元気の源

猫が大好き、動物が大好きな、パステル画家・山中翔之郎のブログです。

ハナミズキの頃

2010-04-30 04:48:40 | My Works -肖像画-
ようやく“春”が落ち着きを取り戻したようですね。

つい最近までわずかながら花びらが残っていたソメイヨシノの樹も、いよいよ若葉の緑一色となりました。
そして街路のあちこちでは、ハナミズキの花が今まさに満開の時期を迎えようとしています。

毎年その白や薄紅色の花を目にする頃になると、必ず想い出す作品があります。
それが今回取上げた「ハナミズキの頃」


モデルの黒猫はレイ君。
広島在住F家の愛猫です。

2001年の春、ボザール・ミューでFさんと偶然お逢いしたことが、この絵を描かせていただく大きなきっかけとなりました。
今にして思えば、それは本当に素敵なご縁でした。

実はその直前、まさにハナミズキが満開の頃、レイ君は天国に旅立っていました。

その姿を・・・、想い出を絵に・・・。
そんなFさんの切なる思いが、制作する上でかなりのプレッシャーになったことは言うまでもありません。
しかしそれは決して重苦しいものではなく、むしろ何とかFさんとご家族皆さんの為に・・・という思いが私にたくさんの力を与えてくれたのでした。

梅雨も明け、夏の日差しが感じられるようになった頃、ようやく完成した絵をF家に納めました。
直後にいただいた心温まるお礼状と、早速飾り付けられた絵のお写真に、私は何とも言いようのない安堵感と、大きな達成感を味わうことができました。

画家としての私にとって “肖像画”とは何か?
それは依頼主の思いが一緒に込められた、依頼主のための絵・・・。
私自身が描きたいと思って描く絵とは別に、依頼主の思いが私に描かせてくれる絵・・・。
「ハナミズキの頃」は、肖像画の制作に向かう心構えを確認することができた大切な経験でした。

これまで描いた猫、犬、うさぎ・・・etc(ほんの少しの人間も・・・)の肖像画はすでに250点余り。
そのどれもが私一人で描いたのではなく、依頼主はもちろんのこと、一作一作それぞれの絵のモデルになった動物たちと関わりのある全ての人たちの思いが込められているのです。

ハナミズキの花を見るたびに、レイ君を始め、これまで私が絵にしてきたみんなの顔が甦り、私を初心に帰らせてくれます。

そして改めて思うのです。
これからもご依頼のある限り、精一杯の心を込めて、人間の言葉を喋らない愛すべき家族たちの肖像画を描き続けていきたいと・・・。
コメント (2)
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