特上カルビの記のみ気のまま

韓国語教育を韓国の大学院で専攻した30代日本人男性が、韓国ソウルでの試行錯誤の日々を綴りました.

週末何をしましたか?

2005-02-13 12:55:22 | 韓国留学記
 晴れ。最低気温-9.1度。最高気温2度。思ったより寒い日曜日だった。

 「週末何をしましたか?」
 私が延世(ヨンセ)大学で韓国語を勉強していた頃のことだ。

 月曜日の一時間目はたいてい先生のこの質問から始まる。今の時期なら「友達とスキーに行って来た」とか「韓国人のナムジャチング(彼氏)のためにチョコレートを作った」なんていう答えが返ってくる。週末ごとに“華麗なイベント”があればいいが、「家にいました」とか「寝てました」なんていう学生にとっては余計なお世話だ。

 しかし、この質問自体が学生の“アタマの中を韓国語モード”にするのが目的なので、上級クラスの場合は全員に尋ねることはせず、せいぜい二、三人ぐらいで終わり、本題の授業に入る。授業に入ってから暫くして、突然「そう言えば、週末は友達と登山に行きました」なんて言い出す学生が決まって、いる。そんな時、先生は「ポスヌン チナガッソヨ!(バスは行ってしまったよ)」という。つまり、“その話題はとっくに終わってるよ”という意味だ。

 私は毎週日曜日、バスと地下鉄を乗り継いで教会に行く。

 今朝、近所のバス停に行くと、バス停の前を塞ぐように観光バスが三台縦列駐車していた。日本ではあり得ない光景かも知れないが、“何でもあり”の韓国では決して珍しくない。バス停の前に律儀に立っていたのでは、自分が乗りたいバスが来たかどうかも判らない。仕方なく、三台目の観光バスの最後部に立って、寒空の下、バスが来るのを待っていた。

 韓国を一度でも訪れたことがある方ならご存知だろうが、韓国の路線バスはバス停の前にきちんと停まってくれない。バス停の標識(看板)は、あくまでも“おおよそのバスの停車位置”を示すものであり、バス停を中心に半径十メートルぐらいにバスは停まる。極端な話し“バスが停まった所がバス停”になるのだ。従って、バスに乗る人は自分が乗るバスが停まっているところまで手を挙げて走って行き、運転手さんに「バスに乗りますよ~!」という“強いアピール”をする必要がある。

 何もしなくてもバスが自然とバス停の前に停まってくれるというのは、韓国の人たちにとっては“奇跡”に近いものがあるだろう。韓国では「バスは停まってくれるだろう」という考えは捨て、「私がバスを停めるのだ!」という強い意志と忍耐力が必要だ。なぜ忍耐力かというと、バス停に時刻表や「まもなくバスがまいります」などという表示が一切ないので、いつ何時(なんどき)バスが来るか判らないからだ。常に目を凝らして、猛スピードで走ってくるバスの番号を確認しなければならない。配車間隔が短いバス路線なら構わないが、十五~二十分に一本というバスの場合は一本逃すと、大変なタイムロスを食らってしまうのだ。だから韓国の人たちは“臨戦態勢”でバスを待つ。動体視力も日本より韓国の人のほうが絶対に良いはずだ。

 というわけで、今朝も二十分近く待って、バス停の手前二十メートルくらいの所で、大きく手をあげバスを停めた。

 もし今「週末何をしましたか?」と先生に訊かれたら、私は答えるだろう「バスを停めました」と。

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