なんだか2日ほど前から、何となく違和感を感じていたのである。
飲み過ぎのせいだろうと気にせず、昨日出勤したものの、どうも体が重い。
腹がゆるい。腕がだるい。筋肉痛がする。
昼にうどんを食べたがいつものように美味しく感じない。
食後に休んでいると、頭がさらに痛くなり、起きているのがやっとになってきた。
その時点で早退を考えたのであるが、3時に人と会う約束があったので、それまではなんとか我慢することとする。
ところがその人3時になっても現れない。
4時近くまで待ったが、現れる気配がないので、室員に、
「悪いけど今日は帰る。○○さんが来たら、体調が悪いから帰った、月曜日に電話しますって言っておいて。明日もたぶん休みます」
と言い残し、帰途に着く。
帰りの電車は幸いにして座れた。
夢うつつのうちに家まで辿り着く。
駅から自宅までの徒歩5分ほどがすごく長く感じたのである。
「あれっ?どうしたの?」
と大臣(妻ともいう)がグレイスちゃん(ぬいぐるみの名前)を抱いて出迎える。
事情を話し30分ほど横になる。
起きて熱を測ったら38度ほどあった。
「それじゃ医者に行ってくる」
「新型インフルエンザだったらどうしよう」
「咳とか咽喉の痛みはないのでたぶん違うと思うけど。もし新型だったらオレは隔離されて大学は休講だろうね」
「そうなったら大変だね」
「でも、もし本当に新型だったら隠しておくわけにもいかないし、やっぱりはっきりさせた方がいいだろう」
そんなわけで、よろめきながら近所の医者に行く。
受付の女性は、色白で頭のよさそうな美人である。もしかしたら近所にある某女子大の学生アルバイトかもしれない。
診察券を出しながら、
「熱があるんですけど」
「はい、何度ぐらいですか?」
「38度」
すると困ったように、
「あのー、38度以上の熱のある方は、保健所で外来診療の許可をとってから来ていただきたいんですが」
「はあ?」
「電話番号をお教えしますので、ご本人からそちらにかけていただけますか?」
「え、でも今ケータイ持っていないし・・・」(これは本当)
受付嬢、さらに困ったように、
「それでは、ご自宅からかけていただきたいんですけど」
「えー、今から自宅往復するのは辛いですよー」(これも本当)
結局私は保健所に電話をすることができた。その方法は秘密とするが、受付嬢はとても親切だったと言っておこう。私は色が白くて頭のいい人が好きだ。
電話では、現在の症状の概要とともに、
「最近海外渡航歴はあるか」
「最近関西方面にいったか」
なんてことを聞かれた。もちろん答えは「ノー」である。
最終的に、
「では、お近くの医療機関で診察を受けてください」
というお言葉をいただいた。
こうしてめでたく診察を受けることができたのである。
医者(顔見知り、T先生にあらず)は、
最初に、「保健所の許可は得ていますね?」
と確認した。さすが、形式的とはいえ徹底している。
一通り診察をして、
「インフルエンザの検査をしますか?」
医者、顔がにやけているぞ。
「そ、そうですねー、もしクロと診断されたら大騒ぎになりますね」
医者、笑いながら、
「人と多く接触するお仕事でしょう?調べておいたほうがいいですね」
というわけで調べることになった。
検査方法はというと、長い綿棒のようなものを鼻の穴につっこんで(結構深い)数秒して抜いて、あとは30分近く待たされる。
この待ち時間がいやに長く感じた。
医者が誰かと電話連絡をしているのが聞こえ、少しドキドキしたぞ。
やがて、「お待たせしました」と医者。
「検査の結果、大丈夫、インフルエンザではありませんでした」
「ああ~、良かったー!」
思わず胸をなでおろす。
「実はこのあたりでもA型患者は発生しているのですが、新型と診断された人はまだないです」
「そうなんですか」
「抗生剤と解熱剤を処方しておきましょう。お大事に」
「ありがとうございました」
こうしてホッとして、受付のお姉さんにも丁重に礼を述べて帰ってきたのだった。
家に帰り、大臣に報告し、職場にも改めて連絡。
「さっき医者に行って、そしたら○大関係者にもついに新型インフルエンザが・・・」
「発生しなかったんですね(笑)」
「そういうこと(笑)」
ホッとして冗談を言う余裕も出てきたのである。
それから大臣の作ってくれたお粥を食べて、早々と寝たのであった。
今朝は寝過ぎて背中が痛かったぞ。
一日NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)聴いて過ごしたのだった。
お腹はまだ少しゆるいけど、熱も下がり明日は日曜出勤である。あ~あ、また仕事だ。