しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「目くらましの道」  ヘニング・マンケル 

2012年02月10日 | 読書
「目くらましの道」  ヘニング・マンケル    上/下巻     創元推理文庫
  VILLOSPAR                  柳沢由実子・訳

1994年6月、スウェーデンのイースタ署もワールドカップの話題で盛り上がっていた。
そんな時、マースヴィンホルムの近くに住む農夫から、自分の菜の花畑に不審な行動をする女がいると通報が入る。
クルト・ヴァランダー警部が赴くと、その女は早朝からただ畑にいるだけだと言う。
それは少女で、声を掛けると畑の中を逃げる。
ヴァランダーが「ポリスだ!」と言った途端、少女は自分にガソリンを掛け、焼身自殺をする。
ショックを受けたヴァランダーに、追い打ちを掛けるように、残虐な殺人が起こる。
斧で頭を割られ、頭皮の1部を剥ぎ取られた元法務大臣、グスタフ・ヴェッテルステッド。
ヴァランダーは身元も分からない少女を気に掛けながらも、事件の捜査にあたる。

刑事クルト・ヴァランダー・シリーズ第5弾。





斧を使う殺人犯人は始めから登場し、犯人の視線からも書かれる。
なので、事件全体の状況や何故それが起こるのかが読む側からは早くに分かる。
ただ残忍なだけではない、事件の背景が読み取れるので、深みがある。
関係がないように思える、菜の花畑で自殺した少女の事もつながる。
ヴァランダーがどこでそれに気が付くのか、そんな興味も。
地道な捜査で少しずつ分かって来る過程も、現実的な感じでいい。
毎回、スウェーデンで起こる社会問題を取り上げるシリーズ。
一昔前では考えられない事件にヴァランダーは、戸惑い嘆くのだが。
今回の事件も遣り切れない思いが強く残る。
上に立つ者、裕福な者が自分の好き放題を始めてしまったらそうなるのか。
宝物のように誕生した命が、なぜ異国の地で燃え尽きなければならいのか。
人間ドラマとしても読み応えがある。
ヴァランダーと父親の関係も変化が見られる。

1994年、ワールドカップはアメリカ大会。
もう出られるかどうか分からないなどと話されているが、この大会は大活躍。
3位になった。
長髪のラーション選手を覚えている。
誰もがワールドカップに夢中になっている様子が、どこの国も同じなのだ。
そんな中、興味のないヴァランダーが、その騒ぎに戸惑っている様子も微笑ましい。
勝敗の賭けをするのに、4対4とか言って「サッカーはそんなに点は入らないんですよ」と言われてる。


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