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元気の源

猫が大好き、動物が大好きな、パステル画家・山中翔之郎のブログです。

誓い 3

2013-09-19 13:58:26 | My Works -天体シリーズ-
        『 誓い 』



今夜は中秋の名月。
満月と一致するのは珍しいことらしい。

この『 誓い 』は、これまでに2回アップしているが、この時期になるとまた・・・という気になってしまう。

以前アップした際のコメントと共に、もう一度・・・。



何故だろう? 秋の風を感じるころになると、無意識のうちに夜空を見上げ、月の姿を探していることがある。

まさに今夜、もっともポピュラーな十五夜の中秋の名月に始まり、十三夜、そして十日夜の月と、古くから伝わる様々な風習が月を愛でる習慣となって現在に至り、それが9月、10月、11月と“秋”という季節の間に続くからなのかもしれない。

エネルギーの象徴ともいうべき太陽が放つ光の圧倒的な強さと違って、月の光には静けさの中に秘められた優しくも逞しい力を感じる。
だからだろうか・・・、月と対峙していると、自分の中にも何か新たな力が湧き上がってくるような・・・そんな不思議な気持ちになる。
そして自分自身に対して何か誓いをたてずにはいられなくなる。
それは「頑張るぞ!」みたいな単純なものであったり、時には人生に大きな意味を持つとんでもない誓いだったり・・・。


2005年秋のボザール・ミュー個展に出品した新作の中に、4点の天体シリーズ作品があった。 
今回ご紹介する『 誓い 』はその中の1点。 40cm×55cmというサイズで、私が描く中では大きな部類に入る。
この時はとにかく思いきり大きなお月様を描きたかった。
真っ黒に近い濃紺の中のうっすらと黄色味を帯びた月色・・・。 ほかの色は何もいらない・・・くらいの気持ちだった。
だからなのか、後ろ姿でたたずむ猫は自然と黒猫になった。

満月と一緒にこの黒猫を連れて帰ってくださることになったOさんが、ギャラリーの壁に掛けられたこの絵を初めてご覧になった時の様子は、今でもはっきりと思い出すことができる。
Oさんの視界にこの絵が入った瞬間、それまで交わしていた会話がプツンと途切れ、その身体が吸い寄せられるかのようにス~っと絵の前に・・・。 そして両の指先が静かに額縁の下辺の両角に添えられた。 もし目の前の絵が人間だったとしたら、そのまま抱き締めていたのではないかと思えるような・・・そんな不思議な緊張感が漂っていた。
しばしの静寂のあと、その緊張感を解きほぐそうと声をかけてみた。 
交わす会話はほとんどうわの空で、かろうじて相槌を打ちながらも、その視線が絵の上から動くことはなかった。

後日、絵がご自宅に届いてからの話をOさんから聞いた。
「思ったよりも大きくて、びっくり! それに、後ろ姿の猫が黒ちゃんだって気が付かなかった」
「えぇぇ~っ! あんなに大きいのに・・・」と驚きの声をあげながら、私は心に中でおおいに納得していた。
あの黒猫は私自身であり、同時に縁あって絵の前に立った方々一人一人であって欲しいと願っていたから・・・。
きっとOさん自身が絵の中の入りこみ、黒猫と同化して満月を見ていたのだろう。
そしてOさんも、月が持つ不思議な力の虜になってしまった一人に違いない。

はたしてOさんは満月を前に何か“誓い”をたてたのだろうか?
それは未だに聞いたことがない。

秋の風が吹くと思い出す一作・・・。
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虹の向こうへ・・・再び

2013-08-15 13:08:31 | My Works -天体シリーズ-
      『 虹の向こうに・・・ 』


虹が好き!
虹が大空いっぱいに現れると、なぜかとても気持ちが昂揚する。
それはただ単に“きれい”とかいうことではなく、何かいろいろな感情が複雑に絡み合った中から生まれてくる“ 無 ”に近い心境なのかな・・・。


今日は8月15日。
私自身も含めた戦後生まれの者にとっては、何も実感の伴わない特別な日。
それでも心の奥底に“何か”を感じる。
私よりも一世代上の人たちにとっては、途方もない悲しみと痛みを実感する日なのだろう。
心を“ 無 ”にして、その思いに向き合い、素直に耳を傾けよう。
今のところ実感せずに済んでいることに感謝しつつ、しかし現実には世界中のいたる所で今もなお悲劇を実感している多くの人たちがいることを決して忘れてはならない。
いつの日か・・・、少しでも早く・・・、世界中の誰もが戦争という悲劇を未来永劫に実感しないで済む日々が訪れますように!


こんな思いも込めながら、既に一度ご紹介したことのあるこの『 虹の向こうに・・・ 』を再度ご紹介することにしました。
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いつか見た星空

2013-07-01 23:45:54 | My Works -天体シリーズ-
        『 いつか見た星空 』



7月8日(月)から ギャラリーSTAGE-1 で始まる “ 天空の詩展 ” に出品するために描いた、完成したばかりの新作。
展示会のタイトルを思いきり意識しながら、自分なりの世界を描いてみた。
これまでにも、自分で勝手に“ 天体シリーズ ”と呼んでいる作品を何点も描いてきた。 そのほとんどが縦長作品。 それも一般的な縦横比よりもかなり縦に長~い・・・。
空の“ 高さ ”を表現したくてそういう構図を選ぶことが多かった。
しかし今回は、ほんの少しだが横長で描くことにした。 
“ 高さ ”だけでなく“ 広さ ”も感じてもらいたいという気持ちが強かった気がする。
これからの“ 天体シリーズ ”には、横長作品が増えていくかもしれない。
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耀

2013-01-05 16:03:40 | My Works -天体シリーズ-
                        『 耀 』



2007年11月に開いたボザール・ミューの個展DMにこの作品を使った。
ご覧の通り縦長で、通常のハガキでは左右に余白ができる。 
そこには“山中翔之郎個展”と共に、“長~い作品尽し”というタイトルが印刷されていた。
通常の・・・たとえばA4サイズの縦横比とは違って、長辺が短辺の2倍を超えるサイズの作品ばかりを描いた個展だった。

これまでこのブログでご紹介してきた縦横に長い作品の中には、この時初出品したものが何作も入っている。
この長~い形だからこそ思い浮かんでくる様々な構図を思いきり楽しみながら描いた。


DMをご覧になって、この『 耀 』を目当てに初日からお見えになった K さんは、原画を目の前にして開口一番・・・、
「思っていたよりも小さいのね。 掛け軸くらいの大きさかと思ってたわ」
確かに14cm×40cmと、けっして大きなサイズではない。
Kさんが思い描いていたイメージと違っていたのかと思いきや、じっと絵とにらめっこ(?)をしていたその顔 に笑みが浮かんだ。
「でも良かった・・・。 この位がちょうどいいかもしれない。 これ以上大きかったら、かえって迫力があり過ぎて重たいかも・・・」
こうしてこの『 耀 』は、翌年のお正月に K さんのお宅の床の間に飾られることとなった。


確かに大作はそのサイズだけでも迫力がある。
しかし、その作品が飾られる場所、環境とのバランスが取れていないと、その折角の迫力が反って重たく感じられることになる。
一般の家庭なら尚更・・・かもしれない。

たとえ小さな作品でも、気に入ってくださったお気持ちとその絵に相応した場所さえあれば、どんな大作にも劣らない存在価値がある。
毎年正月になるとなぜかこの絵を思い出し、そんな思いを新たにする。

きっと K さんのお宅の床の間で耀きを放っているだろう『 耀 』の姿を思い浮かべながら、今年も自分らしい絵を描き続けようと心に誓う。
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特等席

2012-08-04 15:16:59 | My Works -天体シリーズ-
                              『 特等席 』


ここのところ週末になると、毎週のようにどこかしらで花火大会が開かれている。
昨年は震災のこともあって、予定されていた花火大会の多くが自粛された。 
そのせいか、今年はいつも以上に華やかで、見物する人の数も多いように思える。
もちろん花火の美しさを愛でながらも、震災に関わる諸々のことが頭から離れることはけっしてないのだが・・・。


私が住む地元の荒川河口近くでは、曜日に関係なく毎年8月1日に花火大会が開かれる。
今年は平日ど真ん中の水曜日。 空模様の心配もなく、夕方が近づくにつれ町中全体の雰囲気がどこかそわそわしているようで、いつもとは違って感じられた。

定刻の7時半を少し過ぎたころ、まだ少し青さの残った空をつんざくような炸裂音が響き渡る。
冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出して家を飛び出す。
歩いてほんの数分の距離に中学校がある。 その正門前が我が家にとっての花火見物特等席!
学校を囲むフェンスにもたれて、缶ビールのプルトップをプシューっ! 保冷も何もせずに冷えたままの缶ビールを飲みながら花火見物をできるなんて、何と恵まれていることだろう。
確かに荒川の堤防を越えて広い河川敷まで行けば、花火がまさに真上で開き、その光と音がほとんど同時に見え聞こえるほど・・・。 それはそれでものすごい迫力を楽しむことができる特等席ではある。 しかし、見物客の多さも半端ではない。 
普段なら往復しても10分ほどだが、この日だけはいったん堤防の内側に入ってしまうと、帰りだけでも30分でも足りないくらいの混雑なのだ。

そんな思いをしなくても、道端特等席からでも迫力は充分過ぎるくらい。 
数秒おきに打ち上げられる様々な色・形の単発花火が数分続くと、それまでには無いちょっとした間が数十秒・・・。
「 来るぞ・・・ 」と、無意識のうちに口から洩れる。 と同時に、ドドドドドッという地響きとともに光の筋が太い束になって上がってゆく。
次の瞬間、何十・・・、いや百を超えると思われる花火が一斉に花開き、すっかり暗くなった夜空一面が七色に光輝いた。
何処からともなく大きな歓声と拍手が湧き起る。
「 サイコー! 」と呟きながら、思いきり缶ビールをあおる。
今年もまたこうして花火を楽しむことができた・・・。
そのことに静かな喜び感じながら、また来年も同じような感動を味わうことができるように願った。


ドドドドドッ・・・を絵にしたいと思った。
いや、毎年花火を見るたびにそう思っていた。
7月12日にアップした『 夏の想い出 』が新たなきっかけになって、もっと大きな画面に、さらに鮮やかに花火を描いてみることにした。
そうしてようやく完成したのが、今回アップした『 特等席 』。
『 夏の想い出 』で使ったセヌリエのパールパステルの新種を捜し、手に入れた。 それを前回以上に思いきり使ってみた。

ドドドドドッ・・・のワクワク・ドキドキ感を感じていただければと願いながら・・・。
そして心の底から花火を楽しむことのできる日が、日本中のいたる所に一日も早く訪れることを祈りながら・・・。
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夏の想い出

2012-07-12 00:17:43 | My Works -天体シリーズ-
                              『 夏の想い出 』


銀座ボザール・ミューで昨日から始まった“白黒猫展”に出品している新作のご紹介。

この形、前にも見たことが・・・と思われた方もいるのでは?
その通り! ここ何年か天の川をバックに描いた数点の作品で、高さと広さを感じさせてくれる形を・・・とあれこれ考えた末に生まれたのがこのカットだった。 そしてこの作品でもそれを使うことにした。
しかし、今回は花火がバック。 
白黒猫展ということもあり、背中の柄でちょっとメルヘンチックな遊び心を出してみることにした。
タイトルは・・・『 夏の想い出 』。

実は数年前に一度、花火をバックに小品を描いたことがある。
何回か個展で展示をしたこともあるが、そのたびに何か物足りない気がして、しばらくはお蔵入りの状態になっていた。
先日終了したばかりの聖路加個展の準備をしていたころ、急にその作品に手を加えてみることにした。 新たな描き方を試してみたくなったから・・・。
その時点ではまだまだ満足というわけにはいかなかったが、それでもいろいろな可能性を感じることができた。

その延長線上にあるのが今回の『 夏の想い出 』ということになる。
セヌリエというフランスの老舗画材店製のパステルに、パール調のシルバーとゴールドがある。 花火の部分にそのパステルを思いきり使った。
直接パステルで描いてみたり、粉にして落とした上から叩くようにして画紙に定着させたり・・・。 いろいろな方法で花火の華やかさを表現してみた。
このパステルは、作品を見る角度によってキラキラ輝いて見える。
もちろんそれは原画を前にしての話で、この画面上でお見せできないのが残念。
ぜひボザール・ミューで原画を見ていただきたいと思う。

そろそろ梅雨明け・・・?
今年もあちらこちらで花火大会が開かれるのだろう。
観客がまばらな場所では、絵の中のような風景が見られる・・・かも???
皆さんにとっても、素敵な想い出がいっぱいの夏となりますように・・・!


“白黒猫展”は21日(土)まで無休で開催されています。
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誓 い  2

2011-10-13 02:14:06 | My Works -天体シリーズ-
                 『 誓 い 』


何故だろう?
秋の風を感じるころになると、無意識のうちに夜空を見上げ、月の姿を探していることがある。

もっともポピュラーな十五夜の中秋の名月に始まり、十三夜、そして十日夜の月と、古くから伝わる様々な風習が月を愛でる習慣となって現在に至り、それが“秋”という季節に続くからだろうか?
エネルギーの象徴ともいうべき太陽が放つ光の圧倒的な強さと違って、月の光には静けさの中に秘められた優しくも逞しい力を感じる。
だからだろうか・・・、月と対峙していると、自分の中にも何か新たな力が湧き上がってくるような・・・そんな不思議な気持ちになる。
そして自分自身に対して何か誓いをたてずにはいられなくなる。
それは「頑張るぞ!」みたいな単純なものであったり、時には人生に大きな意味を持つとんでもない誓いだったり・・・。


2005年秋のボザール・ミュー個展に出品した新作の中に、4点の天体シリーズ作品があった。 
今回ご紹介する『 誓い 』はその中の1点。 40cm×55cmというサイズで、私が描く中では大きな部類に入る。

この時はとにかく思いきり大きなお月様を描きたかった。
真っ黒に近い濃紺の中のうっすらと黄色味を帯びた月色・・・。 ほかの色は何もいらない・・・くらいの気持ちだった。
だからなのか、後ろ姿でたたずむ猫は自然と黒猫になった。

満月と一緒にこの黒猫を連れて帰ってくださることになったOさんが、ギャラリーの壁に掛けられたこの絵を初めてご覧になった時の様子は、今でもはっきりと思い出すことができる。
Oさんの視界にこの絵が入った瞬間、それまで交わしていた会話がプツンと途切れ、その身体が吸い寄せられるかのようにス~っと絵の前に・・・。 そして両の指先が静かに額縁の下辺の両角に添えられた。 もし目の前の絵が人間だったとしたら、そのまま抱き締めていたのではないかと思えるような・・・そんな不思議な緊張感が漂っていた。
しばしの静寂のあと、その緊張感を解きほぐそうと声をかけてみた。 
交わす会話はほとんどうわの空で、かろうじて相槌を打ちながらも、その視線が絵の上から動くことはなかった。

後日、絵がご自宅に届いてからの話をOさんから聞いた。
「思ったよりも大きくて、びっくり! それに、後ろ姿の猫が黒ちゃんだって気が付かなかった」
「えぇぇ~っ! あんなに大きいのに・・・」と驚きの声をあげながら、私は心に中でおおいに納得していた。
あの黒猫は私自身であり、同時に縁あって絵の前に立った方々一人一人であって欲しいと願っていたから・・・。
きっとOさん自身が絵の中の入りこみ、黒猫と同化して満月を見ていたのだろう。
そしてOさんも、月が持つ不思議な力の虜になってしまった一人に違いない。

はたしてOさんは満月を前に何か“誓い”をたてたのだろうか?
それは未だに聞いたことがない。

秋の風が吹くと思い出す一作・・・。
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虹の向こうへ・・・

2011-09-12 10:13:26 | My Works -天体シリーズ-

本日発行の“ ねこ新聞 ”9月号に、この『 虹の向こうへ・・・』が掲載されました。

年間定期購読という形で毎月12日に発行されているこの“ねこ新聞”は、まさに知る人ぞ知る猫専門の新聞で、多くの著名人の方々による文・詩は猫にかかわる様々な思いで溢れています。

3年ほど前、思いもよらぬご縁から初めてこの“ねこ新聞”に作品を掲載していただきました。
すでにブログでご紹介したことのある『一番星』という作品です。
今回再び載せていただくことになったこの『虹の向こうへ・・・』と共に、どちらも天体シリーズの作品。
“星”と“虹”・・・、どちらもそのものの美しさとは別に、人の命にかかわる様々な感情を覚えさせてくれる存在だと思っています。
前回のブログでも少しだけ触れましたが、特別なことが起こったこの年の、そしてやはり特別なことが起きてからちょうど10年が経ったこの時期に、たとえ偶然であったとしてもこの作品を使っていただいたことは、私にとって静かな、そしてとても大きな喜びです。
この場を借りて、“ねこ新聞”の原口さんに心より感謝を申し上げます。


ちなみに・・・、『虹の向こうへ・・・』は4ページ面に掲載され、表紙にはあの竹久夢二による『黒猫を抱く女』が・・・。
いつの日か、私も“ねこ新聞”の表紙を飾れるような絵描きになりたいものです。
夢は・・・思い続ければきっと叶う!
そう信じて・・・。
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天の川の詩 再び・・・

2011-06-16 09:57:14 | My Works -天体シリーズ-
                        『 架け橋 -天の川の詩-』

ちょうど昨年の今頃、縁あってギャラリー銀座STAGE-1の企画展“天の川展”に参加した。
その時初めて天の川を描いた。 小品ばかり4点だったが、“天体シリーズ”に天の川が加わった思い出深い作品になった。

七夕が近くなると、不思議と気持ちが夜空に向かう。
織姫と彦星の年に一度の逢瀬・・・ではないが、この時期になると無性に天の川を描きたくなる。
今回ご紹介する作品『 架け橋 -天の川の詩-』は、そんな気持ちが私に描かせた最新作。
前にも見たことが・・・と思われた方もいるのでは?
確かに一年前に描いた4点の作品も同じカットだった。 ただ、今回はずっと大きい。 高さ50cmを超える。
同じような雰囲気の絵を、この大きさで描きたいとずっと思っていた。
思いながら、いつの間にか1年が過ぎてしまった。
あたためていた・・・というと格好良いが、七夕というきっかけがないと描けなかった・・・というのが本当のところなのかもしれない。

一年越しの願いが、天の川と一緒に、前には無かった流れ星を描かせた。
それはもうほとんど無意識で、どうしてもここに流れ星が欲しい・・・という思いだけで手を動かしていた。
額装を終えて改めて完成した絵を見てみたら、ふと流れ星が天の川に架けられた橋に見えた。
織姫と彦星の逢瀬の手助けになるかな、なんて・・・。

星空は人をロマンチストにする不思議な力を持っている。
七夕が近い頃は特に・・・。
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願い

2011-02-05 17:15:01 | My Works -天体シリーズ-
流れ星をみつめるこの後ろ姿の二匹にはモデルがいる。
名前は“小春”と“小夏”。 その名付け親は、昨年暮れにご紹介した絵本『うさぎのユック』の原作者 絵門ゆう子 さんである。

2002年のちょうど今頃・・・、先日17回目を終了したばかりの聖路加画廊で、まだ2回目の会期中に絵門ゆう子さんと出逢った。
それがきっかけとなり、2004年の秋には絵本制作という素晴らしい機会をいただくことになった。
『うさぎのユック』が完成するかしないかのうちから、絵門さんは顔を合わすたびに「第2弾を・・・」と張り切っていた。 彼女の頭の中だけにあった第2弾のアイデア・・・。 その中には愛猫二匹のイメージがあったようだ。
「参考までに渡しておくね」
そう言って手渡された5~6枚の写真には、まだ仔猫の頃の“小春”と“小夏”のじゃれあう姿が写っていた。

第2弾の絵本は実現しないまま、2006年の春に絵門さんは天国に旅立った。
二匹の写真は私の手元に残されたまま・・・。

その年の秋、ボザール・ミューでの個展にこの『願い』を描いて出品した。
第2弾制作の夢が果たせなかった無念さと共に、絵門さんへの追悼の気持ちがこの絵を描かせたのかもしれない。


大好評をいただいたが、その個展中に買い手がつくことはなかった。 余りに好評だったので、そのことはむしろ不思議にさえ感じた。

年明けの聖路加個展にも出品。 展示作業を終えたとき、気のせいか『願い』がその場所にとてもしっくりと合っていて落ち着いて見えた。
そしてその時も前回に勝るとも劣らないほどの人気を集めながら、なぜか買い手がつかないまま迎えた4日目・・・。
「この絵・・・、取っておいてください」
そう言ってくださったのは、このとき初めてこの絵を見た絵門さんのご主人だった。
ご売約済みを表す赤丸のシールを貼ったあと、何人もの方がこの絵を欲しがられ、売約済みになっていることを悔しがられた。
絵門さんのご主人がご覧になるまで、他の方には絵の中の二匹が “買っちゃダメ”オーラでも出していたのだろうか・・・。

その時、私はふっと思った
人が絵を選ぶのではなく、絵が自分の居場所を決めるのだ・・・と。
一作一作それぞれの絵がお世話になる先は、まさに“運”と“縁”によって決まるのかも知れない。
それは描き手の私がどうこうできることではなく、描かせてもらったことにただひたすら感謝しつつ、その絵の運命を素直に受け入れることが絵に対する礼儀なのだろう。


『願い』は今、絵門さんが過ごされたご自宅にご主人によって飾られている。
ご主人の背中をそっと押したのは、絵の中の二匹か、それとも天国の絵門さんか・・・?
聖路加個展の頃になると、毎年そんなことを考える・・・。
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わをん・・・あい展 ご案内

2010-12-26 13:31:22 | My Works -天体シリーズ-

前回に引き続いて、“わをん・・・あい展”のご案内です。

さてこのタイトルの意味は・・・?
お分かりになった方も多いかと思いますが、50音順を頭に浮べると、な~るほど。
“わをん”が50音順最後の3文字・・・、そして“あい”は正に始めの2文字というわけです。
更にそれぞれの音を漢字に変えると、“わをん”→“和音”、“あい”→“愛”という素敵な言葉が浮かんできました。
正確に言えば“を”ではなく“お”ですが、そのへんは目を瞑って・・・。
年末年始の年またぎ作品展という、ちょっと変った企画を見事に表しているタイトルだと感心しました。

私は取り敢えず1点。 
取り敢えず・・・というのは、実は2点の予定で描き始めたのですが、気合が入りすぎて(?)1作しか完成しませんでした。 トホホ・・・。
新年の部が始まるまでちょっと間があるので、それまでに2作目を完成させて展示する予定です。
年末の部の出品作には、今年の干支である寅・・・ならぬトラ猫の家族を、夕暮れをバックにして描きました。
タイトルは『和音 -明日も一緒に・・・-』 新たな朝・・・来る新年が素晴らしい一年になることを願いながら名付けました。

描き掛けの2作目は・・・?
もちろん卯年のウサギが登場することだけお伝えして、後は完成してから・・・ということにします。


“わをん・・・あい展”
ぜひお立ち寄り下さい。
詳細はギャラリーSTAGE1のホームページをご覧下さい。

・会期 2010・12・27(月)~29(水)
     2011・1・17(月)~22(土)
・時間 12:00~19:00 最終日1月22日は16:00まで
・会場 銀座 ギャラリーSTAGE1
・電話 03-3562-5181
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始まり

2010-11-08 01:35:13 | My Works -天体シリーズ-

前回の『オレンジ刻(どき)』について書いていたら、重なるようにしてこの作品が甦ってきました。

この作品に付けた『始まり』というタイトルを見て、「あっ、夜明けなんだ・・・」と気が付かれる方が結構いらっしゃいました。
そう・・・、これは夕暮れではありません。
初冬の夜明けの空に並ぶようにして浮かぶ雲・・・。 朝の陽の光を受けて僅かにオレンジ色に染まった雲たちと、その間で光る明けの明星があまりにも美しくて、どうしても描きたくなってしまいました。
刻々と移り変わる空の色の変化をみていると、「今日も一日頑張ろう!」なんて、新たな力が湧いてくるような気がします。
朝日を身体中に浴びながらそのダイナミックな景色に見入っている後ろ姿の白黒猫は・・・、まさに私自身です。


この作品は2007年12月のミュー個展に初出品し、年が明けた1月、聖路加画廊での作品展にも展示しました。 そしてそれ以来ずっと、聖路加病院のある病室の壁に飾られることになったのです。
それはホスピス病棟の一室。
病院に何かお礼をしたい・・・という患者さんご本人の意思に副って身内の方がこの『始まり』を選んで下さったのでした。

ご希望に従って“寄贈”の文字と一緒にご本人のお名前を記したカードを付け、後日病室へ直接お届けにうかがいました。
残念ながらご本人はお休みになっている最中で直接お礼の気持ちを伝えることは叶わず、作品は付き添いの方にお預けしてきました。
それ以来、ホスピスということもあって改めてその部屋を訪れたことはなく、ご本人のその後のこともわからないまま・・・。
ただ、それからも毎年続けている個展の最中に、何人かの先生や看護士さんが 「ホスピスで見ましたよ」と声を掛けてくれました。

あれから3年近くが過ぎ、もしかしたらその病室の患者さんも何回か変わっているかもしれません。
間近に迫った人生の最期の瞬間まで、残された日々を過ごす空間・・・。
縁あってその部屋に入ることになった方が、新たな日=希望を意識して描かれた『始まり』というタイトルの絵を見て、はたしてどんな思いを抱かれるのか?
幾度となく考えては、答えの出ないまま・・・。

宗教的なことを書くつもりはまったくありませんが、もしも天国とか浄土とかいうところが存在するとしたら・・・、あるいはいつの日か生まれ変わることがあるとしたら・・・、この世での人生の終焉は別の新たな世界での始まりなのでは・・・???

自らの人生をいろいろな意味で振り返ることになるであろう方々の目に触れる場所に、この『始まり』が飾られているのは単なる偶然なのでしょうか?
願わくは・・・、この絵を見る人の心が、少しでも穏やかになりますように・・・。
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十三夜に想ふ

2010-10-19 15:53:20 | My Works -天体シリーズ-
天体シリーズの中で、月を描いた作品は何点かありますが、その多くは満月・・・。
この作品も、構想を練っている段階では満月になる予定でした。
しかし、実際に制作を始めて描き進めてゆくうちに、なぜかふと満月に近くて満月ではない月にしたい・・・という思いが強くなりました。
それが何に由るものなのかは分りませんが、完全なまん丸をちょっとだけ欠けさせてみたい・・・といういたずら心が湧いたのかもしれません。
もちろん満月を描くのが飽きた・・・なんてトンでも無い。 あのまさに“盆のような”まん丸の月を目にしたときに感じる神秘に満ちた静かで力強いパワーには、今でも変わらぬ魅力を抱いています。
ただこの時は、その完璧な姿よりも、ほんの少しだけ隠れた部分があることにホッとしていたのかもしれません。
月を見上げる白猫の後ろ姿から、そんな心情が伝わってきたような気がしました。

100%完全なものだけでなく、それぞれの形、その時その時のあり様に美しさを感じることができるというのは素敵なことだと思います。
自分自身の気持ちそのものが、日々刻々と変わっているのですから・・・。
いつも自分の気持ちと素直に向き合いながら、その時々の思いを大切にしていきたいと思っています。


秋には三つの名月があることを知りました。
俄か知識ですが・・・。
誰もが知っているであろう“十五夜”。 これは旧暦8月15日の月。
そして、今回の作品のタイトルにも入っている“十三夜”。 旧暦9月13日の月。
更にもう一つ、旧暦10月10日の月は“十日夜”(とうかんや)と呼ばれて、この三名月を続けて見ることができると縁起が良いとのこと・・・。

ちなみに・・・、今年の十三夜は、明日10月20日です。
何とか晴れてもらって十三夜を拝み、更に十日夜の月にも会って幸運を・・・!
こういうことには何の躊躇も無く、実に素直になってしまいます。

ところで、明日の天気予報は・・・???
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コロナに想ふ

2010-10-03 02:05:46 | My Works -天体シリーズ-

今回ご紹介するのは 「コロナに想ふ」
この夏に描き上げたばかりの作品です。
この絵には、ちょっと素敵なエピソードがあります。


今から未だ3ケ月にも満たない7月の中頃、友人M氏の奥様からこんなメールをいただきました。
「天体シリーズで日食を描いていただけませんか? ワンちゃんの後ろ姿で・・・」
このブログでもこれまでに何点か天体シリーズの作品をご紹介させていただきましたが、まだ“日食”を描いたことはありません。
宇宙大好き人間としては、とても嬉しいお話です。 メール文を読み進めながら、早くも気分はワクワク!
そしてメールの最後に、「サプライズにしたいので、M君にはくれぐれも内緒で・・・」と書き加えられていました。

「M君」とは、もちろんご主人のこと。
実は大の日食ファンで、このお話をいただいたまさにその時、皆既日食観測ツアーに参加されて、タヒチから更にプロペラ機で2時間余りの未開の離島・ハオ島への旅の真っ最中でした。
出発前日の興奮状態は、まるで遠足を明日に控えた小学生のよう・・・だったとか。 そんなご主人の姿を見て、ふと絵のプレゼントを思い立たれたのでしょう。
そのお話に何だかこちらまで幸せな気分を味わいながら、すでに私の頭の中では絵のイメージが膨らみ始めていました。

ところが実際にデッサンを描き始めると、新たな問題が・・・。 M氏をイメージしたワンちゃんの後ろ姿・・・とのご希望なのですが、犬好きさんならご存知のように、犬種の多さは半端ではありません。
どうしてもM氏ご本人から、何かしら参考となる情報が欲しくなりました。 しかし、「くれぐれも内緒で」ですから・・・。
そこで一計を案じ、“今後の制作の参考にしたいので、犬好きさんアンケートにご協力を・・・”と銘打って、帰国直後のM氏に質問をさせてもらいました。

1. あなたの好きな種類・模様・色は?
2. もしあなたが犬だとしたら、種類・模様・色は?

今になって改めて見ると、なんともベタな質問でした。
しかし、M氏はとても真剣に答えてくださった上、天体ファンでもある私にご自身が撮影した日食の画像まで送ってくださいました。
そのお陰で、本当のことを言えないもどかしさと同時に少しばかりの良心の呵責を覚えながらも、思い切り楽しんで制作を進めることができました。
そして完成したのが、この「コロナに想ふ」というわけです。

納品後すぐに、M氏からメールをいただきました。
とても気に入ってくださったとの内容にホッ! 頂戴した感謝のお言葉に恐縮しながら、むしろ幸せ気分のお裾分けをいただいた私の方が感謝したいくらいでした。
私にとっても、思い出深い作品の一つになることでしょう。


さて、コロナをみつめるこの3匹。
右から、プードル、トイプードル、シェパード。
黒のプードルには、以前飼っていらした頃の思い出が・・・。
茶色のトイプードルとシェパードは、「もしあなたが犬だとしたら・・・」の質問に対するお答えでした。
どれか一つに絞ることなく、3匹それぞれにM氏の思いを重ねてみました。

ちなみに・・・、トイプードルなら飼い主は『可愛い女性』に限定・・・とのこと。 おっと、これは内緒だったかな・・・???
でも実際その通りなのだから、問題ないですね。
こんなに素敵なサプライズをくださる奥様がいるのだから・・・。
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七夕に想う

2010-07-07 03:46:25 | My Works -天体シリーズ-
今回の作品は「天の川の詩 -約束-」
先日ご案内して、今開催中の“天の川展”に出品しているうちの1作です。
七夕の今日、どうしてもご覧いただきたくて・・・。


今から12年前1998年の七夕を、私は病院で迎えていました。
頚椎椎間板ヘルニアによる頚椎症性筋萎縮症・・・というのが私のカルテに書かれた病名でした。
実は、筋萎縮の症状が出始めたのは二十歳を過ぎたころから。
ただ、幸か不幸か痛みがなく、症状の進行も非常に緩やかだったこともあって、多少の不便を感じながらも誤魔化し、誤魔化ししているうちに20年近くが経っていました。
気が付くと、利き手である右手の筋力はかなり弱くなっていました。 少しでも無理をすると、首から背中、右腕と息苦しいような重い痛みが・・・。
「手術をするなら今・・・」と言う医師の言葉に賭けてみる決心をしたのが、12年前の春。 そしてその5月に手術。 入院治療は2ヶ月に及び、ようやく退院の日が近づいていました。

「山中さんも書いてね」
すっかり顔見知りになった看護婦さんが、そう言って数枚の短冊に切られた色紙を手渡してくれました。
一瞬意味が分らないでいると、「七夕の願い事!」とひとこと言い残して隣のベッドへ・・・。 いつの間にかエレベーターホールには大きな笹の木が飾られていました。
病院でもこんなことやるんだ・・・と驚きながらも、何だかとても嬉しい気持ちになったのを覚えています。

改めて渡された紙を数えると、3枚ありました。
1枚目には <早く良くなりますように!>
2枚目には <家族みんなが元気で幸せに・・・!>
そして3枚目・・・。 ちょっと考えたあとで、手が勝手にこんなことを書いていました。
<絵描きになりたい!>
確かに絵は好きでした。 しかしその時は何の根拠もなく、具体的な計画もなく、本当に突然頭に浮かんできたことでした。
今思い出してみても、なぜそのようなことを書いたのか、不思議でなりません。

あれから12年・・・。 果たしてあのときの願い事が叶ったのかどうか・・・と言われると、それはまだなんとも答えられません。
ただ、少なくとも私は今絵を描いています。 まだまだ胸を張って・・・とまではいきませんが、たとえ端くれとはいえ、絵を描くことを生業としています。
病気になったことが良かったなどとは決して言えませんが、少なくとも今の私に繋がる大きなきっかけになったことは間違いありません。 右手の部分麻痺という大きな代償を払い、さらに妻を始め家族にたくさんの心配と苦労をかけた結果が今の私なのだから、それならば、そのきっかけを何としてでも活かしたい。
「あの時は大変だったけれど、でも良かったね」と、いつの日か笑ってそう言えるようになるためにも、私はいつも精一杯、ありったけの心を込めて描き続けたい!

七夕のころになると、いつもこんな思いで胸が一杯になってしまいます。

七夕の願い事・・・。
きっと七夕の神様がくれるのは、その願いが本気かどうかを確かめるきっかけだけで、叶えるのは自分自身なんだろうな・・・。
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