しましましっぽ

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「月下の犯罪」 サーシャ・バッチャーニ 

2020年04月26日 | 読書
「月下の犯罪」 サーシャ・バッチャーニ   
1945年3月、レヒニッツで起きたユダヤ人虐殺、そして或るハンガリー貴族の秘史 講談社選書メチェ   
 Und was hat das mit mir zu tun?     伊東信宏・訳

1945年3月オーストリア国境の街、レヒニッツで180人のユダヤ人が虐殺される。「レヒニッツの虐殺」。
2013年、それに伯母マルギットが関わっていると、ジャーナリストの著者サーシャ・バッチャーニは新聞の記事で読む。
マルギット・ティッセン・バッチャーニ伯爵夫人は「ヨーロッパで最も裕福な女性」と言われていた。
虐殺があったのは、バッチャーニ家の居城でのパーティの時だった。
その時、城にはナチスの将校や軍属が集まっていた。
サーシャは係りのある土地を巡り、真実を探求していく。
手助けになったのは、その時城にいた祖母マリタと、マリタの友人でアウシュビッツを生き残ったユダヤ人のアグネスの手記だった。







サーシャの祖父フェリはシベリアに抑留されていた。
「レヒニッツの虐殺」の真相というよりも、その時に生きていた人たちの人生を辿るようなサーシャの旅。
手記が心に痛く響く。
マリタの何も出来なかったと言う思いの苦痛と、アグネスの生きていくための苦痛。
そして明らかになった真実と、その扱い方。
全てを知って、それでいいのかと言う疑問。
戦争の過去はどこまで引きずって行けばいいのか。
この中で、ナチスがした事は沢山知られ、映画や本もたくさんあるが、ロシアがしたことはあまりないと言うのがある。
それは他の国でもあったのが、まるでナチスの陰に隠れて目立たないように息を潜めているような。
その中には日本も含まれるのだろう。
戦争当時したことが明らかになり、ドイツは真正面から向かい合い謝罪して来た。
ロシアや日本。そしてアメリカは。
勝った国は何も反省しなくてもいいのだろうか。
そして、真実をどう扱ったらいいのか。答えのない問いなのかも知れない。
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