特上カルビの記のみ気のまま

韓国語教育を韓国の大学院で専攻した30代日本人男性が、韓国ソウルでの試行錯誤の日々を綴りました.

2位や3位の無い国

2005-06-06 11:39:47 | 韓国留学記
 曇り時々晴れ。最低気温18度。最高気温28度。顯忠日(ヒョンチュンイル=현충일)で韓国は祝日。

 韓国で広告を見るたびに不思議に思うことがある。

 「顧客満足度1位」といった類(たぐい)の謳(うた)い文句がやたらと目に付くからだ。
 
 今ちょうど手元にある書店のレシートにも次のように書いてある。
 “2004年度 顧客満足度8年連続1位受賞!”
 “2004年度 サービス品質指数3年連続1位受賞!”

 写真はその書店と通りを挟んで向かい側にある光化門(クァンファムン=광화문)郵便局の写真である。
 ビルの上に大きく掲げられた看板には次のような文字が並んでいる。

 “お客様ありがとうございます! より一層愛されるお客様の手足になります。 2005年度郵政事業本部 六つの賞を同時席巻”

 という大きな文字の下に受賞した各賞のマークと受賞内容が並んでいる。それぞれ左から順に
 
 “国家顧客満足度(NCSI) 公共行政サービス部門4年連続1位”
 “韓国産業顧客満足度(KCSI) 公共行政サービス部門6年連続1位”
 “韓国産業顧客満足度(KCSI) 郵便局宅配2年連続1位”
 “郵便局サービス憲章 4年連続大賞受賞”
 “大韓民国マーケティング大賞ブランド部門 郵便局宅配ベストブランド賞受賞”
 “韓国産業ブランドパワー 郵便局宅配1位”

 “顧客満足度”は理解できるにしても、“マーケティング大賞”、“ブランドパワー”って一体何なの?というのが率直な感想。

 いちいち一つ一つ細かく調べる時間も暇も無いので、韓国の検索サイトで「顧客満足度」について調べてみた。

 顧客満足度とは、顧客が特定商品を購入した際、その商品とサービスに対してどの位満足しているかを重要視するマーケティング方法のこと。
 
 具体的には、商品の品質や性能のみならず店員のサービス, アフターサービスなどを含んだものを対象としているそうだ。
 しかし、韓国内での顧客満足度に対する信頼性は現時点では充分ではないとのこと。

 なぜなら通常、ある会社が調査機関に調査を依頼をすることによって与えられる結果なので、依頼をした会社が調査対象から外れるという事はあり得ず、場合によっては、自社よりも明らかに力が劣る競合他社ばかりを比較対象に指名して調査させることもあるとのこと。そのような場合、調査機関から1位に選定されたと言っても、公平性や信頼性には大きく欠けるからだ。

 ところで、「顧客満足度」などというものは2位や3位を受賞しても堂々と広告に使う訳にはいかない。逆にイメージを落としかねない。調査機関も公的な機関を除けば、利潤を追求する民間会社である。クライアントから調査を依頼されて、「残念ながら御社は2位でした」とか「今回は100位でした」などと言った日には二度と調査の依頼は来ないだろう。

 従って、民間の調査会社は「1位」を乱発せざるを得ない。どおりで「顧客満足度1位」が韓国全土に溢れるわけである。

 それにしても「顧客満足度1位」というのが宣伝文句になるということは、品質やサービスに問題がある官公庁や民間企業がいかに多いかという実情を物語っているのと同じである。広告から「顧客満足度1位」という文字が無くならない限り、韓国の消費者が本当に満足のできる、より質の高い商品やサービスは望めないのではないだろうか。

 そう考えると「顧客満足度1位」の官公庁や企業よりも「2位」や「3位」のといった広告を出してくれた所のほうがある意味、信頼に足りうるかも知れない。

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4 コメント

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失礼しました。 (amc)
2005-06-11 04:16:20
韓国・朝鮮(あるいは中国も)は歴史的に「敗者」が生き残れない環境にあるのでは、と勝手に思っています。「敗者」と認定されると財産を全て没収された上一族郎党全て抹殺される、それが人々の意識の中に今でも根強く残っているのでは無いかと。そして「勝者」は「敗者」に対して何でも出来ると。



だから生き残るために、自分を「勝者」と規定することに躍起になる。あるいは「勝ち馬」に乗ることに執念を燃やす。そういう世界では、真実を冷静に見て決めようとか、審判(第三者)にゆだねようとか、論理が通っていれば発言者の立場にかかわらず採用しようとか、といった態度は生まれてきません。暴力や賄賂を使うのは当たり前、「敗者」には発言権などそもそもないし、「勝者」が負け得るという事態を受け入れることも全く出来ません。



わたしは韓国の知り合いがいるわけではないのですが、いろいろな矛盾する情報を統一的に解釈する手法として上記の考えに至りました。韓国にどっぷりつかっている方としてご意見を賜れればと思い書き込みました。



もちろん彼らの規定する究極の敗者は常に「日本」です。そう考えるといろいろなことが解ける気がするのです。そして豊かな世界では「敗者」でも十分生き延びていけることが理解できれば、もっと事情が変わるのではないかと思っています。
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コメントありがとうございます! (特上カルビ)
2005-06-11 09:06:52
>amcさん



はじめまして。貴重なコメントありがとうございます。



残念ながら中国のことや韓国・朝鮮史は専門ではないので、私の知識の範囲内でコメントさせていただきます。



>歴史的に「敗者」が生き残れない環境にあるのでは、と勝手に思っています。



確かに過去はそのような環境にあったと思います。それらの影響(潜在意識)が現在の韓国社会や韓国の人たちの中にあることは否めない事実でしょう。



但し、現在の韓国においては「敗者」が生き残れない環境にあるとは言い難いと思います。何故なら、たとえ「敗者」であっても「勝者」になり得る機会が、少なからず与えられているからです。



>暴力や賄賂を使うのは当たり前、「敗者」には発言権などそもそもないし、「勝者」が負け得るという事態を受け入れることも全く出来ません。



過去はそうであったかもしれません。しかし先ほども述べたように、現在は「敗者」に発言権も与えられています。数年前にアジア各国を襲った“経済危機”の際には一夜にして「勝者」が「敗者」になるという苦い経験を韓国の人たちも嫌と言うほど味わっています。また、暴力にしては詳しくはわかりませんが、賄賂は今でも度々問題に挙がっており、厳しい追及が行われています。



>もちろん彼らの規定する究極の敗者は常に「日本」です。そう考えるといろいろなことが解ける気がするのです。そして豊かな世界では「敗者」でも十分生き延びていけることが理解できれば、もっと事情が変わるのではないかと思っています。



おっしゃるように「敗者」=「日本」と定義付けた場合は、全く別の問題になってしまいます。



日本による植民地支配から解放されたと思った矢先、同じ民族同士が血を流す「朝鮮戦争」により、韓国は再び一から始めなければなりませんでした。

逆に日本は“朝鮮戦争特需”で経済成長を遂げ、続く「ベトナム戦争」で韓国は派兵をし、多くの犠牲者を出しましたが、この時も日本は軍事物資補給基地としての役割を果たし“戦争特需”に沸きました。それらが今日の日本の発展の原動力となったのは事実です。



そんな隣国日本を見ていると、韓国の“被害者意識”は強まって当然ではないかと思います。実際に直接・間接的に日本の被害を受けた方々が現在も韓国内に大勢いらっしゃいます。また、韓国の独立以降継続して行われてきた歴史教育やマスコミ報道により、日本に対する悪いイメージばかりが強調されて来てしまったのです。



最近の領土問題や教科書問題そして韓国漁船のEEZ侵犯事件などについての韓国内の一連のマスコミ報道を見ても、日本人の私でさえ“反日感情”を抱きたくなるような錯覚に陥る報道が、なされていたのは事実です。



>そして豊かな世界では「敗者」でも十分生き延びていけることが理解できれば、もっと事情が変わるのではないかと思っています。



今まで述べてきたように、韓国が抱えている過去の歴史的な背景や教育そしてマスコミなど社会のあらゆる要素が複雑に絡み合った結果、日本に対する“悪い感情”が生まれたのだと思います。



しかし、確かなことは、大部分の韓国の人たちは“冷静さを失っていない”ということです。「勝者」がいつまでも「勝者」であり続けることはあり得ず、「敗者」が「勝者」になる可能性も充分にあり得るということも充分理解しています。



また、日本は韓国にとって究極の「敗者」などではなく、「スケープゴート(scapegoat)」として利用されているだけであり、それを額面通りに受入れて報道する日本のマスコミにも、少なからず問題はあるのではないかと個人的に思います(マスコミに公平性を求めること自体が無理なのですが・・・)。



最後に、私が今回(6/6)書いたブログのタイトルは「勝者」と「敗者」を意図としたものではなく、あくまでも“誇張の意味”を込めて付けたものであることを付け加えておきます。



長くなってしまいましたが、私なりの意見を述べさせて戴きました。最後まで読んでくださってありがとうございました。
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ご丁寧にありがとうございます (amc)
2005-06-14 06:14:07
少しほっとしました。韓国は勝ちで日本は負けたのだから常に韓国が正しい、という理論にみなが浸っているわけでなければそれでよいです。『そう考えると「顧客満足度1位」の官公庁や企業よりも「2位」や「3位」のといった広告を出してくれた所のほうがある意味、信頼に足りうるかも知れない。』というのをかの国の人達も受け入れられるのであればそれでよいのです。1位以外は敗者、敗者の言うこと等意味無い、というのでなければよいと思います。私の友人は留学中にかの国の人に「日本は戦敗国なのに戦勝国韓国よりも繁栄していてずるい」と言われたそうなので。



韓国軍陸戦隊のベトナム派遣は1965年に開始されました。東京オリンピックは1964年ですからその時までに日本は既にかなり発展しておりベトナム戦争を発展の契機とあるのは少し無理があります。また確かにいざなぎ景気が1960年代後半に来るのですが景気拡大の最大の原因は国内消費・投資ですので、やはりベトナム戦争とは関係ありません。一方韓国は1965年の日韓基本条約締結により5億ドルの援助を受け更にアメリカからもベトナム戦争参戦の代償としてそれ以上の巨額の援助を受けておりますのでむしろその時代に恩恵を受けたのは「ある意味」韓国経済なわけです。



しかしなぜマスコミは煽るのでしょうねえ、どの国も。決してプラスにならないのに。長文失礼いたしました。
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こちらこそ、ありがとうございます (特上カルビ)
2005-06-14 07:36:31
>amcさん



コメントありがとうございました。



>私の友人は留学中にかの国の人に「日本は戦敗国なのに戦勝国韓国よりも繁栄していてずるい」と言われたそうなので。



もちろん、そのように考える人もいらっしゃるかもしれませんが(実際にいらっしゃいますが)、ごく一部であると思います。



また、貧富の格差は日本以上に深刻ですが、現在は韓国自体も充分に繁栄していると思います(不動産投機が加熱しており、個人的には日本のバブル経済末期の状況に似ている気がしてなりません)。



>韓国は1965年の日韓基本条約締結により5億ドルの援助を受け更にアメリカからもベトナム戦争参戦の代償としてそれ以上の巨額の援助を受けておりますのでむしろその時代に恩恵を受けたのは「ある意味」韓国経済なわけです。



問題はそのような事実を、韓国政府(一部のマスコミも含め)が国民に対して積極的に開示していないという点です。最近ではそのような政府の対応を批判する声も聞かれるようになりました。



>しかしなぜマスコミは煽るのでしょうねえ、どの国も。決してプラスにならないのに。



残念ながら、それがマスコミの宿命ではないかと思われます。私達自身が冷静になって、マスコミの扇動にのせられないように充分気をつけるしかないでしょう。



私の勉強不足も多々あるかと思いますが、これに懲りず、今後とも宜しくお願い致します。
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