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群馬の田舎から情報発信!

『サウスバウンド』(奥田英朗)

2007-03-02 23:24:36 | 読書日記
 元過激派の父を持つ二郎を中心とした家族のお話です。

 一部と二部に分かれています。
 一部は、二郎が東京で過ごしている間の話です。友達との付き合い、不良との関わりなど、少年時代のほろ苦さが描かれています。

 少年時代は、どうしても限られた世界の中で過ごさなければならないため、今生きている世界が全てだと考えがちである。それゆえ、その世界の外へ飛び出そうなんて考えないし、その世界でいかに生き抜いていくかを考えなければならない。そこに、少年の悩みの元があるのでは。大人は、子どもに、”もっと広い世界があるんだ”ということを教えてあげれば、子どもはもっと楽な気分になれるのでは。
 というような最近の若者問題・教育問題を考え始めたところ、主人公家族が急に西表島に行くことに!いったいこの話をどこへ行ってしまうの???

 ということで、西表島から2部が始まります。一部では、家でごろごろしているだけの父親が、急に存在感をあらわします。

 毎夜、近所の人が食べ物を持ってきて、宴会を繰り広げる不思議な環境に徐々に慣れてきて、西表の生活を楽しみ始めたころ、父がリゾートホテル開発業者を相手に、戦いを始めてしまう。
 いったいこの家族はどうなってしまうのか。

 「島の人はみないい人で、困っているとすぐに助けてくれます。困っていなくても世話をやこうとしています。ただで食べ物を分けてくれるなんて東京では考えられないことですが、こっちでは普通です。たぶん、自分だけ得をしようとする人がいないので、みんな親切なんだと思います。」「人間は欲張りじゃなければ法律も武器もいらないと思います。」「もし地球上にこの島しかなかったら、戦争は一度も起きないと思います。」

 父が目指した「パイパティローマ」は本当にあるのかもしれません。といっても、そこに暮らす人が薬園を楽園たらしめるよう、必要な努力をすることが必須条件だとは思いますが。

 それにしても、この家族は、こんな話の終わり方でいいの???最後の最後まで、先の読めないお話でした。でも、その意外性が本当に楽しかった。さすが奥田さんの作品だけあって、読者を楽しませるのがうまい!!!