割もあんまりないし、
お芝居も並んでみるとちょっとあまり上手くないなあ… と思う次第。(もはや若干八つ当たりか?)
若手俳優の中ではよく知ってるし、本人のキャラもわかっているからこそ、
キャーキャーキラキラした世界で水を得たように生きる井深くんがしんみり賢い役(合わない)だったり、
最近はひた向きな役者魂が輝いている染様が空気読めない系の元気な役(無理をしているように見える)
だったり、ううむ… と、腕組みして見ざるを得ない感じでした。
まあ、彼らも役者だから、キャラに合わない役でもちゃんと人物造形を深めてもらえる時間があれば
演じようもあると思うんだけど、脚本上、あんまり掘り下げてもらえてないからないさぁ… 
影が薄かったですね。
「天使」「天使」と好評だった衣装は、確かにかわいいなーとは思いましたが、
まあこの人たちも私と同世代、いうてもアラサーですからね。
光も飛びきっていない舞台上で見ると、結構な若づくりに見えますぜ。

そんな中、鈴木拡樹だけが器用に上手に演じており、意外な底力を感じさせた。
役的にもおいしいとは思うけど、よくもこの気分の乗らない脚本(←決めつけ)を読んで、
上手に不要なところをミュートしつつ、自分の役割を演じきったなあ、
正しく感動を呼ぶ演技をしてくれた拡樹くんに3000点!という感じでした。
あー、この人は俳優なんだなあということを再認識させられたと言いますか。
もう、無理に少年使節4名を全面に出さずに、
このミゲルとジュリアンだけにもっとクローズアップした話にしとけばよかったんじゃないの。
メインビジュアルとかも。と思いました。
ていうかタイトルだって「天使」じゃないでしょ。もっと人間くさいでしょ。
そこを魅力の軸として切り取れば、もっとみんなのいい面が見れるはずなのに
もったいないわねと心から思いました。(原作読んでません)


いやー、戦国鍋テレビは大好きなのですが、「戦国鍋」ラベルを貼ることと、
そしてチケットは売れるのかもしれないが、「イケメン」を全面に押し出すことが、
誰にとっても、何一つプラスに働いていなかった(ように私には感じられた。切実にな。)ことが、
今回とても残念でした。
「もっと歴史を知りたくなるシリーズ」という、初心者へと門戸を広げる雰囲気の銘打ちでやっているので、
これぐらいのものでもよいのかもしれないが。
でもそれにしてもね… 舞台って、演劇って、てかイケメン俳優ってこんなもんか…、
と思われたらすごいつらいなあという感じ。
あー、つくづく、いろいろともったいないです。
同じようなシリーズでやるのであれば、再考したほうがいいよなあと思いました。
つうか、思うに、もっとまじめに作りこんで、
宝塚あたりでやってもらえばこれはかなりの名作が生まれるのではないかしら。
原作読んでいないけど、きっとそんな気がする。

まあ、「マルガリータ」=「真珠」という知識だけが身に付いたので、
今後ピザ屋や飲み屋でマルガリータを注文する機会があったときには、
「ああ、真珠なんだなあ」と思うようになると思う。
って豆知識だけ得てそれでよかったのかこの舞台は。

以上でござる。