しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「地下鉄(メトロ)に乗って」   浅田次郎

2015年04月14日 | 読書
「地下鉄(メトロ)に乗って」   浅田次郎  講談社文庫    

小沼真次は思い立って出席した25年ぶりの同窓会の帰り、地下鉄の永田町駅のホームのベンチで、のっぺいと渾名された書道の教師と一緒になる。
電車が事故で止まっていて、2人はしばし気詰りな会話を続ける。
そしてのっぺいは真次に、今日が兄昭一の命日だと思い出させる。
真次は3兄弟で、昭一は高校3年の時に地下鉄に飛び込んで自殺していた。
普段から喧嘩が絶えなかった横暴な父親と、口論して家を飛び出してのことだった。
真次は、赤坂見附駅まで移動する事にしてのっぺいと別れる。
薄暗い地下道を進む途中、見慣れない不思議な感じの階段があり、思わずその階段を上る。
出口の庇には「東中野」の表示があった。
そこは、真次が子どもの頃に住んでいた所の駅で、周りの風景もその頃のものだった。
そして兄の死んだ年だと知り、真次は昭一を探し始める。









タイムスリップ物。
行ったきりではなく、行ったり来たりする。
しかも同じ時代にもう一人、真次の同僚で浮気相手のみち子も一緒に。
真次が行く所には父親の佐吉がいて、やがてみち子も係わりのあった人物との繋がりが見えてくる。
タイムスリップが段々と前の年と言う事で、謎解きに要素もある。
段々と分かって来るのは、佐吉と言う人物が、真次が認識している父親とは違うと言う事。
横柄で怖く、独断的な支配者ではない姿。
家族は愛し合っていたと言う結論を真次は出すのだが。
本当にそうなのだろうか。
過去のエピソードが、佐吉を良い人間に見せるが。
自分の中には妻に暴力を振るう男の印象が強すぎて、とても良い人間とは信じられない。
愛情云々も同じだ。
子どもたちは、父親が母親を習慣の様に暴力を振るっても、好きでいられるのだろうか。
そう言えば、直ぐに暴力を振るう姿は、アムール時代にはあまり書かれていないのだが。
真次の気持ちも納得出来ないし好きになれない。
妻の頼子や弟の圭三との関係も、難しい事は避けて通ろうとする甘えを感じる。
昭一の自殺の理由も真次は納得したようだが、自分はそうではなかった。
母親の考えの方に近いのかも知れない。
ラストで真次はすっきりした気持ちになったようだが、自分の中では後味の悪い物語。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「荒神」  宮部みゆき | トップ | 「日輪の遺産」   浅田次郎  »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事