しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「聖餐城」 皆川博子 

2007年07月05日 | 読書
17世紀の「ドイツ30年戦争」が舞台。
馬の胎から生まれた少年アディは、戦争に行く兵隊の後を付いて行き商売する輜重隊(しちょうたい)の中のいた。
兵隊は通る村を略奪しながら稼いで行く。
略奪の中兵士に見つからないように、目ぼしい物を物色していたアディは捕らわれていた身なりの良い少年を見つけ、金になると思いその少年を横取りする。
その少年はイシュア・コーヘン。
イシュアは自分をプラハまで無事届けてくれたら莫大な礼金を払うと言う。
コーヘン家はウィーンで皇帝の財務を司り、前々皇帝にも仕えていた、宮廷ユダヤ人だった。
この縁でアディは、ヴァレンシュタイン侯に従うローゼンミュラー家の傭兵として戦いに係わっていく。
そして、イシュアは知能でヴァレンシュタイン侯に可愛がられ、歴史に係わっていく。


ドイツ30年戦争のことも、その時の社会の様子もよく分かる物語。
この時代のことは知らないことばかりだったので、興味深かった。
読み応えたっぷりの739頁。
人間の歴史は戦いの歴史で、人間はいくらでも残酷になれるということを強く感じる物語でもある。
しかし、そんな中でも自分の力で信念で生きていこうとする、2人の少年の力強さが清々しく痛々しい。
物語としても、波乱万丈と言える2人の生き方も面白いが、どちらかといえばアディの物語。
もう少しイシュアの物語も読みたかった気がする。
読み終わった時、多くの人生に付き合った疲れを感じる物語でもある。
欧州は宗教が名目として、色々なことに大きく係わっている。
差別する要素として一番強くあるのが宗教なのかも知れない。
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