序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

劇団芝居屋第24回公演「チェンジ」舞台写真&ストーリー17

2012-11-24 13:26:45 | 日記・エッセイ・コラム

思いがけない竜也と恭子の交際成立で見合い大会が終わった。

10月3日水曜日。

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光江 「十月三日水曜日、この頃自分によく問いかける、自分は何を志して医者になったんだろうって。・・・一つには町医者として働いてきた両親の存在よね、うん、これは確かに大きいわね。それに赤ひげ。・・・あの映画でどんな病気とも立ち向かう医者のカッコよさを見たっけ。だから今の専門別の分かれる医療じゃない、総合内科を目指したんだものね。大学は確かに勉強にもなるし、最新の医療技術の習得にはもってこいだけど。あそこは病気だっていう自覚している人しか来ないんだ。医者が積極的に病気を発見して上げられるのは町場の医者なんだよな。・・・赤ひげだったらなんてアドバイスをしてくれるんだろう」<o:p></o:p>

 

ホタムイも日常を取り戻したかに思えたが、診療所に身重の美由紀が義父の容体の悪化を告げに来る。その事に動揺した美由紀は破水してしまう。
その事を知った助産師の資格を持つ民子は美由紀の世話を引き受け、光江は源蔵の下へと駆けつける。

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駆けつけると、源蔵の状態は予断を許さないものだった。

        遠く近く雷。激しい雨音。
 

        必死に源蔵に呼びかける洋平。

洋平 「オヤジ、オヤジ、しっかりしろよ。まだ早いよ。俺まだ無理だよ」<o:p></o:p>

  光江が入って来る。その後の将雄。<o:p></o:p>

 光江 「どうですか」
洋平 「アッ、先生。オヤジが、オヤジが・・・」
光江 「洋平さん、落ち着いて」

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光江 「まずいわね」<o:p></o:p>

 光江、カバンから強心剤の注射器を取り出す。<o:p></o:p>

 洋平 「えっ、何が、何が、何がどうまずいんだよ・・・」
光江 「静かにして!」<o:p></o:p>

        静脈に注射。聴診器を胸に。<o:p></o:p>

 洋平 「どうなってんだよ、どうなってんだよ。先生、オヤジを助けて。オヤジオヤジ!」
将雄 「親方」<o:p></o:p>

  光江、洋平を張る。<o:p></o:p>

 光江 「しっかりしないか!男だろう!」<o:p></o:p>

        診察に戻る光江。呆然とする洋平。尻ごむ将雄。
       
雷鳴。

一方、診療所では美由紀が民子の助けを借り出産に挑んでいた。

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民子 「まだまだ出てこないからね。力抜いときな。今から力んじゃうと疲れちゃうよ」
美由紀 「ハアハア・・ねえ、民さん、お義父さん大丈夫だべか」
民子 「あんたは余計な事考えねえで、赤ん坊の事だけ考えなさい」
美由紀 「そうだね・・・アタタ・・間隔短くなって来たみてえだ・・・」<o:p></o:p>

         雷鳴。

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 光江、心臓マッサージを始める。<o:p></o:p>

 光江 「頑張れ、源蔵さん、頑張れ」
将雄 「親方!親方!」
洋平 「オヤジ、しっかりしろよ、しっかりしてくれよ!」<o:p></o:p>

  雷鳴。

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民子の声 「はい、まだまだよ。・・・いきまない、力を抜いて」
美由紀の声 「ウーッ!」
民子の声 「ハイ、楽にして、呼吸楽に、ハアハアハアハア・・」
美由紀 「ハアハアハアハア・・・」
民子 「ハイ、いきんで!」
美由紀 「(いきむ)うーん!」<o:p></o:p>

 雷鳴。

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       脈を取り、時計を見る光。

 光江 「午後6時20分。ご臨終です」
洋平 「(自失)オヤジ!・・・」
将雄 「(大声で)親方!」<o:p></o:p>

        雷鳴。

暗闇に赤ん坊の泣き声が響き渡る。
源蔵の孫が生まれた。

それから20日。
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光江 「十月二十四日水曜日。今日は今年一番の寒さらしい。でもあたしの心は温かい。あたしの心はあたしはあたしの決断に悔いはない。三日前、大学病院に辞表を出し、父に後を継ぐ事を宣言した。でも父はさほどの驚きを見せなかったわ。・・・ほう、そうするのか、そんな感じだった。わかってたんだな。・・・あたしの赤ひげは父だった。この六か月の出超診療所勤務で分かった事は、何のために医者になったのかという素朴な事だった。あたしはあたしの赤ひげ像をつくろうと思う、父が父の赤ひげを作った様に。あたしの赤ひげ作りはここから始まるんだ」<o:p></o:p>

 

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禎子 「しかし早いもんだね、源蔵さんが逝ってからもう二十日も経っちゃったんだから」
昇平 「ああ、アッと言う間だ。しかし何だな、誰かが居なくなって困るなんて事はあんまりねえみてえだな、磐田の洋平もいっちょ前に船頭やってるからな」
典子 「そりゃ、逝っちゃう前に源蔵さんがちゃんと教え込んでいたからだべや」

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こうして幾つかのチェンジを重ねながら、ホタムイの村や光江の生活は変わっていくのであった。

終り。

ご覧頂きまして有難うございました。

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撮影 鏡田伸幸


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