あなたが見える

　　　　　　　　　　『 あなたが見える 』　


身動き一つせずに、何かをじっと見ている・・・そんな元さんの姿に気付くことがよくあった。
その視線の先を見ても・・・、何もいない。
元さんに視線を戻す。
相変わらず同じポーズのまま・・・。
「 元さん、何かいるの？ 」と訊いてみる。
聞こえているのか、いないのか？？？
間をおいて、長い尾っぽの先がわずかに動いた。
一応聞こえているらしい。
しかしその横顔は真剣そのもののままで微動だにしない。
それ以上邪魔をしてはいけないかな・・・と思いかけた時、まるで息をするのも忘れていたかのように、ふ～～～っと音が聞こえてくるほど長く息を吐き出した。
「 何か言った？？？」とでも言いたげにゆっくりとこちらを見たその顔は、直前の緊張感漂うそれではなく、どこか眠たそうないつもの元さんに戻っていた。

猫には人間に見えないものが見えている・・・と思う。
元さんに限らず、猫たちは間違いなくスピリチュアルな能力を持っている。
残念ながら私にはそういう能力は皆無だが、既に星になったたくさんの愛すべき存在たちが、ときどき遊びに来ていてもおかしくないと思う。
この時の元さんにも、きっとそんな彼らの姿が見えていて、もしかしたら人間には聞こえない心の声で会話を交わしていたのかもしれない。

元さん自身が星になって既に3年半余り・・・。
時々元さんが来てる・・・と感じる時があるけれど、眼を開けたり、振り向いた瞬間にその気配は消えてしまう。
まだまだ人生の修行が足りないのかな・・・？？？
「 元さん、あなたが見えるよ 」
そう言える心眼を持てるようになりたいと・・・ふと思う。

Over the fence

　　　　　　　　　　　　　『 Over the fence 』


生きるってことは・・・、目の前に現れてくる塀を、毎日毎日何とか超えて行くことなのかな・・・って思う時がある。

その高さ、厚み、角度・・・等々何もかもが、それぞれの人によって、その時々によって、きっと同じものはないのだろう。
そして人生のうちに何度か、途方もなく高い塀が突然出現する時がある。
絶望感に打ちひしがれ、思わず座り込んでしまう時も・・・。
「 天は、その人が越えることの出来ない試練は与えない！」
こんな言葉を幾度となく耳にした。
実際に天上の誰かにそのことを確認したわけではないけれど、それでもその言葉が本当であってほしいと思う。
たとえ辛い思いをしても・・・どんなに時間が掛かっても・・・いつの日かその塀の上に立つことができた時、その向こう側が新たな希望の光で満ち溢れていると信じたい。


この絵を描いた1999年は、第二の人生を本気になって歩き始めようと決心をした年だった。
今改めてこの絵を思い浮かべると、その時期私の目の前に聳え立っていた高い塀をよじ登ろうと、必死の覚悟でその塀に手を掛けた瞬間の感触を想い出す。
今でもまだその塀を登り切ったとは思っていない。
何度も途中で諦めかけたりしながらも、家族・仲間・友人たちの助けをもらい、何よりも私の描く絵を楽しみにして下さっている方々のあたたかい励ましに後押しされ、今も少しずつ登り続けている。
いつの日かその上に立つ日が来ることを夢見て・・・。

今まさに目前の高い塀を見上げている人たちへ・・・。
この絵と共に、エールを送ります！
塀の向こう側がどうなっているかなんて、その上に立ってみなければ分からない。
だったら・・・、頑張って登ってみよう！
塀の向こう側に広がる未来（あす）を信じて・・・Over the fence !

まぶしい・・・

　　　　　 　　　『 まぶしい・・・ 』


今日も既に30℃を軽くオーバーし、真夏日に迫る暑さになるとか・・・。
空を見上げれば、まぶしいほどの青空が広がり、陽の光にジリジリと肌が焼かれているのを実感するほど。
今年も残暑が長引くのだろうか？？？
恋しい秋の訪れは、まだまだずっと先のよう・・・。

ふとこの作品を思い出した。
窓際に座った元さんが、晴れ渡った青空をじっと見つめている時があった。
まぶしそうに目を細めながらも、その視線を逸らすことなく、何かを真剣に見ていた。
その表情に惹かれて・・・、絵にした。

あの時元さんは何を見ていたのだろう？
鳥？　雲？　
いや、もっとずぅ～っと先の何かを見ていたような気がする。

元さんを見習って、夏のまぶしさに目をくらまされること無く、しっかりとその先を見据えていきたいと・・・今 改めてそう思う。


まだまだ厳しい暑さが続きそうです。
そして、そろそろ夏の疲れも出始めるころ・・・。
皆さん、どうかくれぐれもご自愛ください！

めざめ その二

　　　　　　　　　『 めざめ その二 』


これまでシャトン・ド・ミューのショップスペースには、“ 遊び心シリーズ ”などの小品を常時4～5点展示してもらっています。
夏休み明けの18日から、この中にペン画を一点加えることにしました。
新たな飼い主（買い主？）さんが決まった時はもちろん、随時入れ替えをしたり、常に一点は展示していこうと思っています。

その一作目が、今回ご紹介する『 めざめ その二 』。
寝起きの元さん・・・舌チョロ、牙チラ、おまけに肉球も・・・。　自分で言うのもなんだけれど、よく見ると贅沢だなぁ・・・。
しばらく出張（？）していたのですが、たくさんのご好評をいただきながら最近帰ってきたところ。
そこでシャトンのショップに・・・と思いました。

ショプスペースには、小作品の他にもポストカードや一筆箋なども販売しています。
もちろん私だけでなく、シャトンの常設作家のものを中心に平面・立体作品からグッズ類まで・・・。
そして、“ ねこの引出し ”さん特有の輸入物を含めた様々なポストカード類も必見！
ギャラリーの展示にお出かけいただいた際に、ぜひショップの方も覘いていただければ嬉しいです。
思わぬお気に入りとの出逢いが待っているかも・・・。

Remember 3・11

本当は昨日投稿しようと思っていたけれど、facebookつながらな～い騒ぎで、タイミングを逸していた。
でも・・・、やっぱり伝えたいので・・・アップ！


暑い！　確かに暑い！
しかし、あんなに冷房を強くする必要があるのかな？？？
みんな忘れてしまったのだろうか？？？
2011年・・・3月にあの大震災が起きた年の夏を・・・！

昨日（8日）は久しぶりの外出。
最寄駅まで10分ほど歩いただけで汗びっしょりに・・・。
その状態で電車に飛び乗ったら・・・、「 寒ッ！」
汗が一気に冷えて、慌てて羽織ったジャケットもほとんど役に立たないほど身体中が冷たくなった。
何軒か立ち寄った先でも、その建物内に入った途端に、ヒヤ～～～！
気持ちがいいと思うのは一瞬だけ。　
いくらも経たないうちに身体中が冷えて来る。
冷房が苦手な体質と言ってしまえばそれまでなのだが・・・。

2011年の夏には、決してこんなことはなかった。
あの年の夏も、今年ほどまでにはいかなくても、決して冷夏と言えるような過ごし易い夏ではなかったはず。
原発の問題だけでなく、あらゆる場所で節電・節約が当たり前になっていた。
冷房が抑えられて暑くても・・・、電灯の数が減らされて多少暗くなっても・・・、それをどうこう言う人を見ることはなかった。
むしろ、「これでも十分やっていける」と再確認した方も多かったはず。
あの大震災で犠牲になったたくさんの尊い命が教えてくれた大切なもの。
一人一人の心の中に芽生えたその大切な何かが、あれからたった3年が過ぎただけで、だいぶ薄れてしまったような気がする。

あの時・・・、誰もが、何かをしなければと思った。
そして自分にできることは何なのかと自問した。　
考えるより先に行動した人もいれば、しばし無力感にさいなまれる人もいた。
それでも時が経つにつれ、誰もが気付き始めた。
一人一人の思いと行動がどんなに小さく細やかでも、それが集まれば大きな大きな力になる・・・ということを！

今改めて自分に問いかけてみる。
あの時信じていた“ たとえ小さく細やかでも ”という熱い思いが、いつの間にか、“ 自分一人だけじゃ・・・ ”とか、“ これくらいなら大したことはない ”などと冷めた気持ちになってしまっていないか？？？
諦めや油断の気持ちはたった一人の心の中ではちっぽけなものかもしれない。　しかしそれがみんなの心に巣食い蔓延れば、そのほんの一瞬の諦めや油断が、やがて大きな大きな取り返しのつかない失望になってしまう。

そうならないうちに、もう一度・・・、もう一度・・・、あの時の気持ちを思い出さなければ・・・。
「 今の自分にできること、やるべきことは何なのか？」
熱く、真剣に考え続けていたあの気持ちを・・・！

そんな事をあれこれと思いながら、効き過ぎの冷房にほんのちょっとだけ感謝しつつ過ごした一日だった。


今日は絵とちょっと離れてしまいました。
皆さんそれぞれが、ほんのちょっとでもあの時のご自身の気持ちを思い出してみるきっかけになれば嬉しいです。

うと・・・うと・・・

　　　　　　　　　　　　　　　『 うと・・・うと・・・ 』


猛暑が続くかと思うと、大型台風の接近とか・・・。
家族・親戚・友人知人と同じように心配なのが・・・ノラ猫たち。

ジリジリと照りつける太陽に、「 飲み水はあるだろうか？」「 夏バテはしていないだろうか？」と心配し、台風が近づけば、「 ちゃんと雨風をしのげる場所に逃げ込んでいるだろうか？」と気を揉む。
だからと言って、我が家にお招きしても、それに応えるはずもなく・・・。　ノラなのだから心配してもしょうがない・・・と言ってしまえばそれまでなのだが・・・。
結局はただ勝手に心配しながら無事を祈るだけ。
その後元気な姿を見つけてホッとしては、自分の無力さに胸がチクリとする。

今回ご紹介する絵の中の茶トラは深川の富岡八幡宮近辺を根城にしている子で、出逢うときはいつもこんな感じ・・・。
どんなに暑かろうが寒かろうが、蝶々にちょっかいをされようが・・・動じない。
この泰然自若とした佇まいには毎回圧倒されたものだ。
実はここ数年会いに行っていない。
しかし、ヤツのことだ。　相変わらずウトウト居眠りをしながら元気に暮らしていることだろう。
もし会いに行ったとしたら、夏バテ顔をした私にヤツは何と言うだろうか？
「 だらしねぇなぁ！　あんた等辛抱が足りないんだよ。　酷暑だの台風が来るだの騒いでいたら、ノラは務まらねぇよ。　こっちのことより、自分のことを心配しな！ 」
そんな声が聞こえてくるような気がする。
耳が痛い！　気を引き締めて頑張らなくては・・・と思う。

それでも・・・、やはりノラたちのことが心配。
どうか何事もなく、また元気な姿を見せておくれ！

ねぇねぇ おねだり

　　　　　　　　　　　『 ねぇねぇ おねだり 』


余りに暑い毎日のせいか、ここ何回か元さんの夏バテ風作品が続いてしまった。
そこで今回はちょっと気分を変え、仔猫作品で皆さんに元気になっていただければと思う。

この『 ねぇねぇ おねだり 』は、7月の聖路加個展用に描いたラフタッチ小品の一つ。
ありがたいことに初日早々に新たな居場所へ・・・ということで、会場にお出かけいただきながら原画をご覧いただけなかった方には申し訳ない限り・・・。
画像をアップする機会もないまま個展が終わり、疲れと暑さでダラ～～～ッとしているうちに今日になってしまった。

自分自身も元気を取り戻すつもりで、遅ればせながらご紹介することにした。
背景のオレンジ色は、私にとって“ 元気 ”をイメージさせてくれる色。
皆さんにも、元気のお裾分けが出来れば嬉しい。

まだまだ当分の間、厳しい暑さが続きそうだが・・・、熱中症にならないように十分注意しながら、頑張りましょう！

関 文乃さん作品展のお知らせ

今日8月4日から9日（土）まで、先日私も個展を開いたばかりの聖路加第一画廊で、中学時代の同級生 関文乃さんの作品展が開催されます。

関さんは銀座七丁目の袋物店に生まれ育った根っからの銀座っ子！
様々な布を駆使し、生まれつき身についた感性を活かして作られたバッグやポーチは必見です！
携帯電話用の袋もあるとか・・・。

私も応援方々、SEKIワールドを楽しみたいと思っています。
ぜひお出かけになってみてください。

詳細は下記の通りです。

　

夢うつつ

　　　　　　　　『 夢うつつ 』


今日も一日暑かった・・・。

幽体離脱をしてここ数日の私を見てみたら・・・、きっとこの絵の元さんみたいな顔をしているのではないかな・・・？？？
かなり前の作品で、元さんの寝ぼけ顔が面白くて描いた。
『 夢うつつ 』というタイトルを付けたが・・・、もしかしたら、元さんも夏バテしていたのかもしれないな。
今さら「 意識朦朧 」とタイトルを変えるわけにもいかないが・・・。

予報では今夜も熱帯夜が続くとか・・・。
寝る前には必ずお水を一杯！
皆さん、体調管理には十分お気をつけください！