しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「オール・クリア1」「オール・クリア2」  コニ-・ウィリス 

2016年05月08日 | 読書
「オール・クリア1」「オール・クリア2」  コニ-・ウィリス  早川書房
ALL CLEAR         大森望・訳

2060年のオックスフォード大学の史学生ポリー、アイリーン、マイクの3人。
1940年のイギリスの現地調査に、降下点が開かず足止めされる。
ポリーのいるロンドンに集まった3人。
空襲が激しくなる中、生活を確保する為に仕事を見つる。
そして他の降下点を探すべく、同じ頃にロンドンに来ている史学生を捜そうとする。
ポリーには2人には黙っている事があった。
それは1945年のVEデイ(ドイツ降伏による、ヨーロッパ戦勝記念日)の頃に1度来ている事だった。
ポリーにはデッドラインがあった。

「ブラックアウト」の続編









続編というより、
「ブラックアウト」「オール・クリア1と2」で一つの物語。
長い物語だったが、ほとんど一気読みの面白さ。
一気に読んで、気持ちをすっかり持って行かれる。
「ブラックアウト」の頃は、まだ序章と言う感じ。
「オール・クリア」の内容は圧巻。
最後は上手くいって、一応ハッピーエンドなのだろうけれど。
悲しいような切ない気持ちの方が強く残る。
アイリーンの事、マイクの事。
空襲で死んでいった人たちのこと。
一度一命を取り留めたサー・ゴドフリーも。
そして過去を振り返った時に感じる様々な思い。そこには色々な感情があふれている。
懐かしさや温かさ、切なさや虚しさ。
戦争の悲惨さを体験した気持ちになったのも大きい。
その当時にそこにいるように感じられる、数々の体験。
ひとつの出来事が丁寧に書かれ、それだけリアリティを感じられた。
この物語が長くなる訳だ。
空襲の中、自分たちの出来ることを精一杯する人たち。
それでも、戦争がなければどれほど良いか。

オール・クリアはそれまでの謎が全部分かる。
“パズルがひとつひとつ嵌って行くように”という言葉が本当にぴったり。
1944年に来ていた史学生の事や、今までのタイムトラベルの事が綺麗にまとまる。
タイムトラベルの新しい解釈も、納得だ。
マイクがずっと気にしていた、自分が歴史を変えてしまったのではないかと言う事。
それは修正されるのではなかった。

ダンワージー教授が何も活躍出来なかった事が残念。
その分、コリンが大活躍。
さらりと書かれているが、コリンの執念と努力と愛。
結局、最初の時に一緒に行かなくて正解だったのだ。
しかし、書かれていないが、コリンがポリーを救出する為には、あの出会いからもう一苦労あったと言う事だ。
あれだけの情報から、セント・ポールの降下点に的を絞って粘ったのだ。
始めは、どこかでもう1度アイリーンに会っているのかと思ったが。
読み返したら、良く分かった。
あの情報だけでも、コリンにとっては充分だったのだと。
アイリーンはどこかでコリンに会えることを期待していたと思うと、寂しいけれど。
ポリーはアイリーンを守っていた。
1番、帰りたがっていたのもアイリーンかと思っていたが。
しかし、アイリーンはしっかり者だった。
アガサ・クリスティーの小説の話題がたくさん出て来るが、本人も。
アガサ・クリスティーもこの物語の人たちと同じ経験をしていたのか。
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