序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

劇団芝居屋第38回公演「美代松物語」物語紹介9

2019-12-21 17:00:40 | 舞台写真
第9場
その夜。
美代松では大栄産業と権藤金融の探索話が盛り上がり、青年部一同の協力の下、調査が行われる事が決まった。



青年部が帰った後、一人引き返した来た圭介は、美千代に丁寧な別れの挨拶を告げる。それはまるで今生の別れの様であった。




店じまいをしている美代松に憔悴しきった時江が現れる。
時江の異変に気付いた美千代は何事かと問いただす。



時江は大栄産業の件を話し、老松の存続が危うい事を告白する。



そこへ大吉が現れ、自分の話を聞いてくれるように懇願する。



大吉の真剣さに根負けした時江はその話に耳を傾けると・・・



大吉が語りだした内容は時江に知らされずにいた圭吾との別れの経緯であった。
時江と圭吾は料亭の娘と板前という関係であったが、将来を約束した公然の仲であったが、圭吾が突然時江の前から姿を消した過去を持っていた。
その為に時江は圭吾に憎しみを感じていたのであった。
大吉はその圭吾の行状の裏にある事情を語り始めたのである。



老松は圭吾と時江が将来を約束していた当時、時江の父が株に手を出した事から人手に渡る直前までにあった事を打ち明けた。
そこで語られた内容は美千代も知らぬものであった。



大吉 「ええ、正真正銘本当の話です。そんな時に旦那に援助を申し出てくれた人がいましてね、その条件が女将さんを息子の嫁さんにって事だったんです」
時江 「・・・柿崎のお義父さんが・・・そんな事一言も言ってなかった・・」
大吉 「その時には女将さんと兄貴は皆の周知の仲でした。でもね、もう旦那には老松を守る為にその申し出を受けるしかなかったです」
時江 「まさか、父が・・・」
大吉 「ええ。旦那は兄貴にその事を打ち明け、兄貴に女将さんと別れる様に頼んだんです」



時江 「・・・父がそんな事を・・・知らなかった」
大吉 「兄貴が老松から居なくなる前にくれぐれも頼まれたんですよ、これはお前の胸に収めて置いてくれって。あの後みんな事情を知らないで、兄貴をクソみそに言うのを聞いて何度言おうと思ったかわかりませんや。でも旦那に恥をかかす訳にはいかない、兄貴との約束を破る事はできないってその度ごとに呑み込んできたんです」
美千代 「そんな事があったんだ・・・」



大吉 「兄貴が他で成功してここに戻って来たのも、女将さんを守りたかったからなんです、何かあったら役に立ちたいと思ったからなんですよ。兄貴と会って下さい、兄貴の話を聞いてやって下さい。お願いします、女将さん」
時江 「ウウ・・・(耐え切れず泣く)ああ・・・・」

第10場・第11場に続く。
撮影鏡田伸幸


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