しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「警官の血」 佐々木譲 

2009年06月03日 | 読書
「警官の血」 佐々木譲  上・下巻  新潮社

親子3代、警察官の物語。

第一部 清二
安城清二は昭和23年、戦後の大量採用に募集して警官になる。
同期で親しくなったのが、香取茂一と窪田勝利と早瀬勇三。
清二は上野公園前の派出所勤務となる。
公園に寝泊りする浮浪者や孤児もまだ多く、知り合いになる。
ある時、男娼グループの若いミドリという美形の青年が殺される。

第二部 民雄
清二の息子、民雄は高校を卒業して警察学校へ進学する。
卒業を前に、優秀な成績などから警察に籍を置いたまま北大に進学する。
それは大学生の過激な政治活動を見張る、潜入捜査の役目でもあった。

第3部 和也
民雄の葬儀の席で、自分の知らなかった父親と祖父のことを聞き、和也は大学を卒業して警察官になる。
父や祖父を同じ派出所勤務の地域課をイメージしていたが、初任補修研修を通し刑事捜査部二課(知能犯、経済犯罪担当)を希望する。
しかし、和也に与ええられた任務は、同じ警察官の素行調査だった。
それは暴力団を対象にする四課の加賀谷仁警部で、和也は部下となる。




面白かった
戦後変わって行った警察の様子なども興味深かった。
しかし、警察は権力だったので変わろうとしない人たちもいる。
とても複雑で難しい警察組織がそれを象徴しているのかも知れない。
民雄が係わった過激派の侵入捜査も、この時から情報合戦なのだ。
今はもっと凄くなっているのだろうと予想出来て、怖い気もする。

最後は警察官の倫理についての話しになる。
法律を守り違反している者を捕まえるのが警察官の仕事だが、その法律も人間が作ったもの。
実際の場面と照らし合わせると、不条理なことも見えてくる。
そんな時、どう考えどう対応したらいいのか。
最後まで面白い展開だった。

今も、法律を作る立場にいる人たちが優位に立つ法律はあるし、解釈次第で抜け道もある。
判断は人によっても違う。そんな時、やはり自分の利益を1番に考えてしまう人は道を外れていく気がする。
権力とお金はあればあるだけ欲しくなるのだろうか。
自分にはないから分からないだけなのか。
他人に迷惑を掛けない、相手を思いやる、そんな気持ちが前面にでたら住みやすい社会になるのだろう。


この物語の殺人者は自分のために人を殺し、それを他に理由を付け正当化しようとしている。
被害者と繋がりのある人とその後も平気で接しているのも許せない。
この人物の結末だけは納得がいかなかった。

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