しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「ブエノスアイレスに消えた」  グスタボ・マラホビッチ 

2017年11月13日 | 読書
「ブエノスアイレスに消えた」  グスタボ・マラホビッチ   ハヤカワ ポケット ミステリ ブック  
 EL JARDIN DE BRONCE           宮﨑真紀・訳

1999年4月20日、ブエノスアイレス。
建築家ファビアン・ダヌービオには妻のリラ・エステージェと4歳の娘モイラがいた。
リラは鬱病で、ファビアンとリラとの関係はギクシャクしていた。
その日、モイラは友達の誕生会に行く為にベビーシッターのペルー人の娘セシリアと共に出掛ける予定だった。
ファビアンは仕事場で急に胸騒ぎを覚え家へ戻る。
モイラたちはすでに家を出ていて、ファビアンは後を追う。
地下鉄の入り口で姿を見かけるが、僅かの差で同じ電車に乗れず、次の電車で誕生会の子の家に行く。
しかし、モイラたちは着いておらず、誕生会も1時間後だった。
1時間経っても2人は姿を見せなかった。
警察が捜査をしても何の手掛かりもないまま、4か月が過ぎ、リラは自宅のベランダから飛び降り自ら命を絶つ。
10月、喪失感から死を考えるようになったファビアンに、私立探偵のセサル・ドベルティが訪ねて来る。
自分には警察にはない、時間がたっぷりあるから自分を雇うようにと持ち掛ける。
そして、ドベルティは自分の力を見せて、ファビアンの心を掴む。
そして1週間後、ドベルティは、ある手掛かりを見つける。









突然姿を消した2人。
全くの手掛かりなしから、物語は少しずつ進展して行く。
その間には、関係のない事まで紛れ込んで混乱もさせる。
焦燥感や喪失感と言ったマイナスの気持ちが強く、読んでいても疲れる。
物語も年数を掛けてゆっくりと進んで行く。
身代金目的の誘拐なら、時間が勝負とばかりに早い展開だが。
理由が分からない失踪とは、こんな風になるものなのか。
その時間の中でのファビアンの気持ちが痛く辛い。
探偵が活躍して行くのかと思ったら、思わぬ展開に。
全く予想不可能。
最後には、なぜこんな事が起こったのかと言う真相もしっかりと分かる。
決して偶然ではない、深く悲惨な物語があった。
そして、最後もハッピーエンドではない重さ。
光が少しだけ見て終わるのだけれど。
全体を通して重く暗い。
それでも、謎解きの面白さや、ファビアンを通しての人間の強さを感じられる。
読み応え十分な物語。
モイラやファビアンのその後も気になると思ったら、どうやら続編があるらしい。


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