しましましっぽ

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「昨日がなければ明日もない」  宮部みゆき

2020年03月13日 | 読書
「昨日がなければ明日もない」  宮部みゆき  文藝春秋  

杉村三郎シリーズの3編からなる連作短編集。

「絶対零度」
杉村探偵事務所の10人目の依頼人は、筥崎静子と言う品の良いご婦人だった。
結婚した27歳の娘の優美が自殺未遂をして入院しているが、1か月以上会えないでいると言う。
夫の佐々知貴が、自殺の原因は静子との関係性に問題があるからで、絶縁も考えていると。
静子にはその理由が全く分からずに困惑していた。
杉村は知貴に連絡を取ろうとしたが返信はなく、姿を確認しようと勤め先に出向く。
そして出勤して来た知貴の窶れた姿を見て胸騒ぎを覚える。
それはこれまでの経験から、何か事件性を感じさせた。

「華燭」    
杉村は、大家の竹中夫人の友人、小崎佐貴子の姪の宮前靜香結婚式に出席することになる。
靜香は佐貴子の妹、佐江子の子だが、家族とは絶縁状態だった。
ただ、佐貴子の中2の娘、加奈が学校を通じて靜香と知り合いになり、結婚式に出たいと言う。
その付添で竹中夫人が行くのだが、1人では心細いので、杉村にも声が掛ったと言う訳だ。
結婚式当日、会場のホテルの25階に着いて驚く。人がごった返していた。
25階には2つの披露宴会場があるが、もう1つの1時間前に始まる披露宴が遅れていると言う。
そして時間が過ぎ、杉村たちが出席する披露宴も始める気配を見せなかった。

「昨日がなければ明日もない」
大家の竹中家は三世代同居の大家族。
5月の連休の時、竹中長男の中学1年の娘、有紗の、小6の時の同級生朽田漣(さざなみ)の母親、美姫が依頼に来る。
事前に有紗と母親から、朽田親子の問題行動を聞いていたので、心の準備はしていた。
依頼は、漣の父親違いの弟、小学1年の竜聖が殺されそうだという事だった。
竜聖は離婚した時に父親の鵜野一哉に引き取られ、一緒に暮らしてはいない。
入学して直ぐに交通事故に遭い、それは一哉の母親が殺そうとしたからだと言う。
その理由は財産相続をさせたくないから。
順番に話を聞くと、それは美姫のこれまでの生き方を知ることになった。
どうやら、お金が自分の手元に入ってくることが、重要なようだ。
杉村は、一緒に来た漣が来る前に泣いていた事に気が付き、それが気になり依頼を引き受ける。
引き受ける調査内容も、竜聖の健康状態や、周りの人達様子などと、明確に伝える。






大人として成長していない大人が登場。
自分をお姫様と認識してそれに甘え、周りの家族も守ろうとする。
物事の本質を見誤る両親に、自分は許されていると思ってしまった女性。
幼過ぎて自分の自己中心的な事も気が付かず、大事なのは金銭的に裕福な事だけ。
自分の娘も同じ道に走っているが勿論気が付かない。
そこまで周りが見えないのかと思うが、それまで周りがチヤホヤする人たちがいたから。
これは、年を取ると崩壊するパターンだが。
解決策がこれしかないのかと思うとやり切れない。
もっと違う方法がないものだろうか。
日本だけでなく、世界中がこんな自己中心的で大人になり切れていない大人がいるのかも。
それでも、周りの人に迷惑を掛けなければ、問題はないのだけれど。
迷惑を掛けているという自覚も必要なのだ。
常識と思っていることが、常識ではなくなっている。
後味の悪さは、杉村三郎シリーズでは1番。

しかし、今の時代、探偵もハッカーでなくては手が出ないとは。
杉村も暇だったら、自分で技術を磨かなくてはならないのでは。
木田がいないと何も出来なくなっていないか。


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