伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

ネヴァー・ゲーム 上下

2023-12-16 22:34:03 | 小説
 学者である父アシュトン・ショウからサバイバル技術を仕込まれ、今はキャンピングカーで移動しながら「懸賞金ハンター」を自認して人捜しを続けるコルター・ショウが、シリコンヴァレーで行方不明となった19歳の女子学生、52歳のLGBT人権活動家のブロガー、町の駐車場で拉致された妊娠7か月半の女性の捜索を続ける一方で、15年前の父親の死の謎を追い求めるというアクション・サスペンス小説。
 読みやすくページをめくる手が進む作品ですが、主人公の位置づけが「懸賞金ハンター」と言いながら懸賞金に対するこだわりがなく最初は懸賞金で生活を立てていると言っていたものの終盤で別のことで資産があることが明らかにされる、人捜しの事件をメインに据えているのにどうも父の死の謎の方が重要に見えるという点で、腰が据わらない感を持ちました。
 黒ずくめの組織に注意を払いながらも作品の大部分では次々と起きる雑多な事件の解決に追われる「名探偵コナン」みたいなものでしょうか。


原題:NEVER GAME
ジェフリー・ディーヴァー 訳:池田真紀子
文春文庫 2023年11月10日発行(単行本は2020年9月、原書は2019年)
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甘くない湖水

2023-12-14 19:22:00 | 小説
 父が工事現場の足場から落ちて半身不随となり母が清掃の仕事等をして仕切っている貧困家庭で4歳上の兄と双子の弟とともに暮らす少女ガイアが、母の指示に従い裕福な子女が通う学校に通い勉強して好成績を収めながら、居場所のなさを感じ、母への反発や知人への不満を溜め込みときに爆発する思春期青春小説。
 ときどき明示しないで場面が戻ることや書きぶり・文体のためか、私には読んでいてすんなりと入ってこずページが進まない作品でした。基本がガイアの反発・怒りということで楽しく読めるというものでもないですし。
 ガイアが友人と語る言葉に「私も、コンゴとか日本とかポリネシアみたいな、遠い処にある住処がほしい」(276ページ)というのがあって、イタリア人の目には日本はコンゴやポリネシアと同じようなイメージなのかと驚きました。


原題:L'ACQUA DEL LAGO NON E MAI DOLCE
ジュリア・カニミート 訳:越前貴美子
早川書房 2023年11月15日発行(原書は2021年)
カンピエッロ賞受賞作

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聖乳歯の迷宮

2023-12-02 23:04:50 | 小説
 新聞社に勤め現在は系列の科学雑誌の編集者をしている小田切秀樹が、大学時代に「昔ものがたり探求会」という名称の考古学サークルの仲間だった夏原圭介がナザレの教会地下の洞窟で発掘した乳歯がイエスが生きた時代前後のものと同定された上現生人類とは微妙に異なるDNAを持つことが確認されてイエスが実在しかつ神であることが実証されたとして大騒ぎになったことに疑念を持ち、他方で同じくサークルの仲間だった沼修司が青ヶ島で遺体で見つかった事件の謎を追ううちに…というミステリー小説。
 人類史のロマンのような楽しみがあり、意外な結末ではありますが、現生人類と違う人類のDNAが確認されたということが「神」だという評価になるのかというところで前提・展開に疑問を持ってしまうと話に乗って行きにくいのが難点かと思います。


本岡類 文春文庫 2023年11月10日発行

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トコトンやさしい香料の本

2023-12-01 20:48:35 | 実用書・ビジネス書
 香料の歴史や日常生活との関わり、香料物質の特性・抽出・合成、食品や生活用品に用いられている香料に関する知識等を解説した本。
 見開き2ページ(右ページに文、左ページに図表類)68項目で読みやすくしようと努力してはいますが、第3章の香り成分の特性あたりは、「トコトンやさしい」は日刊工業新聞社の本を気軽に読む層の人々にとってのやさしさで、有機物の構造式(ベンゼン環の亀の子とか)に苦手意識を持っているような人にはやさしくありません。
 「現在では質量分析(MS)と連動したGC-MSを用いると、調合香料の90%以上の成分を解明することも可能です。調香師の創作処方の秘密を守ることができるブラックボックスは、わずか数%」(32ページ)というのに、門外漢としては驚きました。最先端のガスクロマトグラフィーでも香料の成分を完全には特定できないんですね。人間の鼻がまだまだ機械に勝てる、調香師という仕事がまだまだ生き延びられるのだと感心しました。
 食べる前だけでなくて、食べたものの匂いが喉の奥から鼻へ抜ける空気に乗って鼻腔の嗅覚受容体でキャッチされて匂いを感じる「レトロネーザルアロマ」(あと香、戻り香)は人類しか持っていない感じ方なのだとか(36~37ページ)。鼻腔と喉(食道)がつながっていれば感じるのじゃないかと思うのですが、人類しか感じないのだとすれば不思議です。


光田恵編著 日刊工業新聞社 今日からモノ知りシリーズ 2023年9月29日発行
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