しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「最後の記憶」 綾辻行人  

2005年12月19日 | 読書
波多野森吾の母、千鶴はアルツハイマー病に似た『白髪痴呆』と言う病気で入院していた。
この病気は新しい記憶から忘れ、最後は昔の印象の強い記憶が残るという。
千鶴には幼い頃から、白い閃光とショウリョウバッタが飛ぶ羽音に恐怖を示した。
その恐怖は汚い黒い服を着て顔のない何者かが襲って来て、子供達を大勢殺したと言う事に結びついていた。
森吾は『白髪痴呆』が遺伝する事を知って、無気力になる。
と同時に顔のない暗殺者が子供を襲う幻覚や、自分の幼い時に出会った狐の面を被った子供が今も語り掛けて来る事に悩まされる。
そして森吾の身近では、小学生が何者かに殺される事件が起きる。
森吾はそれを、自分が呼び寄せた悪意がしている事だと解釈して、より深く心を閉じていく。
そんな時再会した幼馴染の藍川唯は、千鶴の恐怖体験をはっきりさせる事で、森吾が立ち直れるのではないかと考え、二人で千鶴の生まれ故郷に向かう。
故郷には、子供が沢山殺された事件はなかった。
しかし千鶴の秘密を見つける事が出来、解決に向けて森吾は動き出す。

本を手にした後で、「本格ホラー」となっている事の気がついた。ホラーは苦手だが、手にした以上は読んでみる事にした。そして、あまり怖くはなかった。
あとがきで、綾辻氏が「怖さのツボは驚きのツボ以上にひとそれぞれだから」書いている通り、私のツボではなかった様だ。
ホラーより、千鶴の過去にあった事を知りたい、ミステリの方に気持ちがいったからか。
しかし、ラストの森吾の決断がどうだったのだろう。
すでに現在ある事を確実にする為にした事なのか。きっとそのままでも変わらない気がするが。
それより、母の最期に残る記憶が、あんなおぞましい物でない様にする為に、なんとか出来なかったのかと思った。森吾は自分が生きる事しか考えていない。
そしてどうして、それで落ち着いてしまったのだろう。森吾の心が一番怖いかも知れない。
母との思い出の中の、上弦の月、れんげ畑、夕焼けは幻想的で綺麗だった。
こんな優しい記憶を最後は持ちたいと思う。

私の恐怖のツボは、スティーブン・キング。
ホラーではないと言っている「ゴールデンボーイ」は怖い。
だから、キングは面白いのだけれど、なかなか読めない。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« トヨタカップジャパン 優勝... | トップ | 「レ・ミゼラブル」 199... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事