Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§62「こころの処方箋」 河合隼雄, 1992.

2017-01-17 | Book Reviews
「ものごとは努力によって解決しない」

「自立は依存によって裏付けれている」

「灯を消す方がよく見えるときがある」

 迷いや悩みから免れようとする人にとっては、相反するように聞こえてしまいそうな言葉の数々。迷いや悩みは自らが自信をもって判断できないが故に生じればこそ、判断するための材料や情報は偏ることなく集めるべきなのかもしれません。

 とかく、人は窮地に立たされたときには、闇雲に解決しようと努力するが故に、その努力は必ず報われるはずと思いがち。そんな時、ちょっとだけ視点を変えれば、努力は必ず裏切らないものと捉えれば、自らの自信と誇りに繋がることを示唆してくれます。

 一方で、自らの自信と誇りは、自立を促すように思えるものの、あえて依存を排除すれば孤立を招かざるをえないもの。人は依存して生きていることを認識することこそが第一歩。感謝や共感をもってして様々な意見や観点を鑑みればこそ、物事の本質に迫ることができるのであって、その時にこそその努力は課題を的確に捉えるものだと思います。

 暗闇の海原で難破した舟がいくら手元を灯しても行方はいざ知らず、あえて手元の灯を消す勇気さえあれば、自らの行方を知らせる灯台が見えるのかもしれません。

初稿 2017/01/17
校正 2020/11/27
写真 自らに向き合う自分自身
  「みちのく」高村光太郎 作
撮影 2016/05/23(大阪・御堂筋彫刻ストリート)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする