しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「ミラクル・クリーク」 アンジー・キム

2021年07月06日 | 読書
「ミラクル・クリーク」 アンジー・キム  ハヤカワ・ミステリ   
 MIRACLE CREEK          服部京子・訳

バージニア州郊外の町、ミラクル・クリーク。
韓国人の移民一家が営む酸素治療施設「ミラクル・サブマリン」で放火事件が発生した。
焼死した少年の母親が逮捕され、一年後、裁判が開かれる。
障害や難病の治療に「奇跡」を期待された施設に、いったい何があったのか。
各々の心のうちに傷と秘密を抱えながら事件の関係者たちは法廷に臨む―
本当に裁かれるべきは誰なのか?
      <裏表紙より>






火災が起きた時の事件に関係のある人物は全部で8人。
高気圧酸素治療センターの「ミラクル・サブマリン」のオーナーで専門技師のパク・ユー。
パクの妻ヨン、当時17歳の娘メアリー(ミヒヤ)。
「ミラクル・サブマリン」の出資者であり患者のマット・トンプソンと妻のジャニーン・チョウ。
患者の子どもたちの母親、エリザベス、キット、テレサ。
裁判を通して、それぞれの思いや、まだ誰にも言えない胸に秘めている事実が明らかになって行く。
裁判の様子も、事件の過程と結末に至る推理もよく出来ている。
この時点に至るまでもそれぞれの人生も丁寧にかかれ、それぞれの人物が際立つ。
自閉スペクトラム症の息子を殺したとされるエリザベス。
1つの事実が、見る人の思い込みや方向で全く違う物に見える。
誰にだって、人に言えない事や思いはあるだろう。
「どうしてこんな事になってしまったのか」とそれぞれが思い悩む展開で、最後に明らかになる結末。
それぞれ人生を精一杯生きて、自分ではない誰かを思っているのに、僅かなことで狂い出す。
虚しさや、やり切れなさが大きいが、結末は救いが見いだせる。


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