しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「黒き水のうねり」 アッティカ・ロック

2012年02月16日 | 読書
「黒き水のうねり」 アッティカ・ロック    ハヤカワ・ミステリ文庫       
   BLACK WATER RISING                高山真由美・訳

アメリカ、テキサス州ヒューストン。1981年。
黒人弁護士のジェイ・ポーターは、妻バーナディンの誕生日祝いナイトクルーズを用意する。
バイユー(緩流河川)が町を蛇行して流れることから、 “バイユー・シティ”と呼ばれるヒューストン。
そのクルーズの途中で、土手の茂みから悲鳴と銃声が聞こえる。
少しして、誰かが川に落ち、ジェイは川に飛び込み救出する。
それは高価なイヤリングと指輪をした若い白人女性だった。
かつては公民権活動家で、当局の弾圧をも経験したジェイ。
警察とは係りたくなく、女性を警察署の前まで送って行くが、そこで下す。
その後、ジェイは新聞で、銃声を聞いた場所で白人男性の射殺死体が発見されたと知る。
新聞は被害者の連れの女性から事情聴取をしたとあったが、名前などは載っていなかった。






公民権運動に係った主人公。
過去のことだが、それに影響を受けて暮らしている現在。
風呂に入る時も、銃を手放せない程の影響。
弁護士になってからも、弁護料が支払えないような人たちの弁護をしなければならない立場。
自分の意志とは違っても、断れないのは、心の優しさ。
黒人と白人とで、全然違った状況になる社会。
政治や警察が信じられなくなる社会。

大きな隠された事実が、段々明るみに出る。
その事件も興味深いが、ジェイ・ポーターの心の動きも気になる物語。
過去のことも丁寧に書かれているので、その時代の様子もよく伝わる。
事件を通して、なるべく係らないでいようと思ったことに立ち向かう気持ちを持つ。
人生が、周りによって左右されるのは、我慢がならなくなる。
それは、他にも虐げられる人がいるから。
最後は自分の意志で踏み出せる、勇気。
それがうまくいくとは限らないのだろうと思うけれど、それを怖がっては行けないという事。
思う以上に大変なことだが、それをして来た人々がいたから、社会が変わってきたのだ。

それにしても、助けられた女性のしたたかさも、凄い。
勢いではジェイを上回っている。

同じ人間なのに、差別制度を始めた人たち。
そんな思考が今も続いている。
ニュータイプや宇宙人と遭遇した時も、同じようなことが繰り返されるのだろうか。


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