剣道八段の先生から教わったこと 無心に到る迄の難しさ

昔の経験だが高位上段者の先生に稽古を付けて貰ったときに、相手の竹刀が丸太のように見えてきたことがある。どこからも打ち込めない。威圧感が全身で感じられる。あらゆる空間を束縛されている感じがする。動けない、何トンもある空気の固まりが私を押さえつけている。

参りました！？。と、思わず土下座し低頭する。これは時代劇の映画のシーンではない。実際このような経験をすることは高位有段者に対峙したときに起こるらしい。

剣道では七段はかなり才能があり、相当の修行をすれば取れないこともないが、八段以上というのは、それだけでは段位を授かれない。九段になると更に難しい。十段ともなると奇跡の世界である。

このような厳しい道が剣道には残されている。ここまで来て漸く美の殿堂にいる。これがアートであり、アートマンの世界に没入したことになる。

芸の道は厳しいものである。