形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

神泉村(4)・野葡萄

2012-08-25 18:06:53 | Weblog

神泉村でとても印象に残っているものに、野葡萄がある。
私はその頃、野遊びをしているときに見る薬草に、
たいへん興味をもっていた。

昔、山で伐採などの仕事をする樵(きこり)の人たちがいた。 
山に入って木の枝などで目を突くと、野葡萄の小枝を切り取り、
その樹液で治したという。 両端を切り落とした小枝の片方から
息を吹き込み、反対側から出てきた樹液を点眼して目の傷を治したそうだ。
山歩きをしていた私も、道のないところを歩く藪漕ぎ(やぶこぎ)で、 
枝で目を突きそうになることがあったので、身近な興味深い話だった。

その後、科学雑誌で野葡萄の樹液から、肉芽組織の再生を
うながす成分が発見されたという記事を、驚きをもって読んだ。 
キコリたちは、どうしてそれで治ると知ったのだろう? 
とても興味をそそられた。 それが神泉村に行き始めた頃だった。


野葡萄がよく出る場所を調べてみると、神泉村はそれによく
当てはまるようだった。 そこで探してみることにした。 
はじめは山の奥深くにあるのだろうと思って探したが見つからず、
なんのことはない、借りた家の近くで沢山見つかった。



野葡萄がなぜ印象に残ったかというと、その磁器のような実の美しさにある。 
籠一杯に採った実は、金色と銀色がないだけで、あとは全部あると
いってもいいほど、一つの房の中で色とりどりに実をつけている。 
青なら、薄い青から、青紫までのいろいろな段階の実がそろっている。 
赤なら、薄いピンク色から、赤、赤紫までと。 それが籠一杯にあるから、
みんながため息の出るような、籠の中の野葡萄の実の美しさに見とれていた。
                 
-続く-


からだの形は、生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/


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