形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

ワライタケ(笑い茸)

2010-09-14 18:27:36 | 自然と野遊び

小学校の夏休みに、山形に行ったときのこと。
いとこや近所の子どもたちと一緒に、山にキノコ採りに行った。

明るい沢沿いの道を歩いて、奥に入っていったが、夏ということも
あってか、キノコはいくらも見つからなかった。 だいたい、みんな
キノコのことを、ほとんど知らないのに採りにいったのだ。

同じことは、以前にもあった。
ワラビ採りに 「あべっ!」(行こう!) と連れて行かれて、背負って
いったカゴに、沢山採ってきたのはいいが、そのほとんどは食べられ
ないものだった。 

叔父の家は山にわりあい近いから、キノコや山菜にくわしい人が身近に
いて、採ってきたものをすぐ鑑別してくれた。 太く立派なワラビに似た
のは、鬼ワラビといったと思うが、同じシダの仲間だが食べられないらしい。 
「こだなもの、食(け)ねは!」 と、どんどんはじかれ、残ったのは子どもの
手で一握りほどのワラビで、がっかりしたことがあった。


2、3時間ぐらいもキノコを探したろうか。 見つけたのはほんのわずか
で、見分けられないから全部持って帰った。 それをキノコにくわしい人が
見てくれたが、毒キノコとわかるものは捨てられ、一種類だけわからない
キノコが数本残った。 細く、少し黒味がかって、とても旨そうには見え
ないキノコだった。

夜、私の家に下宿して、東京の大学に行っていた従兄たちの長男が、
ちょうど夏休みで帰っていた。 その従兄が、正体不明のキノコを
焼いてくれといって、焼かれたキノコをつまんでお酒を飲み始めた。 
みんなは従兄の様子を見守っていたが、なにも起きない。

そのうち、従兄弟はやたらに笑い始めた。 私はきっとこれは、
笑い茸に当たったのだと思った。 笑い茸のことを、少年漫画の雑誌で
読んだことがあったのだ。 そこには、このキノコを食べると、死ぬまで
笑い続けると、怖ろしいことが書いてあった。

従兄はもともと陽気な性格なのだが、お酒が入るともっと陽気に
なるのを知ったのは、私がずっと大きくなってからだ。 それで私は、
あれは笑い茸と思ったのは間違いで、お酒のせいで笑っていたのだ
と思っていた。

さらにあとになって、笑い茸の写真を図鑑で見て、あっ!と思った。 
あの食べたキノコにそっくりなのだ。 いまだに、あの大笑いがお酒で
なのか、笑い茸のせいなのか、わからない。

* 笑い茸は神経性の毒があって、
  食べると顔面が痙攣して笑ったように見えるそうだ。
                     (2009、9・7 記)
 
読んでいただいて、ありがとう!

形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/


[ 警告]当ブログ内に掲載されているすべての文章の無断転載、転用を禁止します。すべての文章は日本の著作権及び国際条約によって保護を受けています。Copyright shinso koisikawa. All rights reserved. Never reproduce or replicate without written permission.
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 花火・2B弾 | トップ | 読書の楽しみ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

自然と野遊び」カテゴリの最新記事