しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「子守唄」  カーリン・イェルハルドセン 

2016年03月23日 | 読書
「子守唄」  カーリン・イェルハルドセン  創元推理文庫  
 Vyssan lull     木村由利子・訳

2008年3月。
母親と幼い2人の子どもが自宅のアパートで殺害される。
キャスリーン・ラーションと4歳と2歳になるトムとリンの3人の母子が自宅のアパートで殺害される。
キャスリーンはフィリピン人で、結婚する為にスウェーデンに在住、3年前に市民権を取得していた。
しかしこの時、夫クリステルとは別居状態だった。
クリステルからの金銭援助はないのに、アパートは高価なものだった。
事件を担当するのはハンマルビー署のコニ-・ショーベリ警視たちのグループ。
キャスリーンの身辺を電話記録などから探って行くが、そういう仕事を黙々とこなすエイナール・エリクソン警部が欠勤していた。
事件に捜査しつつ、3日も連絡のないエリクソンを心配して、ショーベリは勝手に自宅に入る。
そこで、今まで全く知らなったエリクソンのプライベートを知る。
調べるうちに、キャスリーンや子どもたちと親しくしていた男がいた事が分かる。
そして、エリクソンが失踪したのが事件の当日だった。

コニ-・ショーベリ警視シリーズ第3弾。







3部作の最後、今までの事がすべて明らかになる。
明らかになっても解決していない問題もあるが。
3部作の予定がこの後もショーベリ・シリーズ続くことになったので、問題を残したのか。
前2作とも、子どもが係った悲惨な事件も多かったが、今回もそれは同じ。
犠牲になった親子は何の落ち度もなく、ただ犠牲になっただけ。
そして、ハンマルビー署のショーベリチームの2人の悲惨な過去が明らかになる。
ショーベリは子どもの頃の時で、夢の原因となった出来事。
そして、寡黙で面白味のない人物として書かれていたエイナール・エリクソン。

無断欠勤が続いたエイナール。
物語の中に挿入されている、監禁された人物とその人の過去。
それは直ぐにエイナールだと分かる。
なぜ監禁されているのかも、過去の回想から早いうちから推測出来る。
だから、最後の事実に衝撃はなく、早く気が付いて助けてあげて欲しいという気持ちが。
ヨハン少年が気が付いて、知らせに来たのに。
最期が悲し過ぎる。

過去のことだが、本当に辛く悲しい物語。
だから、その後の人生のことも考えてしまう。
誰が悪いとか、責任があるとか、そんな問題ではない。
悪いタイミングが重なり最悪の結果となった。
自分の哀しみや喪失感を怒りに変えることは良くあることだろう。
どこかに感情を持って行きたいのだと思う。
アンドレアスとトビアスの両親も、きっと他人を責めるだけでなく、自分を責める時もあったと思う。
やり切れない気持ちの中で、「赦し」の言葉が浮かんだ。
相手も自分も赦せない。
簡単には言えないけれど、赦せたら相手も自分も変われるのでないだろうか。
コニ-の祖父母と母親もそれは同じ。
人は生きて行かなければならない。
それなら、負の感情を抱え込んで生きるより、明るい方向へ向かって欲しいと誰もが思うだろう。

読み終わって表紙を見たら。
始めに手にした時は、屋敷に明かりついていると思った。
読み終わって見たら、この明かりは炎なのだろうか。
前2冊の表紙を見たら、「お菓子の家」は特に分からなかったが、
「パパ、ママ、あたし」の後ろの建物は、ハンナが見たお城だったのだ。そうだよね。

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