しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「音のもなく少女は」  ボストン・テラン 

2011年11月04日 | 読書
「音のもなく少女は」  ボストン・テラン       文春文庫
  WOMAN                     田口俊樹・訳

1951年7月、イヴ・レオーネは、ロメインとクラリッサの次女として生まれる。
長女のメアリーは早産で、聾者になった。
イヴも8か月で生まれ、父母の願いが叶わず聾者だった。
父親は、早くそれを確かめるために、イヴのそばで銃を撃ったほどだった。
イヴは早い時から、父親が愛してくれていないことを分かった。
貧困層のクラリッサには、娘たちに何もしてやれることがなかった。
そんな時、教会でフランコニア・カールと出会う。
フランは、イヴに目を留め、手話で話かける。
それを見たクラリッサは、フランに助言を求める。
フランは32歳で、戦争前に断種法の適用を避けた人たちと、ドイツを離れて来ていた。
フラン自身も、心と身体に大きな傷を受けていた。
そんなフランとイヴの付き合いが始まる。





自分の人生を生きるため、これほどまで激しく戦わなくてはならないとは。
過酷な環境や状況に置かれたら、誰でも強くなれるのだろうか。
自分のためでもあり、愛する人、守りたい人のために。
しっかり生きている姿に、激しさに感動させられる。
しかし願うとしたら、こんな厳しい環境ではない社会が欲しい。
自分の日常とは大きくかけ離れた、フランやイヴの生活。
極彩色の世界のようだ。
のほほんと生きていけるならば、それはそれで幸せなのだと思う。
イヴの幸せの時間が、あまりにも短くて、哀しい。
フランの過去が、辛すぎる。
それでも、しっかり生きている。
今までの、ボストン・テランとは、ちょっと違った雰囲気。 
これはミステリーではない。

情景がよく浮かぶ。
ミミが肩車されて天使のように、人の上にいる姿が印象に残る。
イヴの撮った写真を実際に見たような気になる。
幸せの一瞬、それがとても大事に思える。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「龍神の雨」   道尾秀介  | トップ | 第43回全日本大学駅伝 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事