尾車氏の進言により、その日最後に試乗させていただいたのが、この「ルノー・ルーテシア ゼン」だった。
「ルージュ フラム メタリック」と呼ばれるカラーが、情熱的かつ麗しい。
ブラック基調のインテリアに、シルバーの加飾が、キラリと光る。
そして、日本国内ではもはや絶滅危惧種となりつつある、3ペダル5MT!
このようなクルマの試乗車の存在を教えてくれた、尾車氏に感謝である。
欧州のトレンドである、ダウンサイジングコンセプトの、このクルマ。
その0.9リッター3気筒ターボエンジンは、緻密な回転フィールとは決して言えないし、排気音もブロン!と、お腹に響く。
だが、マニュアルシフトを操って、エンジンに仕事をさせながら走ると、馬にムチ打つような、プリミティヴな愉しさがある。
クラッチのミートポイントは、私の好みよりも、やや手前だった。数分の試乗で慣れてしまったとはいえ、坂道発進ではサイドブレーキを使いたくなりそうだ。
脚周りは、フランス車的な柔らかさというよりは、むしろスバル車的に筋肉の芯を感じさせるしなやか系。
正直、静粛性にはかなり欠けるが、操縦性&安定感はやはり素晴らしく、国産リッターカーとは一線を画する。
ただ一点。不満なのは、ステアリングの革巻きの配置。
普段親指が触れる部分に革が無いので、汗っかきの私の場合、ハンドルがヌルヌルしてしまう。
個人的には、ピアノ調加飾は廃して、全面革巻きにしてほしい。
このクルマの税込車両本体価格は、なんと208万円!
加えて、私がいつも重要視するスペアタイヤは、標準装備である。
軽自動車ですら下手をするとオーバー200万円の、このご時世。
極めて魅力的な、フレンチコンパクトである。