第十五場 同日・一時間後
仮の借りの乾杯から一時間。
健三夫婦も良いコンコロ持ちになった頃でございます。
綾子 「ハイ、おでんお待ちどうさま」
瑠香 「来た来た。これうまいんですよね。食べた事あります?」
由紀 「いいえ、頂いたことないわね」
瑠香 「食べてみて下さいよ、絶品ですよ」
由紀 「じゃ、頂こう」
健三 「由紀さん、お注ぎします」
由紀 「あら、アリガトウ」
由紀 「それじゃ . . . 本文を読む
第十四場 八月七日夜分・立飲み横丁
三澤の一件が落ち着きを見せて約一か月。
感染状況も落ち着きを見せ始め、的屋稼業も軌道に乗り始めていた。
今日は三年ぶりの花火大会が観客の制限もなく始まったのである。
一同 「玉屋!」
幾久 「いや、やっぱり見事なもんだね」
綾子 「やあ、いかったね。」
由紀 「三年ぶりの花火大会だもの。ホント、散々待っただけの事はあったわよ」
健三 「そうだな、や . . . 本文を読む
第十三場 同日・午後
幾久に金を貸す条件通り、三澤に直接会った総一は三澤に釘を刺します。
総一 「あんたが三澤さんですか。初めましてあたし磐田金融の社長やってます、磐田総一っていいます。あんたが瀬村から受け取ったその金の出どこはあたしなんです。
あたしね、人からいい事を言われたことのない金貸しです。あんまり人聞きの良いあだ名じゃないですがすっぽんだとかマムシだとか世間じゃ言われて . . . 本文を読む
健三が借用書にサインをしようとするその刹那、走りこんでいた幾久は健三を問い詰めます。
幾久 「ちゃんと分かるように説明しておくれ」
健三 「あの・・・実はですね・・・」
凛子 「親分、ちゃんと言って、三澤さんと関係があるんでしょう」
健三 「それは・・・」
幾久 「健三!あんた瀬村組の看板を担保に金借りようとしたんだべさ」
健三 「えっ、なんでそれを・・」
幾久 「そうなのかい」
健三 「はい、 . . . 本文を読む
第十二場 七月五日昼・磐田金融事務所 その1
仁が凛子に電話をした翌日。
総一は上機嫌に念書を携えた健三を迎えました。
なにせ瀬村組の看板が手に入るんですから。
総一 「今、お前大きな事に手を出してるそうじゃねえか」
健三 「どうしてそれを」
総一 「まあ、壁に耳ありってやつだ」
健三 「・・・そうですかい」」
総一 「今度の借金もその事と無関係じゃあるめえ、そうだろう」
健三 「ハイ」 . . . 本文を読む