Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

#29「折りけむ枝のふしごとに移ろいゆく季節 」

2013-01-30 | Liner Notes
 女郎花(をみなえし)は秋の七草のひとつ、花言葉は「はかなく堪え忍ぶ」の意。

「女郎花 折りけむ枝の ふしごとに 過ぎにし君を 思ひいでやせし」(枇杷左大臣・藤原仲平)

 その枝の節々を見るに、しかるべきひとを想い、慕う心が募ってはしまいかと謳えばその返し、

「をみなへし 折りも折らずも いにしへを さらにかくべき ものならなくに」(伊勢, 後撰和歌集 三五〇)

 しかるべきとは「ふさわしい」との意であり、かくべきとは「こうなって欲しい」との意。

 忘れえぬ追憶があったとしても、なつかしむことなく、そして振り返ることもなく、とはいえ、流れさるものでなく、積み重ねられれば、前に先にきっと、生きることができるのですと綴っているような気がします。

初稿 2013/01/30
校正 2021/03/30
写真 はかなく堪え忍ぶ花
撮影 2010/03/10(広島・宮島)


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