しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「書楼弔堂 破曉」  京極夏彦

2015年09月17日 | 読書
「書楼弔堂 破曉」   京極夏彦    集英社   

6編からなる連作短編集。

探書壱 臨終 
明治20年代。
元士族の35歳の高遠彬は、3月前から病気療養を理由に妻子と離れ一人で暮らしていた。
その住まいの近くに、弔堂という本屋があった。
三階建ての燈台の様な造りで、そこが本屋とはなかなか気が付かない。
高遠はその近くで知り合いの本屋丁稚と合った事でその存在を知る。
本屋の主人は、本は墓、移ろいゆく過去と閉じ込めた呪物だと言う。
本を読むのはその供養。
たった一冊、自分だけの大切な本に巡り合えれば仕合わせ。
その本を探し求めて主人は集まってしまったと。

客は吉岡米次郎。浮世絵師。最後の浮世絵師、月岡芳年。
女の幽霊が見えると言う。
女は赤ん坊を抱えている、それを自分に見せようとていると。
主人は相応しい本を渡す。


探書弐 発心
客は泉鏡太郎、後の鏡花。
尾崎紅葉の所で書生をしていた時。
この時、高遠が主人に紹介した、畠芋之助の名義で幾作か発表している。

探書参 方便
客は「妖怪博士」となる井上淵圓了

探書肆  贖罪 
中濱萬次郎が連れていた幽霊は、岡田以蔵。
すでに自分は死んだ者と。

探書伍 闕如
客は巖谷小波。
お伽噺を再確認させられる。

探書陸 未完
大量の本を買取に来た場所は、中野。
相手は武蔵清明社宮司の中禅寺輔。
父親が集めた本を全て手放すと言うが、主人は数冊の本を残す。
それはこの社の由来書と、安倍晴明が記した物。
ない物は、書くことによって在る物になったりする。
主人は高遠にも1冊の本を渡す。
それは未完の本。未完と言うのは永遠。それでもいいのではないか。








書楼弔堂。
訪れるお客が実在の人物。
主人は誰なのかはっきりしないが、まるで仙人のよう。
全てを見通しているような的確なアドバイスを与えて行く。
お化けや妖怪の解釈も、それなりに納得。
名前は龍典(りょうてん)と最後に分かるが。
それは突拍子なにものではなく、普通に考えていけば当然のことばかり。
ただ、そう言う事は、ある状況下では気が付けなかったり、見えなかったりする。
聞いた方は、目からウロコ状態かも。
こちらも、主人の言葉に、ひとつひとつ頷くだけ。
「道を選ぶのに間違いはない。道は外れなければいい」
外れると“外道”か。

本屋の雰囲気が、京極堂を思い出していたら、最後に中野に行って宮司の中禅寺輔が登場。
秋彦の祖父にあたるのだろうか。
こんな繋がりが出てくるとは。
そして、「書楼弔堂」の続編はありそうだが、高遠彬はまた登場するのか。
気になるところ。
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