序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

劇団芝居屋第24回公演「チェンジ」舞台写真&ストーリー5

2012-11-11 20:04:18 | 日記・エッセイ・コラム

父ちゃん先生に代わる光江はホタムイの若者にとって興味津々の存在であった。

016診療所に来た光江に無遠慮に好奇な目を向ける若者達を、迎えに出た年寄り達が咎める。

 

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禎子 「なに入口で溜まってんだ。薄らボケた顔して、ちゃんと先生に挨拶したのかい」<o:p></o:p>

 竜也 「・・い、今するとこだべや」<o:p></o:p>

昇平 「まったく何もかんもねえな」<o:p></o:p>

俊夫 「だから、今するって」<o:p></o:p>

禎子 「そんな事言ってる暇があるんだったら、早く挨拶すればいいべさ」

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光江のそっちのけの若者と年寄りのいがみ合いとあっていく。

この状況を早く収めようと苦労する地区担当の横川靖を尻目に、いがみ合いは続くのであった。


光江をないがしろにする、村人の態度に、ついに堪忍袋の緒が切れた靖は村人を説教するのであった。

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         靖 「わかってない、みんなわかってないよ。この地区に、こんな田舎に出張診療所あるって事の有難味を」<o:p></o:p>

 源蔵 「それはわかってるべさ」<o:p></o:p>

 昇平 「そんなのはな」<o:p></o:p>

 禎子 「みんな感謝してるべさ」<o:p></o:p>

 ザワつく一同。<o:p></o:p>

 靖 「イヤ!わかってない!」<o:p></o:p>

 語気に飲まれ黙る一同。<o:p></o:p>

 わたしね、十八歳で町役場に入って、此処の地区の担当になってから十五年になります。その間ね、過疎対策でいろんな場所に行かせてもらって勉強させてもらいましたよ。ええ、いろんな所があります」<o:p></o:p>

 昇平 「・・・何が言いたいの」<o:p></o:p>

 靖 「でね、わたしが言いたいのはね。ホタムイ地区ぐらいの規模の所で、一週間に一回とはいえお医者さんが来る出張診療所を持っているところは少ないって事なんだよ。いや、少ないどころか、今や過疎地の医療体制は崩壊してお医者さんがいなくなっているんだ。どんどんお医者さんがいなくなっている地域が多くなっているんだよ」<o:p></o:p>

 禎子 「でもここには父ちゃん先生がいるべさ」<o:p></o:p>

 靖 「だからその事なんだよ。この診療所に来て下さっている柴田先生は、公立や市立、町立の病院の先生でないの。分かってる?町で自分の医院を経営している、この地区とは何の義理もない先生なんだよ。居て当たり前の先生でないの。その柴田先生は自分の休みを犠牲にして、しかもホタムイ地区のみんなを診れるという事で、わざわざ漁の休みの水曜日に来て下さってたんだ」<o:p></o:p>

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一歩も引かない靖の迫力に村の実力者の源蔵も白旗を上げざるを得なかった。

 靖 「こうして、父ちゃん先生が倒れて、その代わりに娘さんの光江さんが来てくれてるのも、父ちゃん先生がここの地区を心配してくれて、自分の手術の前に光江さんに言ってくれたからなんだよ。長くなりましたがね、敬意を持ってくださいよ。お願いですから敬意を持ってお迎えください。わたしが言いたいのはそれだけです。よろしくお願いします」<o:p></o:p>

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改めての自己紹介。

靖の言葉が身に染みた村人は不器用ながら素直であった。

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よろしくお願いします!!

兎に角波乱に満ちてはいたが船出はした。

続く。

撮影者 鏡田伸幸


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