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人生の裏側

人生は思われた通りでは無い。
人生の裏側の扉が開かれた時、貴方の知らない自分、世界が見えてくる・・・

ポーとの再会

2018-09-03 12:15:54 | 人生の裏側の図書室
エドガー.A.ポーと会ったのは実に久しぶりのことでした。
学生の時以来で、40年以上は経っているでしょう。
初めて会ったのは確か小学3年の時で、児童向けの文学シリーズの中にあった彼の短編集を読んだことがあります。
「アッシャー家の崩壊」の幽霊のように立っている、蘇生した女の挿絵がとても怖かったのを覚えています。
そもそも私が小説らしいものを読んだのはそれが最初のことでした。
いや、というより元来私は小説はあまり読まない方で、昔から親しんでいる小説はポーぐらいしか思い付かないくらいです。
理由は簡単。"怪奇と幻想"に惹かれるというのは勿論ですが、彼の作品は、どれもこれも"短い"ということが大きいのです。
長編小説はどうも苦手でして。例えばドストエフスキーなどには私と類縁のものを感じてはいても、多くの読者はそうしているであろう、作品の中にそういうものを見い出していくこととは別のことなのです。
これはどうも私の精神構造上の欠陥から来ているようにも思えます。
頭の中はいつも"パッ、パッ"とパノラマ式に非連続にイメージが展開し、順々に細かくストーリー展開を繋いでいくことが難しいのです。
そういうことは、こういうすぐどっかへ飛んでゆくような文章にも表れているかもしれません。
こんな訳でポーの短編はすぐ入って行けます。
前記作品始め「早すぎた埋葬」「黒猫」「告げ口心臓」などは生と死、善と悪、空想と現実などが交錯した定番ホラー。
「モルグ街の殺人」は史上初の推理小説と言われています。
「ウィリアム.ウィルソン」は、ドッペルゲンガー(分身)をテーマにしたもので、瓜二つの自分が出てくるのであり、逆にどいつも、こいつも同じ人間になる訳ではありません。
怪奇推理小説ばかりではなく、気球で遥か上空まで冒険する、空想科学小説「ハンス.プファアルの無類の冒険」、ユーモア風刺小説「名士の群れ」なども書いています。
ところで、久しぶりにポーに接してみて、私は随分と彼についていくつか思い込みがあったことが分かりました。
"ああ...私のポーの館が崩れて行く~"
彼はフランス系アメリカ人では無かったi アイルランド系だったって...あの耽美的な世界が? ボードレールの"パリの憂愁"などに詩的ロマンが引き継がれたのでは無かったのか? "アランは何処へ行った...ドロンしやがったi"
又、彼は後身のH.P.ラブクラフトや、S.キングなどにも影響を与えた、紛れもなく一流の怪奇小説作家でしたが、どうもそれは彼の本意ではなかったらしい...それはあくまで生活のための手段だったようです。
彼が本当に情熱を傾けていたのは、詩作にあったのです。
成る程、その短いセンテンスの内に彼の散文に表そうとしたものが...いや、それ以上の、それでは表しきれない彼の内的宇宙が凝縮されているように感じられます。
ボードレールと共に影響を受けたという、マラルメとかは難解でよお分かりませんが、私が好きな英詩人ブラウニングが共感したというのも分かる気もします。
何にせよ、彼の小説は詩と切り離しては語れないでしょう。
それらを合わせて読んでいると、一つ一つは独立した作品だけど、それらは連携しあった一つのコンセプト作品のようにも感じられてきます。
各々の組み合わせは読者の自由でしょう。どこをどう読んでもそうなりそうです。楽しいじゃありませんかi
そんなことを考え、又"一人きりの部屋で裏側に入り込んだまま出てこれなくなったらどうなるんだろう..."とか考えてたら、構想一日で拙いながらもオマージュ作品みたいなものを書いてしまいました。

ポーの作品をまとめて読めるものに創元推理文庫「ポオ小説全集」「ポオ詩と詩論」がありますが、絶版かもしれません。
岩波文庫他で主要作品は読めるでしょう。


コメント (6)
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