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《試練》――現在史研究のために

日本の新左翼運動をどう総括するのか、今後の方向をどう定めるのか

橋下の詭弁「私の認識と見解」を弾劾する

2013-06-03 03:20:37 | 天皇制・右翼
橋下の詭弁「私の認識と見解」を弾劾する

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 橋下の5月27日の外国特派員協会での会見をテレビで見ました。「私の認識と見解」なるものを公表したのです。何ともはや、驚きました。昨日までの人権蹂躙者が、世界へ向かって、「戦時下の性奴隷撤廃」を訴え、「女性の尊厳と人権擁護の旗手」として登場したからです。あまりのあつかましさ、あまりの傲慢さに、開いた口がふさがりませんでした。そして、それを反論・弾劾する発言・記事もなく、過ぎ去ろうとしています。この発言は絶対に許されないと考え、書いている次第です。

  ◆     ◆
 思い出して下さい。最初、5月13日に橋下はどう言っていたでしょうか? 「強制したという証拠はない」、「縄で縛って連れてきたとの記録はない」と言っていたのです。帝国主義軍隊・日本軍が強制連行にかかわったのか否かに重点を置き、そこに論点を置いた発言に終始していました。また、「『慰安婦』の方に対しては優しい言葉をかけなければならない」と言いましたが、そこには「優しい言葉」があるだけで、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。もちろん、「女性の人権」という発言も。そこにあったのは、日本帝国主義の戦時性犯罪を隠蔽するための「軍がかかわったという証拠はない」ということだけでした。
その後、ハルモニたちの抗議と追及の中で、『「慰安婦」とされた方への配慮は必要」』と言い始めました。正確な資料は手元にないですが、「配慮」という言葉を用いたことは記憶にあります。橋下の言う「配慮」って何だろう、何を意味するのだろう、と考えたことを覚えています。“少しは気にかけていますよ、同情はしていますよ、だから私への批判は止めてください”と、そういうことでしょう。
そして、橋下は少しづつ、発言を軌道修正していきます。そして一昨日です。なんと橋下は「女性の人権を守るために、戦場での女性の利用を止めようという世界の決意が必要」と述べたのです。女性の人権の最大の理解者にして擁護者・橋下! 戦場での性奴隷をなくそうと世界へアッピールする橋下! 胸が悪くなるような、腹立たしい茶番です。

  ◆     ◆
 彼は論点をすり替え、詭弁を用いる天才です。ここでもそれが如実に現れています。
一例をあげましょう。「銃弾が飛び交うなかで、命をかけて走っていく時に、どこかで休息させてあげようと思ったら、『慰安婦』制度が必要なことは誰だって分かる」。
13日の大阪市役所登庁時の彼の発言です。「慰安婦」制度を容認した決定的発言です。以下、彼の発言を分析してみましょう。
「誰だって」とは「100人いれば100人」すなわち、全員です。そして、大事なことは、その100人の中に橋下も入るということです。「誰だって分かる、もちろん僕だって分かりますよ」との文脈になる。こうして彼は自分の言いたいことを、「誰だって分かる」とか「みんな知っている」という言い方で表現します。こうして自己の意見を述べるわけです。主語をぼやかして、です。そして、それが批判・問題視されると、「いや、それは僕が言っていることではない」とか「主語は僕ではない。誤解だ」と言い逃れをはかります。一貫した彼の手法です。卑劣というか、傲慢というか、唾棄すべき手法です。このような悪質なレトリックは、許されません。
しかも、「誰だって分かる」と橋下は言い、この点では、橋下を批判するマスコミの論調も、当時は当たり前のことだったとしていますが、そんなことはなかったのです。むしろ逆であって、天皇の軍隊が「慰安所」を設置し運営していることはけっしておおっぴらにはできなかったのです。この点は、後で述べます。

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 橋下は今回の会見で、またしても「日本だけが非難されるのはアンフェアだ」と声高にくり返しています。そして、「もし、日本だけが非難される理由が、戦時中、国家の意思として女性を拉致した、国家の意思として女性を売買したということにあるのであれば、それは事実と異なります」と言っています。つまり、日本軍「慰安婦」制度の存在そのものを否定しているのです。
彼は、意図的に、「かつて日本兵が女性の人権を蹂躙した」という言い回しをし、けっして「日本軍が」とは言わないのです。ここにも橋下の詭弁があります。だが、これでは、過去の過ちを認めたことにならず、女性の尊厳を大切にすることにならないのです。
 橋下に言う。1937年7・7盧溝橋事件を突破口とする全面的な中国侵略戦争にともない、日本は、国家として「慰安所」の設置・運営を決定したのです。すなわち、「国家の意思として女性を拉致し、売買した」のでした。橋下がどんなに詭弁を弄そうとも、それを示す史料は厳然と存在しているのです。
 たとえば、1938年3月4日に、陸軍省副官が北支那方面軍及中支派遣軍参謀長に宛てた通牒、「軍慰安所従業婦等募集ニ関スル件」があります。さらに1938年2月23日に出された内務省警保局長通牒、「支那渡航婦女ノ取扱ニ関スル件」があります。詳しくは省きますが、そこでは、内務省が「慰安所」設置は国家の方針であるとし、軍の意向を受けた民間業者による「慰安婦」の募集と渡航を合法化しているのです。そして軍と「慰安所」の関係を隠蔽するようにと指示しているのです。
 また、1937年12月21日に、在上海日本総領事館の田島周平警察署長から長崎県水上警察署長に宛てた依頼状、「皇軍将兵慰安婦女渡来ニツキ便宜供与方依頼ノ件」があります。それによると、上海の総領事館(岡本季正総領事)と陸軍武官室(武官長・原田熊吉少将)と憲兵隊の三者が、中支那方面軍司令部の決定を受けて、前線に陸軍「慰安所」を設置すること、その運用の細目を協議し決定しているのです。そして、軍と総領事館が民間業者に指示して、日本と朝鮮から「慰安婦」とする女性たちを募集し、中国戦線の前線に渡航させる便宜をはかるよう警察への依頼がなされているのです。
さらに、陸軍「慰安所」に対する風俗警察権は、領事館警察ではなく軍の憲兵隊に属していることが示されています。この点は、陸軍「慰安所」が通常一般の公娼施設ではなく、陸軍の兵站施設の一つであることを物語っています。
 重要なことは、内務省は、軍隊「慰安婦」制度が軍=国家の意思であることを隠蔽するよう民間業者に命じているのです。なぜでしょうか。それは、前記の史料が語っています。すなわち、軍が「慰安婦」制度をつくったことがわかれば、「銃後ノ一般民心殊ニ応召家庭ヲ守ル婦女子ノ精神上ニ及ボス悪影響少カラズ更ニ一般婦女身売防止ノ精神ニモ反スルモノナリ」、「皇軍ノ威信ヲ失墜スルコト甚ダシキモノアリ」(当時の警察資料、吉見義明編『従軍慰安婦資料集成』所収)となることなのでした。
 当時の天皇制国家、天皇の軍隊は、このように一般常識や社会通念からして道徳的に恥ずべき行為に手を染めたのです。それが軍隊「慰安婦」制度だったのです。
朝鮮、中国、台湾、フィリッピン、インドネシアなどから、軍の請負業者によって、本人の意志に反して連行されて、かつ本人の意志に反して「慰安婦」とされた女性たちは、軍の全面的な管理化におかれ、それでありながら、軍=国家によってその存在を隠蔽され続けたのです。それこそ、軍による強制連行ではないですか。彼女らは、戦時性奴隷としか言いようのない残酷なしうちを受け続けたのです。
それなのに、橋下が「戦争だから慰安婦は当然だ」とするのは、開き直りもはなはだしい、それこそ盗人猛々しいにもほどがあることなのです。

   ◆     ◆
 それと櫻井よしこです。彼女は翌日のテレビ(読売)で、「韓国は儒教の国。貧しいので父親に、「慰安婦」になってくれと言われれば従わざるをえない。父親に服従するのが儒教の教えだから」と発言しました。日本軍の強制連行を免罪するために、朝鮮人の父親を引き合いに出し、植民地支配下での貧困を理由にあげる。何という自分勝手の開き直りか!
櫻井に問う。朝鮮を貧しくしたのは誰なのか? 農民から土地を奪い取ったのは誰なのか? その背景と責任を語ることなく、父親に責任を転嫁する桜井! これは許されません。

  ◆     ◆
 橋下の記者会見への反応が記事になっていました。「各国、メデイア冷静に分析」「論点ずらし」と概ね批判的です。そして今日、大阪市議会で橋下市長の問責決議可決の見通しと報じられています(公明党の脱落で、うやむやになりそうですが)。良心的弁護士が、橋下の法曹界からの追放を求めてたちあがったとの報道もあります。
しかし、しかしです。「橋下が失態を演じた」「いい気味だ」で終わらせてはなりません。大阪市長を辞職せよ! 今すぐ辞めろ! の声を、大衆運動としてまき起こさねばなりません。徹底した追激戦を今すぐに!
           
2013年5月30日
竜 奇兵(りゅう・きへい)
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はじめまして、初コメントです! (めぐみ)
2013-06-14 05:11:49
はじめまして!めぐみっていいます、他人のブログにいきなりコメントするの始めてで緊張していまっすヾ(=^▽^=)ノ。ちょくちょく見にきてるのでまたコメントしにきますね(*^^*)ポッ
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