ハナミズキの頃

ようやく“春”が落ち着きを取り戻したようですね。

つい最近までわずかながら花びらが残っていたソメイヨシノの樹も、いよいよ若葉の緑一色となりました。
そして街路のあちこちでは、ハナミズキの花が今まさに満開の時期を迎えようとしています。

毎年その白や薄紅色の花を目にする頃になると、必ず想い出す作品があります。
それが今回取上げた「ハナミズキの頃」


モデルの黒猫はレイ君。
広島在住F家の愛猫です。

2001年の春、ボザール・ミューでFさんと偶然お逢いしたことが、この絵を描かせていただく大きなきっかけとなりました。
今にして思えば、それは本当に素敵なご縁でした。

実はその直前、まさにハナミズキが満開の頃、レイ君は天国に旅立っていました。

その姿を・・・、想い出を絵に・・・。
そんなFさんの切なる思いが、制作する上でかなりのプレッシャーになったことは言うまでもありません。
しかしそれは決して重苦しいものではなく、むしろ何とかFさんとご家族皆さんの為に・・・という思いが私にたくさんの力を与えてくれたのでした。

梅雨も明け、夏の日差しが感じられるようになった頃、ようやく完成した絵をF家に納めました。
直後にいただいた心温まるお礼状と、早速飾り付けられた絵のお写真に、私は何とも言いようのない安堵感と、大きな達成感を味わうことができました。

画家としての私にとって “肖像画”とは何か？
それは依頼主の思いが一緒に込められた、依頼主のための絵・・・。
私自身が描きたいと思って描く絵とは別に、依頼主の思いが私に描かせてくれる絵・・・。
「ハナミズキの頃」は、肖像画の制作に向かう心構えを確認することができた大切な経験でした。

これまで描いた猫、犬、うさぎ・・・etc（ほんの少しの人間も・・・）の肖像画はすでに250点余り。
そのどれもが私一人で描いたのではなく、依頼主はもちろんのこと、一作一作それぞれの絵のモデルになった動物たちと関わりのある全ての人たちの思いが込められているのです。

ハナミズキの花を見るたびに、レイ君を始め、これまで私が絵にしてきたみんなの顔が甦り、私を初心に帰らせてくれます。

そして改めて思うのです。
これからもご依頼のある限り、精一杯の心を込めて、人間の言葉を喋らない愛すべき家族たちの肖像画を描き続けていきたいと・・・。

横浜で “猫の展覧会”

ゴールデンウィークに、横浜のArt　Gallery　山手で開催される“猫の展覧会”に参加します。

みなとみらい線終点の元町中華街駅から徒歩３分。
海の見える丘公園に続く谷戸坂をちょっと上ったところに位置する会場には、毎日近所のノラ猫が遊びに来たりします。

私は初参加ですが、他の５人はこれまでにも参加されている素晴らしい作家さんばかり・・・。
私自身ちょっと緊張しながら、とても楽しみにしています。

お出掛けのついでに、ぜひお立ち寄りください。

詳しくは、ギャラリーのホームページを・・・。

ボザール・ミュー ノラ猫個展終了

昨日４月２５日、ボザール・ミューに於ける９回目のノラ猫個展を無事に終えることができました。

８日間の会期中に、真冬から初夏までが行ったり来たり・・・。

そんな変化の激しい天候の中お出掛けいただいた皆様、本当にありがとうございました。

今回もたくさんの力をいただきました。

また次回に向け、精一杯の制作をスタートしたいと思います。

初めて君と逢った日

個展出品作の中から・・・「君と初めて逢った日」

深川の富岡八幡宮近くの遊歩道で出逢ったノラです。
植え込みがほんの少し切れたその奥に、まるでその場所を意識して選んだかのように佇んでいました。
逆光の中のその姿に思わず見とれてしまったことを、今でもはっきりと覚えています。


さてさて、今回の個展も今日を入れて残すところあと2日・・・。
8日間という会期は長いと思っていたけれど、今はもう6日間が過ぎてしまったのか・・・という印象です。
あと2日しかない・・・と思わず、まだ2日ある・・・と思うことにします。

この8日間の為に精一杯描いた19点の作品たち。
一人でも多くの方々に、観て、楽しんでいただきたい。
ただひたすらそう願うばかりです。


窓の外は久し振りの青空・・・。
今日も素敵な出逢いが・・・、再会がたくさんあるような予感がします。

おっと、遅刻しそうだ。
行ってきま～～～す！

塀の上の仔猫

個展出品作からの1点「ハラハラ 初めて塀の上」

時折カメラとスケッチブックを手に、魅力的なノラ猫モデルとの出逢いを求めて取材（？）に出かけます。

この絵のモデルになった子供三毛に出逢ったのは、もう7～8年も前になります。
場所はノラ猫のメッカともいうべき谷中。
おぼつかない足取りで塀の上を歩く仔猫の姿に、思わず連続してシャッターを切りました。
しかし、いざ作品にしようとあれこれ構想を練り始めると、何故か“これぞ”という構図になかなかたどり着くことが出来ず、保留状態のままで何年も過ぎてしまいました。

そして今回、いったい何がきっかけなのかは分かりませんが、この思い切り横長の大胆な構図が突然降りてきました。
機が熟した・・・ということなのでしょうか。
描きながら、何だか嬉しくてたまりませんでした。


個展が始まってからまだ2日しか経っていませんが、この作品、思わぬお褒めのお言葉をいただきます。
「この塀がイイですねぇ。　ところどころ欠けていたり、薄汚れたところが年月を感じさせてくれて・・・」な～んて。

実はこの塀、もう存在していません。
1～2年前だったか、久し振りにノラたちに会いに行ったところ、塀だけでなく、その近辺全体がきれいに整備され、私のお気に入りだった景色は姿を消していました。

古くなったものを新しくする・・・その必要性の有無は別として、長年存在してきた古いものでしか持ち得ない魅力は失いたくないものです
そこには一朝一夕では決して作ることができない、何かかけがえのない大切なものがあるように思えてなりません。

写真の中に残された風景が甦らせてくれた、その時の私が感じた“何か”を、これからも絵の中で表現していきたいと思います。


ところで・・・、“塀”に対する熱心な感想を下さった方のほとんどが、最後に慌ててこう付け加えてくださいます。
「あっ、あっ、も、もちろん子猫も可愛らしくて、素敵です・・・・・・」と。

（お気遣い？）ありがとうございます。

ノラ猫個展スタート！

いよいよ今日から個展が始まります。

昨日は夕方5時過ぎから、銀座ボザールミューさんに搬入してきました。
ミューさんでの個展は19回目。
それでも初日直前は、今でも期待と不安の入り混じったなんとも言いようのない緊張感に襲われます。

ギャラリーの宮地オーナーに助けていただいての飾りつけは、いつも楽しいひとときです。
自分がどの場所に飾られるか・・・？
それは絵の中の猫たちにとっては大切なことなのです。
「あなたはここがいいわね・・・」
「迫力のブーちゃんは・・・、ここかな？」
「この子の隣じゃ、喧嘩なるかな・・・」
それぞれのノラたちに話しかけながら、居心地のいい場所を探してあげようとする宮地さんの姿は、実に楽しいのです。
これまでの経験では、この飾り付けの段階ではなにやら不満＆不安そうに見える猫たちが、一晩たって初日を迎えると、みんな落ち着いて満足気な顔になっているから不思議。
きっと今日もそうなんだろうな・・・。

「新作約20点・・・」とDMには書いたけれど、ギリギリまで頑張った末、19点が限界でした。
それでも精一杯描いた19点が一堂にそろうと、制作中には感じることの出来なかった不思議な感覚を覚えます。
それはきっと達成感・・・みたいなもの？
一作一作集中して制作していたせいか、その時にはまったく意識していなかった全作品に共通して流れる音楽にも似た空気の振動を感じ、自分が描いた絵なのに、ジ～ンと胸が熱くなりました。
どうか素敵な出逢いがいっぱいの8日間になりますように・・・。

この絵は、今回の出品作の中の1点「また逢えて よかった・・・」
谷中のノラがモデルです。
実は宮地オーナー一番のお気に入り。
そこで、入り口のドアを開けた正面で、お客様を迎えてもらうことにしました。
ぜひこの子に逢いにお出掛けください。
お待ちしています。

さくら まくら

いよいよ個展まで10日余り・・・。　
最後の追い込みもさらに拍車が掛り、連日自宅に籠りきり状態が続いています。

今年も桜を見ることはできないな・・・と諦めていました。
しかし、今年の桜はここ数年と比べると見ごろの期間が長いですね。
ちょうど個展のDMを発送する準備が終わり、これ幸いと投函しがてら近所のお花見に行ってきました。
桜が持つ不思議な力に、焦りと緊張の連続で疲れきった心はすっかりリラックス～～～。
同時に、エネルギーもいっぱい充電させてもらいました。

お花見をするような余裕はない・・・なんて勝手に自分の気持ちを追い込んでいただけだったようです。
大切なのは、時間的な余裕ではなく、心の余裕・・・ですね。

この絵は、昨年春のノラ猫個展に出品した中の1点「さくら まくら」

ノラ猫作品を描くとき、そのバックによく桜の花を描き入れます。
併せて、様々な草木の新芽も・・・。
淡い紅色と、濡れたように光り輝く若緑は、私にとってまさに“春”の象徴です。
今回の個展でも、そんな脇役たちが主役のノラ猫たちを引き立ててくれるように願いながら・・・・・、さぁ ラストスパートだ！