Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§99「悲しみの歌」遠藤周作, 1977.

2020-01-19 | Book Reviews
 時は太平洋戦争末期。空襲で毎日ひとが亡くなる閉塞感のなか、生体実験への参加を断ることを選べなかった医師のその後の物語。

 時を経て高度成長期。ひっそりと開業医を営む彼のもとに訪れるのは、人知れず人工妊娠中絶せざるを得ない人達と余命幾ばくもない身寄りもない人。罪を分け合い苦しみを取り除く彼のもとに訪れたのは彼の罪を追及する記者。

 当然ながら命を救うことは善であり、苦しみを取り除くこともまた善に他ならず、そのどちらも限界を超えると悪になるような気がします。

 悪は限りがなく誰からも救われないものの、むしろ受けとめることでしか救うことができないことを示唆しているのかもしれません。

"♪正しさと正しさとが相容れないのは、
  いったいなぜなんだ?
  Nobody is right, 正しさは、
  Nobody is right, 道具じゃない♪"
( Lyrics by Miyuki Nakjima )

初稿 2020/01/19
校正 2021/12/23
写真 五重塔
撮影 2019/01/29(東京・浅草)

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