序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

劇団芝居屋第35回公演「通る夜・2018」第三場

2018-06-21 14:43:00 | 舞台写真
第三場

寿々子と亡き父の語らいは続いていた。


どこかから歌う父の声が聞こえた様な気がして寿々子は幼稚園の運動会でのダンス「アブラハムの子」を口ずさむ。




やがて興に乗った寿々子は、そのダンスを披露する。

寿々子 「アブラハムには 7人の子
一人はのっぽで あとはちび
みんな仲よく 暮らしてる
さあ おどりましょう


右手(右手)
左手(左手)
右足(右足)
左足(左足)


あたま(あたま)
おしり(おしり)
回って(回って)
おしまい!!」




それは亡父への贖罪のダンスであった。


寿々子 「(ロレツが回らず)そうだったんだ。・・・・・あの時の歌覚えていてくれたんだね。・・・・本当はね、わたしもあの時の父さんの姿忘れた事ないよ。あれは幼稚園の梅組の時の運動会の時だった。あん時の父さんカッコ良かった。応援に来ているどの父親より運動神経が良くってさ、足も速かった。だからあたしも遊戯頑張ったんだよ。


・・・でも、あの歌覚えてくれて、歌ってくれていたなんて考えもしなかった。・・・ワタシの事そんなに気にかけてくれていたんだ・・・」



やがて寝込む寿々子。




寝入った寿々子を確かめて一郎達が来る。
一郎は自分が知らなかった写真の存在が気になり確かめる。



五月 「本当に一人遊びの寿々ちゃんの写真ばっかり」
一郎 「ああ。ほら、叔母ちゃんと遊んでるのがある」
美子 「ああ、これは寿々子が小一ぐらいの時だね」
一郎 「これは母さんが病気がちになった辺りからの写真だな」
五月 「これ、あんたとお義父さん」
一郎 「ああ、母さんが取ったんだな、俺が工場手伝い始めた頃のだ」
五月 「お義父さん若い」
美子 「そりゃそうさ、まだ四十代だもの」
一郎 「この写真は!・・・オヤジはきつかったな。」
五月 「なに?・・・ああ、睨んでるね、お義父さんの事」
美子 「(写真を受け取り)・・・本当だ」

     座り込む美子。

美子 「ワタシがもう少し面倒見ていればこうはならなかったのかもね」
一郎 「叔母さん、タラレバ言ってもしょうがないですよ」
美子 「そうだね、もう取り返しがつかないんだものね」
五月 「そうですよ」


一郎 「ホラ、これ。家族全員が写ってる」
美子 「誰かに撮ってもらったのかね」
一郎 「ああ、病院だ。これ母さんが入院した時のだ」
五月 「寿々ちゃん、ずいぶん大人びてる」
一郎 「寿々子が中学生の時だ」


美子 「さあ、もういいだろう」
一郎 「ええ。どうする、起こす」
美子 「このまま寝かせおいてやろう」
一郎 「そうですね」






踏切の警報が鳴り、最終電車が通り過ぎる。



第四場へ続く。


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