しましましっぽ

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「ベルリンは晴れているか」  深緑野分

2020年05月22日 | 読書
「ベルリンは晴れているか」  深緑野分    筑摩書房   

1945年7月、ドイツ ベルリン。
17歳のアウグステ・ニッケルは戦火を生き延び、アメリカ軍の食堂で働いていた。
子どもの頃からの宝物、英訳版の『エーミールと探偵たち』のおかげで英語が話せたからだ。
ある夜アウグステはソヴィエト警察に連れていかれる。
そして、アウグステの恩人で音楽家のクリストフ・ローレンツが、毒入りの歯磨き粉を口にして死んだ事を知らされる。
アウグステの存在を警察に告げたのは、クリストフの妻フレデリカ。
フレデリカは戦時中、潜伏者を匿う活動をしていた。
アウグステは、両親が反社会分子と死んだので、矯正施設に送られる前に逃げ匿われる。
ポーランドから来た少女イーダも匿われていたが、潜伏先で死亡していた。
イーダを妹のように思っていたアウグステが、復讐のために殺したのではと疑われたのだ。
しかし、アウグステの疑いは直ぐに晴れ、フレデリカも実際は疑っていなかったことが分かる。
そして、フレデリカの甥エーリヒ・フォルストの存在を知る。
エーリヒは6歳の時に両親を亡くし、フレデリカが育てるが馴染めず、他の家の養子になっていた。
フレデリカはエーリヒがクリストフの死に関わっているのではと思っていた。
エーリヒの写真を見て、アウグステはエーリヒに会った事がある事を思い出す。
目印は右の頬骨のあたりに3つ並んだ黒子。
アウグステはエーリヒに叔父の死を知らせたいと、探し始める。






敗戦後すぐのベルリンが舞台の物語。
主人公はドイツ人の17歳の少女アウグステ。
英語が話せた為、アメリカ軍の仕事を得てやっと少し落ち着いた生活が始まっていた。
そこに、殺人の疑いを掛けられ事から人探しが始まる。
現在進行形の物語に、アウグステの生まれた頃からの物語が挿入される。
その物語の方が興味深い。
父親が共産主義者で、ヒトラーの政策に馴染めず、反社会分子として生きる家庭環境。
同じ国の同じ民族でも敵になってしまう恐ろしさ。
カフカ(ジギ)の生い立ちも、凄まじい。
この頃にあった出来事が、現代と繋がって行くという謎解きめいたこともあるのだが。
その辺りは、あまりしっくりしない所がある。
突然のように現れる、連続殺人犯。
戦争の最中でも続けていた犯罪。
何故そうなったのか、もっとその心理面があれば納得も出来たかも知れないが。
あまりにも表面だけしか書かれていないので、気持ちに馴染まない。
しかし、敗戦国のその直後の暮らしは日本もドイツも同じ。
弱い者は最後まで苦しめられる。


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