しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「ねじの回転 FEBRUARY MOMENT」 恩田陸  

2006年10月14日 | 読書
「過去に行く事が出来たら」そして、「ひとつだけ過去が修正出来る」と言われたら。
ある時代で、過去に行けるようになり、そして『聖なる暗殺』が行われた。
実施された当時は世界中から熱狂的な賞賛を受ける。しかし、それが思いもよらぬ波及効果を及ぼしていく。
ひとつのホロコーストを防ぐことが、百のホロコーストを引き起こすなど、誰が予想できただろうか。
そして、歴史の修正が始まる。
少し直せば、歴史は自己を修正していくはずだった。
いくつか選ばれた修正する歴史のポイント。
日本の転換点として選ばれたのは「二・二六事件」だった。
一致させる為にはその時代の人物の協力がいる。選ばれたのは石原大佐、安藤大尉、栗原中尉だった。
しかし、もうひとり何者かが潜入して動き回っている気配があり、ハッカーの存在が疑われる。



面白かった。こういう話は好きだ。
しかし、変えられない歴史が絡むので、虚しさも残るのだが。
やはり歴史は変えられないのか、と言うか変わってもきっとその中にいたら分からないのだと思う。
なにが正しいのかなんて、その時の記憶だけだから。
しかし、安藤、栗原を選んだのは、悲しい。
失敗した革命をまた繰り返せというのだから。だからこの物語も成り立っているのだが。
しかし、小説なのだから、違った結末でもいい訳だから、栗原の望む方向で終わりにして欲しかった。
そうなっていたら日本はどうなっただろう。想像力の乏しい自分に代わり、読んでみたい。
栗原中尉が結構気にいったので、感情移入していると言うのもあるけれど。理由は下記に。↓
前半の緊迫感と展開の期待度からすると、後半はちょっとまとめる方向に逃げられたような気がしないでもない。


この物語の中で、印象に残ったものがある。それは、
「人間が得た最大のギフトは知能ではなく、好奇心。
好奇心、それ自体が目的となって人間は冒険を続ける。
好奇心が理性も道徳も飲み込み、人間を見た事もない地平に押しやる。その対象が宇宙であれ、生命であれ、歴史であれ」
これだけを具体的にいうと、
「おもちゃのピストルを手にしたら、子どもだって撃つ真似をする。バットを握ったら振り回してみたくなるし、原爆を作ったらどこかに落としてみたくなる。目的なんかない、行為そのものが目的」
「好奇心という最強の武器の前には、タブーなんかない。地獄すらも我々にとっては新しい地平線なのかも知れない」

そうなのだと思う。
人類は自らを滅ぼしてしまう宿命をずっと背負ってきているのだろうか。


本を読む時は、映画のように頭の中ではそのシーンが動いている。
登場人物の顔もなんとなく浮かぶが、あまり明確ではない。ところが、時々、知っている人がぴたりと当てはまってしまう時がある。少ないのだが。
今回の栗原中尉がそうだった。実在した人物に当てはめるというのもちょっと変な気もするが。
ぴったりと当てはまる人を発見して、より魅力的に感じた。


もうひとつ余談。
始めにリョコウバトの話が出てくるが、この話は伊坂幸太郎さんの「オーデュポンの祈り」で詳しく教えてもらったので、知ってる、知ってるとなんとなく嬉しかった。

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