しましましっぽ

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「我らが少女A」 髙村薫

2021年07月10日 | 読書
「我らが少女A」 髙村薫 毎日新聞出版  

小野雄太は西武多摩川線多摩駅に駅員として勤務する。
ここは小野の地元でもあった。
そんな小野は乗客の1人を見て、ふと高校まで同じだった、幼馴染の上田朱美を思い出す。
朱美と一緒に思い出したのは、朱美の友達の栂野真弓。
真弓の祖母、栂野節子は、中学の時の美術教師で、退職後は自宅で水彩画教室を開き、朱美はそこに通っていた。
12年前の12月25日、節子は自宅近くの野川公園に早朝写生に行き、殺されて発見される。
小野が朱美を思い出していた時、朱美は同棲していた男に殺されていた。
逮捕された男は朱美と出会った頃に、聞いた話をする。
使い古しの絵の具のチューブを見せ「何年か前に武蔵野の野川公園で殺された人が持っていたものだ」と。
そして、未解決事件だった栂野節子殺害事件は特命班による再調査が始まる。
当時、事件の担当責任者は合田雄一郎。
57歳の合田は今は多摩駅が最寄り駅の警察大学で教授を務めていた。







27歳の上田朱美が殺されたことにより、12年前に起きた殺人事件の再調査が始まる。
節子や朱美を取り巻く人々は、過去になっていた事件の記憶や、改めて朱美と言う少女に思いを馳せる。
呼び覚まされた記憶が、また新たな感情を生む。
その時の思いを見つめ直したり、今の思いや感情と向かい合う。
それが生きて行くという事なのだろう。
事件解決の物語に向けた捜査の様子もあるが、これは係わった人々の生き方の物語。
我らが少女Aの朱美は、死んでしまっているから当時の朱美の気持ちは分からない。
そんな地味な感じの物語だが、先が気になってしまう。
誰かに感情移入という事はないのだが。
読み終わると、多くの人に生き方に付き合ったようで疲れた。
合田と加納祐介の、いつになく親密な関係は、2人とも年を取ったからだろうか。
髙村さんらしい文章で、ああこの感じ、って。
『冷血』とか『太陽を曳く馬』を思い出した。
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