世界各地いろいろな民族がいていろいろな歴史や風習がある。
そこでは当たり前のことや言い回しが日本人には唐突だったり、理解できなかったり。あるいは気がつかずに素通りしてしまうことがあるかもしれない。
だから、「(注)」がついている翻訳本は親切だと思うし、訳者がかなりその本の背景や作者について、舞台になっている国の当時の様子などにかなり精通していると思う。同じタイトルの本で複数の翻訳が出ている場合、迷うことがあるが、このことに気がついて本選びの基準が自分なりに出来上がってきそうだ。異文化に興味津々の私にとっては大事なこと。
この考えに思い至ったきっかけとなった本が、『赤毛のアン』松本侑子訳(集英社文庫)だ。
松本氏はネタばれになるほど細かく注釈をつけている。これは好みの分かれるところだと思う。でも、私が思うに大人になってから『赤毛のアン』を読むたいがいの人は、だいたいのあらすじと結末を知っているだろう。かえって注釈を見ながら読み進むことで《なるほど、この名前は聖書からの引用だったのか》《アンが言ったことは作者モンゴメリの私生活と重なるんだ》など別の視点から物語を見ることができると思う。
アンシリーズは村岡花子訳で10冊ほど出ている。松本氏の訳ではまだ3冊ほどしか見当たらないのが残念だ。
アンを読んでその中に出てきた詩人や作家の作品に手を伸ばしていくのも読書の道筋として面白い。