序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

プレーバック劇団芝居屋第42回公演「通る道」5

2024-03-16 21:53:41 | 演出家

聖司が一服の為席を外したのと入れ替わりに正一の姪の赤坂奈美恵と義妹の角田妙子が凍えて走り込んで来ます。

奈美恵 「ああ、助かった」

妙子 「ウウ・・歯の根が合わないわ」

 

何と言っても3月の北海道は東京の人間には応える寒さです。

妙子 「アーッ、火って有り難いわよね。フワって寒さから解放される」

文子の声 「失礼します」

 

慌てて防寒着を脱ぎ、正座する二人。

お茶うけを持った文子入って来て。

 

文子 「(居住まいを正し)本日は遠路はるばるご苦労様です。法要は十一時からですのでこちらでしばらくお待ちください」

奈美恵 「本日はよろしくお願いします」

妙子 「お願いします」

 

まあ、型通りのご挨拶です。

 

文子 「寒かったしょ」

奈美恵 「ホテル出た時はすごく晴れてたからこんなに寒いとは思いませんでした」

文子 「放射冷却ってやつだ。お決まりだよ」

奈美恵 「ひさしぶりだから、忘れちゃいますね」

文子 「・・・佳奈さんの・・だよね」

奈美恵 「ハイ、娘の奈美恵です。文さんお久しぶりです」

文子 「ああ、そうそう奈美恵ちゃん奈美恵ちゃん。いやいやいやいや、あんたお母さんに益々似て来たね」

奈美恵 「そうですか」

文子 「いやいや、そっくりだあ。ねえ」

 

文子 「そちらさん、正二さんの奥さんだよね」

妙子 「ええ、角田妙子です」

文子 「有名な切り絵作家さんだ」

妙子 「えっ!そ、そんな事ないです」

文子 「謙遜する事ないって。ワチね、正二さんから貰った切り絵持ってるんだから」

妙子 「そうですか」

お互いの近状報告はよく見る光景ですが・・・

27回忌から33回忌の間には6年の年月が流れている訳ですよ。

いろいろ大きく変化しています。

でも聞いちゃいますよね。

妙子 「ところでご住職はお元気なんですか」

文子 「それがさ、元気でねえの・・・」

妙子 「ご病気か何かですか」

文子 「死んじゃったの」

 

そりゃ驚きますよ。

 

奈美恵 「・・死んじゃったのって・・・ええ!」

妙子 「亡くなったって事ですか!」

文子 「・・そうかい、知らなかったんだ」

奈美恵 「ええ」

妙子 「ああ!知らぬ事とはいえ・・ご愁傷様でございました」

これから始まる会話の内容が何となく想像できる感じがします。

 

6に続く。

撮影鏡田伸幸



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