しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「モダンタイムス」 伊坂幸太郎 

2009年02月27日 | 読書
「モダンタイムス」 伊坂幸太郎    講談社

29歳の会社員、システムエンジニアの渡辺拓海。
ある日家に帰ると、妻の佳代子が依頼した見知らぬ男が待っていて「浮気を白状しろ」と拷問されそうになる。
次の日に会社に行くと、先輩の五反田正臣が投げ出した仕事を引き継ぐことになる。
連絡が付いた五反田はその仕事に怯えていて「見て見ぬふりも勇気だ」と言う。
引き継いだのはゴッシュという会社のものだったが、問題が起こり連絡を取ろうとしても連絡が取れない。
そして、渡辺拓海もゴッシュの仕事に危うさを感じつつのめり込んで行く。
出て来たキーワードは『播磨崎中学校』。
それは5年前にライフルを持った9人の侵入者に、1クラスの生徒全員が射殺される事件があった中学校だった。



「魔王」の続編だが、魔王を読んでいなくても分かる物語にはなっている。
「魔王」がなんとなく中途半端で終わったので、それから50年ほど経っているが、その後が分かったのはよかった。
ただ考えていたのとはちょっと違ったのだが。
主人公の渡辺拓海が本当に安藤の親戚だったというのは驚く。
安藤の親戚だったからこんなことになったのだろうか。関係なくても良かったのでは、と何となく思った。
あまりにもさらりとそうなったので、疑ってしまった。
関係ない人間の間に同じ能力が生まれても面白い。

物語は週刊誌の連載ということがあったからか、山というか謎が次々と提示されるのだが、それが最後まで繋がっていない感じがする。
結局あれはなんだったのと、思えることも。
全部を明らかにする必要はないのかも知れないが、物語が進むうちに忘れてしまったのでは、と思ったりして。
でもその反対に印象深いシーンや台詞も多かった気がする。
作家の井坂好太郎を始め、みんな考えていないようで考えているから。
人はみんなシステムのなかに取り組まれているに過ぎないと言うのが強調されている。
納得出来る理論が展開されて、これは未来の設定だが今の社会を表しているとも考えられる。
今回も政治的なことはあるが、ひとりひとりがどう生きていくが大切なのだと知らされる。
身近な人をまず助けて行こう、というのは良い。
しかし世の中、疑い出したらきりがない。
安心して暮すためにはなるべく他人と接しない方がいいのか、なんて思ってしまった。

「検索」のことは興味深かった。
アメリカなどでは、テロなどの防止のため電話で危険な言葉を言うとチェックを受けるという話は聞いたことがあるが、それがPCの検索にもあったら。有りえない話ではないと思う。
監視社会については伊坂さんの他の物語でもよく出てきて、防犯なのか監視なのかとつい考えてしまうが、現実はどうなのかなんて一般市民には分からないだろう。

伊坂さんらしい現実離れした設定や人物、会話の面白さなどでどんどん読んでしまうのだが、今回もちょっと中途半端な終わり方のような気がする。
また続編があるのだろうか。

何度も出てくる言葉がある。
「勇気はあるか?」
勇気ってなんだろう。立ち向かって行く力とか気持ちとか。
でも、勇気ある退却ということもあるし、ただ積極的に行動することではないと思える。
決断して実行する力のことだろうか。
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