伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

銀河鉄道の父

2023-05-06 17:57:45 | 小説
 花巻の質屋に生まれ経済的に恵まれ小学校では文句なしの成績であったが中学では振るわず、家業は継がないといい、といってまともに仕事もせず親を困らせ金の無心ばかりする宮澤賢治を、幼少から子煩悩で病気の介抱を嬉々として行い、しかし表だってそれを表すわけにはいかない父宮澤政次郎の側から描いた小説。
 若気の至りとは言え、学業も成就できないのに家業を継ぐことは拒否して妄想のような計画を立てて大金の支出を親に求め、父親が浄土真宗の寺の檀家総代なのに日蓮宗の団体に入って布教活動し妹の葬儀で声高に法華経を詠み続けるという、とっても困ったちゃんの賢治に対して、表だって受け入れはしないものの叱り飛ばすことなく、周囲の目から見ればあまりにも子どもを甘やかすものとも、時代を考えれば相当に進歩的とも言える、柔軟で温かな姿勢の父の姿に打たれます。そして、その父の情が報われず、親の心子知らずなのが、世の常とは言え、哀しい。
 映画化されたのを機に読んだのですが、意地もあり素直でなく複層的な心情と関係が、映画ではずいぶんとシンプルなわかりやすいものになっていて驚きました。


門井慶喜 講談社 2017年9月12日発行
「小説現代」連載
2017年度下期直木賞受賞作

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