ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

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動物の生体エネルギー論と進化

2023年09月14日 | 健康法

 前々回記事の生活様式との関連で、能力向上をもたらす上での生活様式の重要性の一例を(かなり特殊な例だけど・・・)。

 ついでに言えば、ゲノム遺伝論が全盛の時期にダーウィンの進化の考え方だけが正しいとする実例がほとんどないことから、今西 錦司氏が「生物種の集団(コロニー)がその集団の目標としてある方向に向かうと、その方向で多発突然変異が起こり得るのだろう」というような趣旨のことを述べたことかある。これは、その一例にあたるのかもしれない。
 一例というのは、音楽家の家系の3代目の当時8歳の女の子。父が作曲家、母がバイオリニストで、その練習姿を眺めながら3歳でバイオリンに触り「毎日5時間練習した後、先生と一緒に練習します」という環境・生活様式だと上手くなれるらしい。その演奏の一つ(サラサーテのツィゴイネルワイゼン)を動画から:

 

Himari Yoshimura. 1st round String instruments / 20th International Competition for Young Musicians "The Nutcracker"(2019)
 https://www.youtube.com/watch?v=4H6BitFb9zw

 

 雑談はさておき本題に戻ると、いろいろ詰めていくと「動物とは何か」という疑問にぶつかる。西原克成氏の言説だと、エネルギーが渦を作るということになるけど、渦を作るのは物質とした方が座りがよさそうなので、これを改変すると次のようになるだろうか:

 

 動物とは、運動を通じて獲得・摂取した物を消化吸収して全身に供給し、供給物から生成したエネルギーを利用する新陳代謝によって物質の流れの渦(動的平衡)を形成しつつ老化を克服する生命体である。

 

 想像するに、流れの渦(その中心は内臓、心臓あたりか?)に鎮座するのが、心とか霊魂と言われるものかもしれない。この場合、脳は、本来は筋肉の協調による運動を制御するための電気回路であり、後にヒトは論理的な思考ができるようになったが、これは当初運動量の節約を目的として発達したものである、と考えるのだろう(故に、心を働かせると利他的にもなり得るけど、頭を働かせると省力化、すなわち利己的になりがちになるのだろう)。

 

 動物をエネルギー論的にみれば、新陳代謝用(基礎代謝)のエネルギー、運動用のエネルギー、その他のエネルギーを生み出す必要がある。その他のエネルギーからは、生殖用のエネルギーを捻り出す必要があり、その残りが余剰エネルギーと言えるのだろう。

 動物の生活様式は、基礎代謝エネルギー、運動用のエネルギー及び生殖用のエネルギーを確保できるものでなければならないという制約があることになる。例えば、哺乳類の基礎代謝エネルギーの場合、恒温を維持する必要があり、エネルギー摂取(energy intake)のうち5割以上は熱エネルギーに変換されていると言われている。
 運動用のエネルギーは身体活動の程度に、余剰エネルギーは肥満度などに依存して、同じ生物種であっても個体差による変動が大きいであろう(そもそも野生の動物であれば引き締まった身体をしており、肥満ということはあり得ないのだが・・・)。他方、生殖用のエネルギーは、変動はそれほど大きくないだろうが、残る基礎代謝エネルギーについては、利用が効率化されていればされているほど生存に有利ということになろう。

 

 進化は、生物種と地球環境の相互作用でおこる。この点に戻って再度考えると、生物種によつて相互作用の内容が異なるのは何故だろうか。
 その答えは、いろいろなものが成り立つと思う(例えば簡単なのは、それぞれ生息環境が違うから)。その一つとして生体エネルギー論的に考えれば、生物は常に基礎代謝を最適化しようとしているから、ということになるのではないか。この点を少し説明しよう。

 

 生物の一つの特徴として、生体のエネルギー恒常性を維持するため、基礎代謝向けエネルギー利用を効率化して最適化するようにしていることが挙げられる。生体エネルギー論的にみれば、そのような最適化はエネルギー支出の削減策の一つであり、エネルギー摂取(食餌・酸素摂取など)の必要性を軽減することに繋がる。
 このような最適化は、生体は、基礎代謝向けエネルギーが効率化されるよう、久しく使わない過剰機能(over-specification fundtions)には減衰調節(down-regulate)を、よく使うようになった機能には徐々に補強調節(upregulate)を施すことで実現しているようだ(生体の基礎代謝最適化仮説)。

 この最適化現象は、生物個体の一代かぎりで眺めればホルミシス効果(逆境が生物を強くする現象)に、生物種を累代にわたって眺めればラマルクの用不用説(よく使うものは発達し、使わないものは退化する現象)になるのであろう。

 以上のように、生体エネルギー論的にみれば、基礎代謝の最適化の結果自然と導かれることになるラマルクの用不用説には違和感が生じにくいのではないだろうか。この場合、生物の進化は、基礎代謝の最適化に伴う随伴現象である、とみられるのかもしれない。

 

 ついでに補足説明しておくとホルミシス効果の例は、前々回記事とも関係するが、


- 生活場における重力の存在が動物の骨・筋肉を強くする、
- 生活場に風が吹くことが樹木を強くする

などが挙げられる。また、ラマルクの用不用説は、次の二つの法則からなる(いろいろあるけど、西原克成「究極の免疫力」(2004年) から引用しよう。同書204-205頁):


1-「生育の限界を超えないかぎり、脊椎動物の器官の形と機能は使えば形も機能も発達し、使わなければ縮小してやがてなくなってしまう」((狭義の)用不用の法則)
2-「そして雌雄にこれが共通していれば、生殖を介してこれが子に伝えられる」(獲得形質遺伝の法則)

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